2012年6月22日に内閣府より公表された「月例経済報告(平成24年6月)」によると、景気の現状について、2012年6月は2012年5月と同様、「景気は、東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にあるなかで、緩やかに持ち直している。」とし、基調判断は据え置きとなった。先行きについても、2012年6月は2012年5月と同様、「復興需要等を背景に、景気回復の動きが確かなものとなることが期待される。」としており、判断は据え置かれている。景気の下押しリスクをもたらす要因のうち、2012年6月における「欧州政府債務危機を巡る不確実性が高まっており、こうしたこと等を背景とした金融資本市場の変動や海外景気の下振れ等によって、我が国の景気が下押しされるリスクが存在する。」といった記述は、前月とほぼ同様である。ただし2012年6月では、「電力供給の制約、デフレの影響等にも注意が必要である。」としており、前月から「原油高の影響」の文言が削除されているが、これは足許での原油価格の反転下落・鎮静化を受けてのものである。
個別項目を見ると、設備投資は、足許での設備投資関連指標の改善を受けて、2012年5月の「このところ持ち直しの動きがみられる。」から2012年6月には「緩やかに持ち直している。」とし、3ヶ月ぶりに上方修正された。住宅建設は、被災3県を中心に震災復興に伴う住宅着工の伸びを好感し、2012年5月の「このところ持ち直しの動きがみられる。」から2012年6月には「持ち直している。」へと、2ヶ月ぶりに上方修正された。企業収益は、2012年5月の「減少してきたものの、下げ止まりの兆しもみられる。」から2012年6月には「持ち直している。」へと、2ヶ月連続で上方修正されている。輸入は、原油や石油製品等での輸入増加の動きを受けて、2012年5月の「横ばいとなっている。」から2012年6月には「持ち直しの動きがみられる。」へと、8ヶ月ぶりに判断が引き上げられている。
海外経済の現状については、2012年5月の「世界の景気は、全体として弱い回復となっている。」から、2012年6月には「世界の景気は、全体として減速感が広がっており、弱い回復となっている。」へと文言が変更され、判断は9ヶ月ぶりに下方修正された。特に、「減速感が広がっている」との文言が追加されているが、これは各地で顕在化しつつある景気下振れの動きを受けてのものといえる。先行きについても、前月と同様、「弱い回復が続くと見込まれる。」とし、判断を据え置いている。海外経済の先行きに対するリスク要因のうち、「ヨーロッパ地域の一部の国々における財政の先行き不安の高まりを背景とした金融面への影響等により、景気が下振れするリスクがある。」といった言及は、前月と同様である。ただし、前月には盛り込まれていた「原油高の影響に留意する必要がある。」との表現は、2012年6月には削除となっている。
地域別にみると、アメリカに関しては、景気の現状について、2012年5月の「景気は緩やかに回復している。」から、2012年6月には新たに文言が加えられ「このところ一部に弱めの動きもみられるが、景気は緩やかに回復している。」とし、判断は10ヶ月ぶりに下方修正された。先行きについては前月と同様、「緩やかな回復傾向が続くと見込まれる。」とし、判断は据え置きとなっている。景気の下押しリスクをもたらす要因について、2012年6月は「ただし、雇用環境の改善の遅れや住宅価格の下落等により、景気が下振れするリスクがある。また、財政緊縮の影響に留意する必要がある。」としており、前月の判断を概ね踏襲している。中国に関しては、景気の現状について、2012年5月の「景気は内需を中心に拡大しているが、拡大テンポが緩やかになっている。」から、2012年6月には「内需が伸び悩む中で、景気の拡大テンポは緩やかになっている。」とし、4ヶ月ぶりに判断は下方修正された。先行きについては、2012年5月の「テンポは緩やかになるものの拡大傾向が続くと見込まれる。」から、2012年6月には「当面、テンポは緩やかになるものの、各種政策効果もあり、拡大傾向が続くと見込まれる。」としており、若干但し書きがついてものの判断はほぼ据え置きとなっている。景気の下押しリスクをもたらす要因については、2012年6月は前月と同様、「ただし、輸出、不動産価格や物価の動向に留意する必要がある。」としている。インドに関しては、景気の現状について、2012年5月の「景気の拡大テンポは鈍化している。」から、2012年6月には「景気の拡大テンポは弱まっている。」とし、6ヶ月ぶりに判断は下方修正された。先行きについても、2012年5月の「拡大テンポの鈍化が続くと見込まれる。」から、2012年6月には「当面、低めの成長となることが見込まれる。」としており、判断は下方修正されている。景気の下押しリスクをもたらす要因については、前月同様、「物価上昇によるリスクに留意する必要がある。」としている。その他アジア地域に関しては、2012年6月は前月同様、「景気は一部に持ち直しの動きもみられるが、足踏み状態となっている。先行きについては、当面、足踏み状態が続くと見込まれる。」とし、判断は据え置きとなっている。景気の下押しリスクをもたらす要因についても、前月同様、「また、輸出の動向に留意する必要がある。」としている。ヨーロッパ地域に関しては、現状について、2012年6月も前月同様、「景気は足踏み状態にあり、一部に弱い動きもみられる。ドイツではこのところ持ち直しの動きがみられる。」とし、判断を据え置いている。先行きについては、2012年5月の「当面、弱めの動きになるものと見込まれる。」から、2012年6月には「弱い動きとなることが懸念される。」とし、下方修正含みの表現へと文言が改められ、見通しの厳しさをにじませている。景気の下押しリスクをもたらす要因については、2012年6月も前月同様、「一部の国々における財政の先行き不安の高まりを背景とした金融面への影響により、景気が低迷するリスクがある。さらに、各国の財政緊縮による影響や、高い失業率が継続すること等に留意する必要がある。」としている。
2012年6月の報告内容を見ると、基調判断は据え置いたものの、海外経済を中心に下方修正に踏み切っている。内閣府は、エコカー補助金終了後の消費と生産の下振れの可能性には言及しつつも、景気は緩やかな回復基調にあるとの見方は依然として崩しておらず、足許の内需の動向には比較的楽観的スタンスを示している。他方で、海外景気の減速懸念の高まりを受けて、日本経済の下振れリスク要因として、外需の動向には強い警戒感を示していることは、古川元久経済財政担当相自身による「世界景気に全体として減速感が広がっていることは、輸出の下押し要因になりかねない。今後の輸出動向はしっかり注視したい」といったコメントからも明らかだ。ただし、「内需安泰・外需不安定」という政府の基本的な見方を、額面通りに受け取って良いものかどうかについては、若干の留保が入るであろう。足許の景気動向に関し官民ともに楽観的なムードが拡がっている今こそ、内需の復調自体が、その裾野の拡がりと根強さの両面で、どこまで盤石なのかについて、慎重な吟味・検討が必要となろう。
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