2009年5月25日に公表された2009年5月の月例経済報告によると、景気の現状について4月までの「景気は急速な悪化が続いており、厳しい状況にある」から「景気は、厳しい状況にあるものの、このところ悪化のテンポが緩やかになっている」へと変更されたことで、景気の基調判断は2006年2月以来、3年3ヶ月ぶりに上方修正された。
個別項目のうち、生産は3月の鉱工業生産指数が半年ぶりに前月比プラスとなったことを受けて、「極めて大幅に減少している」から「下げ止まりつつある」へと上方修正された。輸出は「大幅に減少」から「下げ止まりつつある」に2ヶ月連続で上方修正され、公共投資も4月の「総じて低調に推移しているが、08年度補正予算の効果がみられる」から「平成20年度補正予算の効果もあって、このところ底堅い動きとなっている」へと、2ヶ月連続で上方修正されている。倒産件数については、4月の「増加している」から「このところ増勢が鈍化している」へと、2004年6月以来4年11ヶ月ぶりに上方修正されている。ただし雇用情勢については、3月の完全失業率が4.8%に上昇したことを受けて、4月の「急速に悪化しつつある」から「急速に悪化しており、厳しい状況にある」へと、2008年12月以来5ヶ月ぶりの下方修正となっている。
海外経済については、4月の「世界の景気は後退しており、急速に深刻化している。先行きについては、金融危機と実体経済悪化の悪循環がさらに強まり、一段と下振れするリスクがある」から、「世界の景気は後退しており、引き続き深刻な状況にあるが、一部に政策対応の効果がみられる。先行きについては、金融危機と実体経済悪化の悪循環により、下振れするリスクがある」へと、2003年12月以来5年5ヶ月ぶりに上方修正された。世界経済全般に加えて、アメリカ、アジア、ヨーロッパの個別判断もそれぞれ上方修正されている。
景気の先行きについては、「当面、雇用情勢が悪化するなかで、厳しい状況が続くとみられる」として雇用情勢の一層の悪化に懸念を示しつつも、「対外経済環境における改善の動きや在庫調整圧力の低下、経済対策の効果が景気を下支えすることが期待される」と今後への明るさをにじませる内容となっている。その後2009年6月2日の閣議後の会見で与謝野馨財務・金融・経済財政担当相より、日本経済は1~3月が「底打ちの時期だったと思う」と、事実上「底打ち宣言」ともいえるコメントが出されるとともに、4-6月期以降は景気が上昇し年末から来春にかけて日本経済が回復軌道に乗るとの認識が示されるなど、今後の景気見通しについて踏み込んだ言及がなされている。
2009年5月18日に公表された消費動向調査(2009年4月実施分)によると、一般世帯の消費者態度指数は4ヶ月連続で改善しているのに加え、指数を構成している「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」という四つの意識指標全てが2ヶ月連続で改善となっている。2009年6月8日に公表された景気ウォッチャー調査(2009年5月実施分)によると、景気の現状判断DIと景気の先行き判断DIはともに5ヶ月連続で上昇となった。加えて、家計動向関連、企業動向関連、雇用関連のすべてで、現状判断DIと先行き判断DIの両方とも、5ヶ月連続で改善となっている。
実体経済面とマインド面の双方で改善傾向をうかがわせる材料が出てきており、日経平均株価も2009年6月11日に一時8ヵ月ぶりに1万円台を回復するなど、日本の景気回復への期待感が急速に高まっている。ただし、設備投資については「減少している」、個人消費については「緩やかに減少している」との判断が月例経済報告でも堅持されている。2009年夏のボーナスは大幅減額が見込まれており、足許における需要の急回復は望めなさそうである。2009年の後半から末にかけて、需要の本格回復へのきっかけをつかめるかどうかが、今後の景気を占う焦点となろう。
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