2009年3月16日に公表された2009年3月の月例経済報告によると、景気の基調判断は先月と同様、「景気は、急速な悪化が続いており、厳しい状況にある」となった。判断の据え置きは6ヶ月ぶりのことながらも、「景気悪化の勢いは、極めて厳しい評価だった2月と変わっていない」と見ている。個別項目のうち、企業収益については「大幅に減少している」から「極めて大幅に減少している」へと3ヶ月ぶりに下方修正された。企業収益の判断としてはこれまでにない弱い表現となったのは、2008年10~12月期の法人企業統計等で、2009年3月期に大幅な赤字決算を見込む企業が続出していることを受けてのものである。世界経済については、現状判断・先行き判断ともに据え置かれたものの、アメリカ経済の先行き判断は「悪循環がさらに強まり、景気後退が一層厳しく、長期化するリスクが高まっている」へと下方修正された。今回の下方修正では、2月時点の「一層厳しさが増すリスクがある」から「景気後退が一層厳しく、長期化するリスクが高まっている」へとより踏み込んだ表現となっている。その理由として内閣府では、消費や設備投資など主要内需項目の先行指標が軒並み悪化していることや金融市場の動揺が続いていることなどを挙げており、米国経済の回復の遅れに強い警戒感を示している。
2009年4月1日に日本銀行が公表した「第140回全国企業短期経済観測調査(短観:2009年3月)」によると、大企業製造業の業況判断指数(DI)は-58と6期連続の悪化、第1次石油危機後の不況期にあたる1975年5月調査(-57)を超える過去最悪の水準であるとともに、前回と比較した悪化幅も過去最大となっている。昨年秋以降の景況感悪化が年明け以降、更に加速しているといえる。業種別に見ても、大企業製造業では2002年3月以来初めて15業種すべての業況判断がマイナスとなっているが、とりわけ世界経済の減速のあおりを食った輸出産業の落ち込みが激しく、自動車・一般機械・電気機械ではともにDIの数値が過去最低を記録、中でも自動車はDIが-92と極端な低水準に陥っている。大企業製造業の雇用人員判断(「過剰」引く「不足」)は+35(前回は+8)と4期連続で過剰感が強まっており、悪化幅も27ポイントと過去最大、先行きの数値も+32と、厳しい雇用環境が続く見通しである。大企業製造業における2009年度の設備投資計画は-13.2%となり、3月時点の年度計画としては過去最大の下落率を記録している。金融機関の貸出態度判断(「緩い」引く「厳しい」)DIは大企業で-17(前回は-4)、中小企業で-14(前回は-9)と、いずれも厳しさが増している。
輸出の回復が当面期待できず、企業の生産・雇用調整が続き、設備投資と個人消費も減少していることから、「景気は下げ止まっていない」というのが、日本経済に対する官民共通の現状認識であろう。足許の動きを見る限り、消費回復のシナリオを描きたくとも、内外ともに問題山積で八方塞の状況と言う他ない。
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