2011年3月23日公表の2011年3月の月例経済報告によると、景気の現状については、前月2月の「持ち直しに向けた動きがみられ、足踏み状態を脱しつつある」から、3月は「持ち直しに転じているが、自律性は弱く、東北地方太平洋沖地震の影響が懸念される。」へと、基調判断は据え置いたものの下方修正含みの文言が出された。先行きについても、前月の「海外経済の改善や各種の政策効果などを背景に、景気が持ち直していくことが期待される。」から、3月は「海外経済の改善や各種の政策効果などを背景に、景気の持ち直し傾向が続くことが期待されるが、東北地方太平洋沖地震の影響に十分留意する必要がある。」へと、下方修正含みの判断が示されている。現状判断と先行きともに、今回の大震災がもたらす景気へのダウンサイドリスクに対し、強い警戒感をにじませた内容だ。景気の下押しリスクをもたらす要因については、「金融資本市場の変動や原油価格上昇の影響、海外景気の動向等によっては、景気が下振れするリスクが存在する。デフレの影響や、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意が必要である。」とし、「金融資本市場の変動」や「原油価格上昇の影響」といった市況の波乱の方にやや重点を置いた文言となっている。
個別項目を見ると、輸入は、前月の「横ばいとなっている。」から2011年3月には「持ち直しの動きがみられる。」へと上方修正された。他方で、生産は、前月の「持ち直しの動きがみられる。」から2011年3月には「持ち直したものの、東北地方太平洋沖地震の影響が懸念される。」へと、下方修正含みの判断へと変更されている。国内企業物価は、前月の「このところ緩やかに上昇している。」から2011年3月には「上昇している。」へと下方修正されている。個人消費は前月と同様、「このところおおむね横ばいとなっている。」とし据え置きとなったが、大震災の影響を見極めるため事実上判断を見送った格好だ。
海外経済の現状については前月同様、「世界経済は、全体として回復している。」とし、判断を据え置いている。先行きについても、前月同様「回復が続くと見込まれる。」とし、判断は据え置きとなった。海外経済の先行きに対するリスク要因として、前月と同様、「欧米の景気が下振れするリスクがある。」との文言が盛り込まれている。また、前月の「一次産品価格の上昇による影響に留意する必要がある。」から新たに文言が加えられ、3月は「原油価格の高騰をはじめとする一次産品価格の上昇を背景に、急速に景気が冷え込むリスクに留意する必要がある。」とし、商品市況高騰による景気へのマイナスインパクトに対し強い警戒姿勢を示している。
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