個別項目を見ると、輸出は前月の「緩やかに減少している。」から2011年2月には「持ち直しの動きがみられる。」へと上方修正されたが、2009年10月以来16ヶ月ぶりのこととなる。その背景要因として、中国や韓国、台湾などアジア向け輸出の持ち直しに加え、米国や欧州向け輸出の回復も判断の上方修正に寄与しているようだ。生産も、前月の「下げ止まりの兆しがみられる。」から2011年2月には「持ち直しの動きがみられる。」へと、2ヶ月連続で上方修正されている。輸出も持ち直しに加え、エコカー補助金打ち切りで落ち込んだ新車販売の底打ち傾向、電子部品・デバイスでの復調などを好感してのものだ。倒産件数は前月の「緩やかな増加傾向にある。」から「おおむね横ばいとなっている。」へと上方修正されたが、これは2009年11月以来15ヶ月ぶりのこととなる。他方、個人消費は、前月の「持ち直しているものの、一部に弱い動きもみられる。」から「このところおおむね横ばいとなっている。」へと、3ヶ月ぶりに下方修正されているが、冬のボーナス支給額伸び悩みやエコポイント縮小による家電販売の不振などを受けてのものだ。
海外経済の現状については、前月1月の「世界経済は失業率が高水準であるなど引き続き深刻な状況にあるが、景気刺激策の効果もあって、景気は緩やかに回復している。」から2011年2月は「世界経済は、全体として回復している。」へと判断は上方修正されたが、これは2010年5月以来9ヶ月ぶりのことである。先行きについても、前月の「緩やかな回復が続くと見込まれる」から、2011年2月には「緩やかな」の文言が外され、「回復が続くと見込まれる。」と判断が上方修正されている。更に、海外経済の先行きに対するリスク要因についても、前月までの「ただし、回復のテンポは更に緩やかになる可能性がある。また、信用収縮、高い失業率が継続すること等により、景気回復が停滞するリスクがある。さらに、各国の財政緊縮をはじめ財政政策のスタンスの変化による影響に留意する必要がある。」から、2011年2月には「ただし、欧米の景気が下振れするリスクがある。また、一次産品価格の上昇による影響に留意する必要がある。」へと明らかにトーンダウンしているが、商品市況高騰への警戒感が新たに打ち出されている点は興味深い。
地域別にみると、アメリカに関しては、前月1月の「失業率が高止まるなど下押し要因は依然としてあるものの、政策効果もあり、景気は緩やかに回復している。先行きについては、基調としては緩やかな回復が続くと見込まれる。ただし、信用収縮や高い失業率が継続すること等により、景気回復が停滞するリスクがある。」から、2011年2月には「失業率が高水準であるものの、景気は回復している。先行きについては、回復が続くと見込まれる。ただし、信用収縮や高い失業率が継続すること等により、景気が下振れするリスクがある。」へと、景気の現状と先行きともに判断は上方修正されるとともに、リスク要因に対する警戒感もややトーンダウンしている。中国に関しては、景気の現状について前月まであった「拡大テンポがやや緩やかになっている。」の文言が削除され、「景気は内需を中心に拡大している」へと判断は上方修正された。先行きについても、前月まであった「テンポは緩やかになるものの」の文言が削除され、「拡大傾向が続くと見込まれる。」へと判断は上方修正されている。今後のリスク要因についても、前月まであった「欧米向け輸出の動向」の文言が削除され、「ただし、不動産価格や物価の動向に留意する必要がある。」へとトーンダウンしている。その他アジア地域に関しては、景気の現状判断は前月同様「総じて景気は回復しているが、回復テンポがやや緩やかになっている。」とし、判断を据え置いている。先行きについては、前月まであった「テンポは緩やかになるものの」の文言が削除され、「回復傾向が続くと見込まれる。」へと判断は上方修正されている。今後のリスク要因についても、前月の「ただし、欧米等の景気が下振れした場合には、輸出の減少等により、景気回復が停滞するリスクがある。」から、2011年2月は「ただし、欧米向け輸出の動向や物価上昇によるリスクに留意する必要がある。」へとトーンダウンしている。ヨーロッパ地域とインドに関しては、現状と先行きともに判断を据え置いている。月例経済報告に関する関係閣僚会議終了後の記者会見の中で、与謝野馨・経済財政担当相は、基調判断を2ヶ月連続して引き上げた要因として輸出や国内自動車販売の持ち直しを指摘した上で、景気の先行きについては「リスク要因が発生しなければ、今後は順調に、徐々にではあるが、回復軌道をたどると思っている」との見通しを示し、外需主導による踊り場脱却への期待感を表明している。ただし、中東情勢の不安定化や原油・穀物などの商品市況の高騰が日本経済にもたらす悪影響には引き続き警戒姿勢をみせるとともに、景気の足踏み状態脱却の判断の節目として、「実質・名目成長率がプラスになること、物価がゼロ以上のところで数カ月間とどまることが見られた段階」との見解も、併せて示されている。
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