半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

(2010.08)
月例消費レポート 2010年8月号
デフレ解消の兆しも、揃わぬ雇用環境・収入環境・マインドの改善
菅野 守

1.はじめに
 景気回復の足取りも重く、海外の景況感の悪化懸念と為替の乱高下に振り回される中で、官民ともに景気の先行きに対する警戒感を強めているようだ。
 2010年7月21日公表の2010年7月の月例経済報告によると、景気の現状については前月同様、「景気は、着実に持ち直してきており、自律的回復への基盤が整いつつあるが、失業率が高水準にあるなど依然として厳しい状況にある」とし、基調判断を据え置いた。先行きについても現状判断と呼応する形で、前月同様「先行きについては、当面、雇用情勢に厳しさが残るものの、海外経済の改善や緊急経済対策を始めとする政策の効果などを背景に、企業収益の改善が続くなかで、景気が自律的な回復へ向かうことが期待される。」とし、判断据え置きとした。景気の下押しリスクをもたらす要因のうち、海外景気については対象地域にアメリカも追加され、「アメリカ・欧州を中心とした海外景気の下振れ懸念」へと文言が変更された。その他、「金融資本市場の変動」や「デフレの影響」、更に「雇用情勢の悪化懸念」については、前月と同様のスタンスを保っている。
 個別項目を見ると、業況判断のみが変更となっており、残りの項目は前月から判断据え置きとなっている。業況判断での変更内容として、2010年6月の「中小企業では先行きに慎重な見方となっている。」から7月には「ただし、中小企業を中心に先行きに慎重な見方となっている。」と文言が変更されており、中小企業に止まらず一部業界の大企業にまで先行きへの慎重姿勢が広まりつつあることを匂わすものとなっている。
 海外経済の現状については前月同様「世界経済は失業率が高水準であるなど引き続き深刻な状況にあるが、景気刺激策の効果もあって、景気は緩やかに回復している。」とし、判断を据え置いている。先行きについても同様、「緩やかな回復が続くと見込まれる」との判断を維持している。海外経済の先行きに対するリスク要因についても前月と同様、「ヨーロッパを中心とする金融市場の変動の深刻化や、信用収縮、雇用の悪化等により、景気回復が停滞するリスクがある」との認識を堅持している。地域別にみると、米国、中国、インド、その他アジア地域、ヨーロッパ地域のいずれも、現状と先行きともに判断は据え置きとなっている。ただし米国については、景気の下振れリスクの要因として新たに「景況感を示す指標が低下していることには留意する必要がある」との文言が追加された。
 荒井聰経済財政相を始めとする内閣府関係者からは、景気の自律的回復までいま一歩の状況にあるとの認識が示されるとともに、米国景気をはじめ海外景気の悪化が日本の景気にもたらす悪影響への警戒感から、踊り場入りの可能性といった踏み込んだ言及もなされている。政府としては、前月の折に景気「回復」宣言を見送り7月の動向に期待を寄せていたが、海外の景況感の悪化懸念と為替の乱高下がもたらした波乱は景気の先行きに対する警戒姿勢を強めるとともに、このまま景気回復が頓挫しかねないことへの焦りが、「景気の踊り場入りの可能性」といった内閣府首脳陣のコメントからは垣間見える。

 本コンテンツの全文は、メンバーシップサービスでのご提供となっております。
 以降の閲覧にはメンバーシップサービス会員(有料)ご登録が必要です。

メンバーシップサービス会員のご案内についてはこちらをご覧ください。
メンバーシップサービス会員の方は、下記をクリックして全文をご利用ください。
   

本論文に関連する統計データ

お知らせ

2025.03.06

クレジットカード決済に関する重要なお知らせ

新着記事

2025.04.04

25年3月の「乗用車販売台数」は3ヶ月連続のプラス

2025.04.03

25年2月の「新設住宅着工戸数」は10ヶ月ぶりのプラスに

2025.04.02

ネット時代に放送局は生き残れるのかーテレビ業界の構造分析

2025.04.01

25年1月の「広告売上高」は、9ヶ月連続のプラス

2025.03.31

企業活動分析 SUBARUの24年3月期は売上台数増加と為替変動による増収効果で大幅増収増益

2025.03.31

企業活動分析 スズキの24年3月期は価格見直し、為替影響などで売上、利益とも過去最高更新

2025.03.28

成長市場を探せ キャッシュレス市場の雄、クレジットカードは3年連続過去最高更新(2025年)

2025.03.27

25年2月の「ファーストフード売上高」は48ヶ月連続のプラスに

2025.03.27

25年2月の「ファミリーレストラン売上高」は36ヶ月連続プラス

2025.03.27

消費からみた景気指標 25年1月は7項目が改善

2025.03.26

25年2月の「コンビニエンスストア売上高」は2ヶ月ぶりのマイナスに

2025.03.26

25年2月の「チェーンストア売上高」は既存店で4ヶ月ぶりのマイナスに

2025.03.26

25年2月の「全国百貨店売上高」は4ヶ月ぶりのマイナスに

 

2025.03.25

25年1月の「商業動態統計調査」は10ヶ月連続のプラス

2025.03.24

中国メーカーの多様化戦略への対応―垂直差別化では勝てない

 

2025.03.24

提言論文 高収入層がけん引するアメリカ消費 - 日本はどうなのか

2025.03.24

企業活動分析 トヨタの24年3月期は営業利益5兆3,529億円、大幅な増収増益を達成

週間アクセスランキング

1位 2024.06.19

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 縮小する野菜ジュース市場 値上げ下でブランド継続は4割

2位 2025.03.24

中国メーカーの多様化戦略への対応―垂直差別化では勝てない

3位 2024.10.24

MNEXT 日本を揺るがす「雪崩現象」―「岩盤保守」の正体

4位 2025.03.14

日本のブランド危機と再生戦略 - トライアドマーケティング

5位 2024.05.10

消費者調査データ エナジードリンク(2024年5月版)首位は「モンエナ」、2位争いは三つ巴、再購入意向上位にPBがランクイン

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area