2.アベノミクスの主要3政策のポイント
3.アベノミクスの経済波及経路
4.アベノミクスの消費者へのインパクト
5.景気の反転上昇へ力量を試されるアベノミクス
スタートダッシュをみせる自公連立政権
2012年12月16日に投開票された第46回衆議院議員総選挙で、自由民主党(以降自民党)は294議席を獲得、単独で絶対安定多数(269議席)を上回るとともに、小泉純一郎政権下でなされた郵政解散による第44回総選挙時に獲得した296議席に迫るなど、地滑り的勝利を収めた。連立を組んできた公明党と合わせると325議席となり、参院が否決した法案を衆院で再可決できる3分の2の320議席をも突破、約3年3ヶ月ぶりに自公が政権の奪還を果たした。12月26日に召集された特別国会での首相指名選挙にて、自民党の安倍晋三総裁が第96代首相に指名され、安倍新内閣が発足した。新内閣発足に先立ち、自民党と公明党との間では、連立政権発足に向け政策協議が進められ、12月19日には連立合意文書も大筋で合意に至り、12月25日には自公両党首の署名により正式締結された。連立合意文書に掲げられる政策の中身は、1)震災復興と防災・減災対策、2)経済・景気対策、3)税と社会保障の一体改革、4)原発・エネルギー政策、5)教育再生、6)外交・安全保障、7)憲法、8)政治・行政・公務員制度改革、の8項目となっている。
まず、経済・景気対策については、2012年度の大型補正予算案と2013年度予算案とを連動して編成し成立させるとともに、インフレ目標を2%と明記した上で大胆な金融緩和を断行し、名目で3%以上の経済成長を目指すとしている。社会保障と税の一体改革に関連し、消費税率の引き上げにあたっては、公明党が低所得層の負担軽減策として求めてきた軽減税率など、複数税率の導入の検討が盛り込まれている。原発・エネルギー政策については、可能な限り原発への依存度を減らすとし、公明党が政権公約に掲げた「原発ゼロ」は明記されていない。さらに憲法改正については、憲法改正要件の緩和や「国防軍」創設などの具体論には踏み込まないものの、国会の憲法審査会での審議を促進する、という自民党の主張が通った格好だ。
二人三脚は来夏の参院選までか?
自公両党の政調会長間で具体的な詰めがなされてきた政策協議に先立って行われた、公明党・山口那津男代表との党首会談の場で既に「補正予算を含む景気対策」「東日本大震災の被災地復興」「衆院選挙制度改革と定数削減」の三つを政策協議の軸とし、補正予算の編成を含む大型の経済対策の策定と東日本大震災の被災地の復興加速を最優先とする認識で一致していた。憲法改正や原発・エネルギー政策、外交安全保障政策では対立点を抱えているが、経済・景気対策や社会保障政策では両党の足並みは概ねそろっている。また、衆議院選挙制度の抜本改革や税と社会保障の一体改革については、今回の総選挙の前に自民党、公明党、民主党の3党で交わした合意に基づき進めていく方針も、自公両党間で確認されている。衆議院では自公両党で圧倒的優位に立つものの、参議院では民主党が88議席を占めて第一党であり、自民党(83議席)と公明党(19議席)両党の議席数を合わせても102議席に止まる。過半数の118議席にはわずかに届かず、2013年夏の参議院議員選挙までは衆参のねじれ国会は続かざるを得ない。衆議院で3分の2以上の多数による再可決を乱発し、数の力で一切の法案を通していくことには強い反発が予想される。自公自身も強行採決を極力控える方向で今後の国会運営を進める方針だ。その観点からも、三党合意を結んでいる民主党との連携は、新内閣発足後、参議院議員選挙がおこなわれる2013年夏までの間、最優先の政策課題として迅速かつ着実な対応が求められている経済・景気対策や社会保障政策を推進していく際の鍵となってこよう。
他方、自公両党で隔たりの大きい憲法改正を巡っては、安倍首相は日本維新の会やみんなの党との連携に、意欲的な姿勢を示してもいる。2013年夏の参議院議員選挙の結果次第で、自民党、維新の会、みんなの党の3党で衆参各院の3分の2以上を占める事態となれば、憲法改正の発議要件を満たされることとなり、自民党が、自公連立・民主連携の枠組みから、自民党・維新の会・みんなの党の3党連立の枠組みへと乗り換える可能性も出てこよう。自公連立政権の先行きについて、公明党側でも、参議院議員選挙後に自民党が豹変する可能性を危ぶむ見方が一部でくすぶっているようだ。
2013年夏の参議院議員選挙まで約7ヶ月という比較的短期間に、政策協議に盛り込まれた8項目全てで具体的な成果を出すよう迫ることは、さすがに無理難題といえよう。そこで、政権交代後の景気と消費を占う観点から、最優先に掲げる事項や今回の衆議院解散の前提として早急に進めるよう求められている事項のうち、三つの政策に焦点を当て、そのポイントを整理しておこう(図表1)。
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参照コンテンツ
- 消費者調査 衆院選特集 民主崩壊?! 維新の会は伸びるか?