2012年8月28日に内閣府より公表された「月例経済報告(平成24年8月)」によると、景気の現状について、2012年7月は「景気は、依然として厳しい状況にあるものの、復興需要等を背景として、緩やかに回復しつつある。」としていたが、2012年8月には一部文言が修正され、「景気は、このところ一部に弱い動きがみられるものの、復興需要等を背景として、緩やかに回復しつつある。」としており、基調判断は2011年10月以来10ヶ月ぶりに下方修正された。先行きについて、2012年7月は「復興需要等を背景に、景気回復の動きが確かなものとなることが期待される。」としていた。2012年8月には、文言の一部修正とともに冒頭に新たな文言が加えられ、「当面、世界景気減速の影響を受けるものの、復興需要等を背景に、景気回復の動きが続くと期待される。」とし、下方修正含みの判断が示されている。景気の下押しリスクをもたらす要因について、2012年7月では「欧州政府債務危機を巡る不確実性が依然として高いなかで、世界景気に減速感が広がっている。こうした海外経済の状況が、金融資本市場を通じた影響も含め、我が国の景気を下押しするリスクとなっている。」としていた。2012年8月には、「ただし、欧州政府債務危機を巡る不確実性が依然として高いなかで、世界景気のさらなる下振れや金融資本市場の変動が、我が国の景気を下押しするリスクとなっている。」としている。世界景気の減速感の強まりを受けて、国内景気の下押しリスクをより一層強調する方向へと、前月から更に踏み込んだ修正がなされている。他方で、「電力供給の制約、デフレの影響等にも注意が必要である。」との表現は、前月同様踏襲されている。
個別項目を見ると、個人消費は、2012年7月の「緩やかに増加している。」から、2012年8月には「緩やかな増加傾向にある。」へと、10ヶ月ぶりに下方修正された。住宅建設は、2012年7月の「持ち直している。」から、2012年8月には「このところ横ばいとなっている。」へと、6ヶ月ぶりに下方修正されている。輸出は、2012年7月の「持ち直しの動きがみられる。」から、2012年8月には「弱含んでいる。」へと、7ヶ月ぶりに下方修正された。輸出不振のあおりを受ける形で、生産も、2012年7月の「緩やかに持ち直している。」から、2012年8月には「このところ横ばいとなっている。」へと、10ヶ月ぶりに下方修正されている。他方、雇用情勢は、2012年7月の「持ち直しているものの、東日本大震災の影響もあり依然として厳しい。」から、2012年8月には「依然として厳しさが残るものの、改善の動きがみられる。」へと、3ヶ月ぶりに上方修正されている。
海外経済の現状について、2012年7月は「世界の景気は、全体として減速感が広がっており、弱い回復となっている。」としていた。2012年8月には一部文言が修正され、「世界の景気は、減速の動きが広がっており、弱い回復となっている。」としており、下方修正含みの判断が示された。先行きについては、前月と同様、「弱い回復が続くと見込まれる。」とし、判断は据え置かれている。海外経済の先行きに対するリスク要因として、2012年7月は、「ただし、ヨーロッパ地域の一部の国々における財政の先行きに対する根強い不安を背景とした金融面への影響等により、景気が下振れするリスクがある。」としていた。2012年8月には、末尾に新たな文言が加えられ、「ただし、ヨーロッパ地域の一部の国々における財政の先行きに対する根強い不安を背景とした金融面への影響等により、景気が下振れするリスクがある。また、このところの一次産品価格の動向に留意する必要がある。」としている。表現としては、海外経済の先行きに対する警戒感をより一層強くにじませた形だ。
地域別にみると、アメリカに関しては、景気の現状について、2012年7月の「このところ一部に弱めの動きもみられるが、景気は緩やかに回復している。」から、2012年8月は「景気の回復テンポがさらに緩やかになっている。」とし、判断は下方修正された。先行きについては前月と同様、「緩やかな回復傾向が続くと見込まれる。」とし、判断は据え置かれている。景気の下押しリスクをもたらす要因についても、「ただし、雇用環境の改善の遅れや住宅価格の下落等により、景気が下振れするリスクがある。また、財政緊縮の影響に留意する必要がある。」としており、前月の判断を踏襲している。中国に関しては、景気の現状について、2012年7月の「景気の拡大テンポがやや鈍化しているものの、一部に安定化の兆しもみられる。」から、2012年8月には「景気の拡大テンポがやや鈍化している。」とし、4ヶ月連続で判断は下方修正された。先行きについては前月と同様、「各種政策効果もあり、緩やかな拡大傾向となることが見込まれる。」としており、判断は据え置きとなっている。景気の下押しリスクをもたらす要因についても前月と同様、「ただし、輸出や不動産価格の動向に留意する必要がある。」としている。インドに関しては、景気の現状について、2012年8月は前月と同様、「景気の拡大テンポは弱まっている。」とし、判断は据え置きとなった。先行きについても前月と同様、「当面、低めの成長となることが見込まれる。」としており、判断は据え置かれている。景気の下押しリスクをもたらす要因についても、前月同様、「物価上昇によるリスクに留意する必要がある。」としている。その他アジア地域に関しては、2012年7月の「景気は一部に持ち直しの動きもみられるが、足踏み状態となっている。」から、2012年8月には「景気は足踏み状態となっている。」とし、判断は下方修正された。先行きについては前月同様、「当面、足踏み状態が続くと見込まれる。」とし、判断は据え置きとなっている。景気の下押しリスクをもたらす要因についても、前月同様、「また、輸出の動向に留意する必要がある。」としている。ヨーロッパ地域に関しては、現状について、2012年7月は「景気は足踏み状態にあり、一部に弱い動きもみられる。ドイツではこのところ持ち直しの動きがみられる。」としていた。2012年8月は、「景気はこのところ弱含んでいる。ドイツではこのところ持ち直しの動きが緩やかになっている。」としており、判断は下方修正された。先行きについては前月と同様、「弱い動きとなることが懸念される。」とし、判断は据え置かれている。景気の下押しリスクをもたらす要因についても、2012年8月には前月から一部文言が削除され、「一部の国々における財政の先行きに対する根強い不安を背景とした金融面への影響により、景気が低迷するリスクがある。さらに、各国の財政緊縮による影響や、高い失業率が継続すること等に留意する必要がある。」としている。
2012年8月の報告内容を見ると、基調判断は下方修正が打ち出されるとともに、海外経済に関し前月に引き続き下方修正含みの表現が目立つ内容となっている。報告提出後の記者会見の場で古川元久経済財政担当相からは、「内需はかなり強い動きを示しており、底堅い」とのコメントが出されており、内需は堅調との現状認識を堅持する姿勢が示されてはいる。しかしながら今回の報告では、基調判断は下方修正に止まらず、個別項目に関する判断でも、個人消費や住宅建設などの内需関連項目で下方修正がなされている。このことを踏まえると、政府がこれまで示してきた内需に対する楽観的見通しは、ややトーンダウンしているとみるのが妥当であろう。
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