12月22日に提出された2008年12月の月例経済報告によると、景気の基調判断は「悪化している。」と3ヶ月連続で下方修正された。これは、ITバブル崩壊後の不況期の02年2月以来、6年10ヶ月ぶりのこととなる。「悪化」へと判断が修正された背景として、国内外の販売不振や円高による企業業績の悪化の影響が、派遣社員の雇い止めや正社員のリストラなどといった雇用環境の悪化へと波及してきたことが挙げられており、雇用不安の拡大に強い警戒感が示されている。
12月15日公表の日銀短観によると、大企業製造業の業況判断指数DIは-24と、2002年3月以来6年9ヶ月ぶりの低水準となった。前回調査と比べ21ポイントもの低下は、日本の金融システム不安が深刻だった98年3月の低下幅を上回り、石油危機当時の74年8月に次ぐ過去2番目の大きさである。
12月に入ってからも、2009年3月期の業績予想の下方修正は相次いでいる。ホンダの営業損益は、前期比42.3%減の+5,500億円。トヨタの営業損益は-1,500億円と、データが公表されている1941年3月期以降では初の営業赤字に転落。こうした業績の悪化は、輸出関連や内需関連、製造業や非製造業の別を問わず、産業全体に広がりつつある。地下水汚染問題に揺れた伊藤ハムの営業損益は、61億円の黒字から8億円の赤字に転落。テレビ朝日ではスポット広告の出稿量の大幅減が響き、営業利益が前期比92%減の8億円にまで落ち込んでいる。
企業の設備投資にも過剰感が広がり、先行きの調整圧力が強まっている。12月10日に内閣府が発表した2008年10月の機械受注統計によると、設備投資の先行指標となる「船舶・電力を除く民需」(季節調整値)は前月比-4.4%と、2ヶ月ぶりに減少。世界的な景気後退を受けて、電気機械、一般機械、自動車などの輸出産業からの受注の減少が目立つ。
景況感の急速な悪化と同時に、世界的な金融危機により企業の資金繰りが厳しくなっていることを踏まえて、日銀は12月18日~19日に開催された金融政策決定会合で政策金利である短期金利の誘導目標を現行の年0.3%から0.2%引き下げて年0.1%に変更、資金供給の拡充策として金融機関経由での企業のコマーシャルペーパー(CP)の新規買取りや、金融機関保有の長期国債買取りの増額など、資金需要が高まる年末・年度末をにらんだ企業の資金繰り支援に乗り出した。12月16日に米連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を年1.0%から0.75~1.0%引き下げ、史上最低の0~0.25%とすることを決定し、米史上初の事実上のゼロ金利政策に踏み切っている。金融危機の深刻化により、日米ともに超低金利時代に突入した形だが、景気の先行き不透明感が続く中で、金融政策の余地がかえって狭まったといえよう。
財政面では2008年10月以降、第1次補正予算や緊急対策などの景気下支え策を打ち出してはきた。2009年度予算は景気対策最優先を旗印に、一般会計総額は88兆5,480億円と過去最大となり、税収の大幅減を補うための新規国債発行額は33兆2,940億円と当初予算ベースで4年ぶりに30兆円超える規模にまで膨れ上がる。概算要求基準(シーリング)は事実上撤廃し、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字達成も放棄したうえで、「埋蔵金」と呼ばれる財政投融資特別会計の積立金などから税外収入で9兆1,510億円を捻出するなど、異例ずくめの予算編成に踏み切っている。
だが、12月19日に時事通信社が発表した世論調査では、麻生内閣の支持率が16.7%と報道各社調査で初の20%割れを記録。2009年1月12日に公表されたメディア各社の世論調査でも、内閣支持率20%割れが確認され、支持率の急落傾向に一向に歯止めがかからないまま政権末期の様相を呈しており、政権基盤の弱体化が進んでいる。景気対策の最大の目玉である総額2兆円の定額給付金の取扱をめぐり、与野党間での対立に加え与党内での足並みの乱れなどにより、第二次補正予算の採決は2009年1月半ばまでにずれこむなど、財政政策への今後の迅速な対応にも疑問符が付きつつある。
マインドの悪化にも一向に歯止めがかからない。12月11日に内閣府が公表した11月の消費動向調査によると、消費者態度指数(一般世帯・原数値)は39.8となり、2ヶ月連続の低下。現行系列では過去最低の水準を更新、四半期調査で行われた時期を含めると2003年12月以来の低水準となる。
経済指標も決算数値もともに、近年稀に見る悪化ぶりを示す中で、消費をとりまく環境は八方塞がりの様相を呈している。
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