2010年11月18日公表の2010年11月の月例経済報告によると、景気の現状について「景気は、このところ足踏み状態となっている。」とし、前回2010年10月の報告にて、2009年2月以来1年8ヶ月ぶりに下方修正に踏み切った基調判断を、引き続き維持している。先行きについては、前月に「当面は弱めの動きも見込まれる」という下方修正含みの文言から、今月は「当面は弱めの動きがみられる」へと下方修正の判断をより明確にした形へ変更されている。景気の下押しリスクをもたらす要因として、引き続き「為替レート・株価の変動」への言及がなされている。
個別項目を見ると、個人消費は前月の「持ち直している。」から11月は「持ち直しているものの、一部に弱い動きもみられる。」へと下方修正された。消費の下方修正は2009年2月以来1年9ヶ月ぶりのこととなるが、これはエコカー補助金の終了に伴い新車販売台数が大幅に落ち込んだことを受けてのものだ。輸入は前月の「緩やかに持ち直している。」から「このところ増勢が鈍化している。」へと9ヶ月ぶりに下方修正された。生産は、前月に「弱含んでいる。」へと下方修正されているが、11月には「このところ減少している。」へともう一段の下方修正が加えられた。生産の2ヶ月連続下方修正は、2008年12月~2009年1月の期間以来、1年9ヶ月ぶりのことである。今回の生産の下方修正は、エコカー補助金終了後の反動減に伴う自動車の生産減に加え、アジア向けの電子部品の輸出が減少したことを踏まえてのものだ。他方、雇用情勢については、完全失業率が高水準ながらも改善が続いていることや、有効求人倍率の改善が続いていることなどを受けて、前月の「依然として厳しいものの、このところ持ち直しの動きがみられる」から11月は「依然として厳しいものの、持ち直しの動きがみられる」へと8ヶ月ぶりに上方修正されている。輸出は、2010年9月に「このところ増勢が鈍化している。」へと下方修正され、続く10月には「このところ弱含んでいる。」へともう一段の下方修正が加えられているが、11月も前月の判断を引き続き維持している。
海外経済の現状については前月同様「世界経済は失業率が高水準であるなど引き続き深刻な状況にあるが、景気刺激策の効果もあって、景気は緩やかに回復している。」とし、判断を据え置いている。先行きについても同様、「緩やかな回復が続くと見込まれる」との判断を維持している。海外経済の先行きに対するリスク要因についても前月と同様、「ただし、回復のテンポは更に緩やかになる可能性がある。また、信用収縮、高い失業率が継続すること等により、景気回復が停滞するリスクがある。さらに、各国の財政緊縮をはじめ財政政策のスタンスの変化による影響に留意する必要がある。」としている。
地域別にみると、中国に関しては、景気の現状について前月の「このところ拡大テンポがやや緩やかになっている。」から11月は「拡大テンポがやや緩やかになっている。」へと文言が修正され、中国における景気鈍化の判断を明確にした形だ。先行きについては、前月と同様、「テンポは緩やかになるものの拡大傾向が続くと見込まれる。」とし、判断を据え置いている。今後のリスク要因についても引き続き、「不動産価格や欧米向け輸出の動向に留意する必要がある。」との認識を示している。その他アジア地域についても、景気の現状について前月の「一部でこのところ回復テンポがやや緩やかになっている。」から11月は「回復テンポがやや緩やかになっている。」へと文言が修正され、当該地域における成長ペースの鈍化傾向をより鮮明にした形だ。先行きについては、前月と同様、「テンポは緩やかになるものの回復傾向が続くと見込まれる。」とし、判断を据え置いている。今後のリスク要因についても引き続き、「欧米等の景気が下振れした場合には、輸出の減少等により、景気回復が停滞するリスクがある。」との認識を示している。米国とヨーロッパ地域、インドは、現状と先行きともに判断を据え置きとなっている。
海江田万里経済財政相を始めとする内閣府関係者は、今後の景気に関する下方リスクとして、海外経済、円高、雇用の三点に注目しているとの見解を示しているが、そこからは、海外景気の減速や円高による輸出の減少が生産、更には雇用にもたらすマイナスの影響への強い警戒感が示されている。
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