2012年9月14日に内閣府より公表された「月例経済報告(平成24年9月)」によると、景気の現状について、2012年8月は「景気は、このところ一部に弱い動きがみられるものの、復興需要等を背景として、緩やかに回復しつつある。」としていた。2012年9月には文言が大きく修正され、「景気は、世界景気の減速等を背景として、回復の動きに足踏みがみられる。」としており、基調判断は2ヶ月連続で下方修正された。景気の基調判断を2ヶ月連続で引き下げたのは、リーマンショック後の2008年10月から2009年2月までの時期に5ヶ月連続で下方修正を行って以来のこととなる。先行きについて、2012年8月は「当面、世界景気減速の影響を受けるものの、復興需要等を背景に、景気回復の動きが続くと期待される。」としていた。2012年9月には文言が修正され、「当面は弱めの動きも見込まれるものの、復興需要が引き続き発現するなかで、海外経済の状況が改善するにつれ、再び景気回復へ向かうことが期待される。」としている。今後の回復への期待感をにじませつつも、下方修正含みの判断が示されている格好だ。景気の下押しリスクをもたらす要因について、「ただし、欧州政府債務危機を巡る不確実性が依然として高いなかで、世界景気のさらなる下振れや金融資本市場の変動が、我が国の景気を下押しするリスクとなっている。」との表現は、前月に引き続き2012年9月にも踏襲されている。前月まで盛り込まれていた「電力供給の制約」との文言は外されたが、2012年9月には新たに「収益や所得の動向」が追加され、「また、収益や所得の動向、デフレの影響等にも注意が必要である。」へと表現が修正変更されている。
個別項目を見ると、個人消費は、エコカー補助金の効果一巡で新車販売台数が減少へと転じつつあることなどを受けて、2012年8月の「緩やかな増加傾向にある。」から、2012年9月には「おおむね横ばいとなっているが、足下で弱い動きがみられる。」へと、2ヶ月連続で下方修正された。設備投資は、2012年8月の「緩やかに持ち直している。」から、2012年9月には「一部に弱い動きもみられるものの、緩やかに持ち直している。」へと、10ヶ月ぶりに下方修正されている。生産は、海外経済の減速による輸出の減少で下押しされている状況を踏まえ、2012年8月の「このところ横ばいとなっている。」から、2012年9月には「弱含んでいる。」へと、2ヶ月連続で下方修正されている。企業収益は、2012年8月の「持ち直している。」から、2012年8月には「持ち直しているが、頭打ち感がみられる。」へと下方修正された。他方、倒産件数は、2012年8月の「おおむね横ばいとなっている。」から、2012年9月には「このところ緩やかに減少している。」へと上方修正されている。
海外経済の現状について、2012年9月も前月と同様、「世界の景気は、減速の動きが広がっており、弱い回復となっている。」とし、判断を据え置いた。先行きについて、2012年9月は前月から若干文言が追加され、「当面、弱い回復が続くものの、各種政策の効果が次第に発現することが期待される。」とした。判断は据え置きとしつも、今後の回復への期待感をにじませる表現となっている。海外経済の先行きに対するリスク要因に関しては、2012年9月も前月と同様、「ただし、ヨーロッパ地域の一部の国々における財政の先行きに対する根強い不安を背景とした金融面への影響等により、景気が下振れするリスクがある。また、このところの一次産品価格の動向に留意する必要がある。」としている。
地域別にみると、アメリカに関しては、景気の現状について、2012年9月も前月と同様、「景気の回復テンポがさらに緩やかになっている。」とし、判断を据え置いた。先行きについて、2012年9月は「緩やかな回復傾向で推移すると見込まれる。」とし、表現は若干変えつつも、判断は実質据え置きとなっている。景気の下押しリスクをもたらす要因についても、2012年9月は「ただし、雇用環境や住宅市場の改善の遅れ等により、景気が下振れするリスクがある。また、財政緊縮の影響に留意する必要がある。」としており、一部文言の修正がなされるものの、前月の判断を踏襲している。中国に関しては、景気の現状について、2012年9月も前月と同様、「景気の拡大テンポがやや鈍化している。」とし、判断を据え置いた。先行きについても前月と同様、「各種政策効果もあり、緩やかな拡大傾向となることが見込まれる。」としており、判断は据え置きとなっている。景気の下押しリスクをもたらす要因についても前月と同様、「ただし、輸出や不動産価格の動向に留意する必要がある。」としている。インドに関しては、景気の現状について、2012年9月も前月と同様、「景気の拡大テンポは弱まっている。」とし、判断は据え置きとなった。先行きについても前月と同様、「当面、低めの成長となることが見込まれる。」としており、判断は据え置かれている。景気の下押しリスクをもたらす要因についても、前月同様、「物価上昇によるリスクに留意する必要がある。」としている。その他アジア地域に関しては、2012年9月も前月と同様、「景気は足踏み状態となっている。」とし、判断は据え置きとなった。先行きについても前月同様、「当面、足踏み状態が続くと見込まれる。」とし、判断は据え置きとなっている。景気の下押しリスクをもたらす要因についても、前月同様、「また、輸出の動向に留意する必要がある。」としている。ヨーロッパ地域に関しては、現状について、2012年9月も前月と同様、「景気はこのところ弱含んでいる。ドイツではこのところ持ち直しの動きが緩やかになっている。」としており、判断は据え置きとなった。先行きについても前月と同様、「弱い動きとなることが懸念される。」とし、判断は据え置かれている。景気の下押しリスクをもたらす要因についても、前月と同様、「一部の国々における財政の先行きに対する根強い不安を背景とした金融面への影響により、景気が低迷するリスクがある。さらに、各国の財政緊縮による影響や、高い失業率が継続すること等に留意する必要がある。」としている。
2012年9月の報告では、基調判断に関し2ヶ月連続での下方修正に踏み切るなど、内閣府自身も景気に対するスタンスの大幅な転換を打ち出している。内閣府からは、自動車販売の落ち込みへの懸念が示されるなど、内需に対する若干弱気の見通しをうかがわせるコメントも見受けられる。景気の先行きに対しては、「当面は弱めの動きも見込まれるため、今まで以上に警戒レベルを上げて注視する」と表明しており、今後の経済運営により厳しい見方で臨む姿勢が示されてもいるようだ。
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