2009年9月8日に公表された2009年9月の月例経済報告によると、景気の現状について、「景気は、失業率が過去最高水準となるなど厳しい状況にあるものの、このところ持ち直しの動きがみられる。」とした。基調判断は2ヶ月連続の据え置きではあるが、今回は新たに「失業率が過去最高水準となるなど」の文言が加わっている。景気の先行きについては前月同様、判断据え置きとしている。
個別項目のうち、設備投資、住宅建設、貿易・サービス収支、企業収益の4項目が上方に修正された。設備投資は、法人企業統計で2009年4-6月期に全産業での設備投資の伸び率のマイナス幅が縮小したことを受けて、「大幅に減少している。」から「減少している。」へと2007年12月以来1年9ヶ月ぶりに上方修正された。企業収益は、「極めて大幅に減少している」から「大幅な減少が続いているが、そのテンポは緩やかになっている」へと変更されたが、これは2004年6月以来5年3ヶ月ぶりの上昇修正となる。他方、雇用情勢は雇用の下方修正は2009年5月以来4ヶ月ぶりの下方修正となっており、その表現も「急速に悪化しており、厳しい状況にある。」から「一段と厳しさを増している。」へと、より踏み込んだものとなっている。海外経済については、基調判断が3ヶ月連続で上方修正された。地域別では、米国、アジア、ヨーロッパの3地域が同時に、2ヶ月連続で上方修正されている。
月例経済報告で異例の言及がなされた雇用情勢の悪さは、関連指標のうごきからも明らかである。総務省が2009年8月28日に公表した「労働力調査」によると、2009年7月の完全失業率は前月比+0.3%の5.7%となり、2003年4月につけた5.5%を上回る過去最悪の記録となった。同日に厚生労働省より公表された「一般職業紹介状況」によると、有効求人倍率は0.42倍となり、3ヶ月連続で過去最悪を更新している。一部のエコノミストからは、年末までに失業率が6%を突破する可能性もささやかれている。こうした状況が続けば失業の危機は正規雇用層に及ぶおそれがあり、雇用環境の悪化に一層拍車がかかることとなろう。
景気の先行きに立ちはだかるものは、雇用情勢などの実態面での悪化だけに止まらない。これまでは一貫して改善傾向にあった消費者のマインド面にも、変調の兆しがみられ始めている。内閣府が2009年9月8日に発表した2009年8月の景気ウォッチャー調査によると、街角の景況感を示す現状判断DIは前月比-0.7ポイントの41.7となり、8ヶ月ぶりの下落となった。現状判断DIの内訳を見ると、家計動向関連のDIは前月比-1.1ポイントの40.3と2ヶ月連続で下落したが、その背景として、天候不順や新型インフルエンザの影響で旅行や衣料品で販売不振が目立っている。企業動向関連のDIは前月比-1.0ポイントの44.9を記録、8ヶ月ぶりの落ち込みとなった。主に製造業での受注の伸び悩みや販売価格の引き下げ圧力による収益低迷などが、響いている模様である。景気の先行きに対する判断DIは前月比-0.9ポイントの44.0となり、2ヶ月連続で下落している。特に、家計動向関連では新型インフルエンザへの不安から、企業動向関連では値下げ圧力の継続懸念から、先行き判断DIは落ち込みを見せている。
不振が続いていた設備投資や住宅投資にもようやく下げ止まりの兆しが見え始め、海外経済の悪化リスクも昨年よりは小さなものとなっている。だが、生産の伸び悩みが続く中で、雇用環境の悪化と消費者のマインドの悪化が、景気の先行きに立ちはだかる壁としてクローズアップされつつある。
本コンテンツの全文は、メンバーシップサービスでのご提供となっております。 以降の閲覧にはメンバーシップサービス会員(有料)ご登録が必要です。
|
本論文に関連する統計データ