2010年7月21日公表の2010年7月の月例経済報告によると、景気の現状については前月同様、「景気は、着実に持ち直してきており、自律的回復への基盤が整いつつあるが、失業率が高水準にあるなど依然として厳しい状況にある」とし、基調判断を据え置いた。先行きについても現状判断と呼応する形で、前月同様「先行きについては、当面、雇用情勢に厳しさが残るものの、海外経済の改善や緊急経済対策を始めとする政策の効果などを背景に、企業収益の改善が続くなかで、景気が自律的な回復へ向かうことが期待される。」とし、判断据え置きとした。景気の下押しリスクをもたらす要因のうち、海外景気については対象地域にアメリカも追加され、「アメリカ・欧州を中心とした海外景気の下振れ懸念」へと文言が変更された。その他、「金融資本市場の変動」や「デフレの影響」、更に「雇用情勢の悪化懸念」については、前月と同様のスタンスを保っている。
個別項目を見ると、業況判断のみが変更となっており、残りの項目は前月から判断据え置きとなっている。業況判断での変更内容として、2010年6月の「中小企業では先行きに慎重な見方となっている。」から7月には「ただし、中小企業を中心に先行きに慎重な見方となっている。」と文言が変更されており、中小企業に止まらず一部業界の大企業にまで先行きへの慎重姿勢が広まりつつあることを匂わすものとなっている。
海外経済の現状については前月同様「世界経済は失業率が高水準であるなど引き続き深刻な状況にあるが、景気刺激策の効果もあって、景気は緩やかに回復している。」とし、判断を据え置いている。先行きについても同様、「緩やかな回復が続くと見込まれる」との判断を維持している。海外経済の先行きに対するリスク要因についても前月と同様、「ヨーロッパを中心とする金融市場の変動の深刻化や、信用収縮、雇用の悪化等により、景気回復が停滞するリスクがある」との認識を堅持している。地域別にみると、米国、中国、インド、その他アジア地域、ヨーロッパ地域のいずれも、現状と先行きともに判断は据え置きとなっている。ただし米国については、景気の下振れリスクの要因として新たに「景況感を示す指標が低下していることには留意する必要がある」との文言が追加された。
荒井聰経済財政相を始めとする内閣府関係者からは、景気の自律的回復までいま一歩の状況にあるとの認識が示されるとともに、米国景気をはじめ海外景気の悪化が日本の景気にもたらす悪影響への警戒感から、踊り場入りの可能性といった踏み込んだ言及もなされている。政府としては、前月の折に景気「回復」宣言を見送り7月の動向に期待を寄せていたが、海外の景況感の悪化懸念と為替の乱高下がもたらした波乱は景気の先行きに対する警戒姿勢を強めるとともに、このまま景気回復が頓挫しかねないことへの焦りが、「景気の踊り場入りの可能性」といった内閣府首脳陣のコメントからは垣間見える。
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参考文献
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