11月21日公表の月例経済報告によると、景気の基調判断は「景気は、弱まっている。」にとどまらず「世界経済が一段と減速するなかで、下押し圧力が急速に高まっている。」も付記されたことで、もう一段の下方修正が鮮明となっている。特に輸出については、前月までの「緩やかに減少」から「減少」へと2ヶ月連続で下方修正された。前日の11月20日に財務省より公表された貿易統計速報で、2008年10月の輸出総額が前年同月比7.7%減と約7年ぶりの大幅な落ち込みを記録したことなど、今回の月例報告は最近の経済指標の動きをより重視した景気判断が示されている。
先行きについては、「アメリカ・欧州における金融危機の深刻化や景気の一層の下振れ懸念」から「世界的な金融危機の深刻化や世界景気の一層の下ブレ懸念」へと変更された。会議後の記者会見で与謝野馨経済財政担当相は「日本も当分は世界経済が減速する影響から逃れることはできない」と述べており、アジアを含めた海外全般の景況感悪化の広がりと、それにともなう日本の景気への下押し圧力の高まりにより、今後も厳しい景況が続くとの認識が示されている。加えて、「景気の状況がさらに厳しいものとなるリスクが存在する」の前手に「雇用情勢などを含め」の文言が新たに付加されており、「派遣労働者の過剰感が高まっている」ことへの懸念が表明されたことも含め、雇用環境の悪化に対し強い警戒感が示されている。内閣府は「今後の統計で景気の下押しが確認されれば、12月の基調判断も下方修正する可能性がある」とコメントしており、3ヶ月連続の下方修正となれば2003年1月以来約6年ぶりのこととなる。
ここ1ヶ月間での内外景気の急速な悪化ぶりは、企業レベルでの具体的な動きからも読み取れる。設備投資の中心となる工作機械受注はここ数ヶ月で急速に減少し、工作機械大手の森精機製作所などのように予定していた新工場の着工を数ヶ月先送りするなどの動きが見られる。主要銀行による中小企業向け融資の絞り込みはますます進んでおり、民間調査会社東京商工リサーチがまとめた今年1~10月の企業倒産状況でも「運転資金の欠乏」が原因の倒産は前年同期比31.3%増の818件に上り、今年は1~10月分だけで過去10年間における年間件数を超えている。トヨタやソニー、パナソニックなど名だたる企業からは、業績の大幅な下方修正の発表が相次いでいる。自動車業界では期間従業員や派遣社員など非正規雇用の削減を公表しているが、こうした雇用削減の動きは今後も非正規労働者を中心にますます広がりつつあり、厚生労働省のまとめでは10月から来年3月までの間に「派遣切り」などで失業する非正規労働者の数は全国で3万人に達する見込みである。11月12日に公表された2008年10月の消費者態度指数は、2007年9月にわずかに戻して後に再び下落に転じており、マインドの悪化には歯止めがかからずにいる。
悪材料が出続ける中で、消費をとりまく環境は、ますます厳しいものとなりつつある。
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