2013年1月23日に内閣府より公表された「月例経済報告(平成25年1月)」によると、景気の現状について、2012年12月は「景気は、世界景気の減速等を背景として、このところ弱い動きとなっている。」としていた。2013年1月には文言の一部に追加修正がなされ、「景気は、弱い動きとなっているが、一部に下げ止まりの兆しもみられる。」としており、基調判断は8ヶ月ぶりに上方修正された。先行きについて、2012年12月は「当面は弱さが残るものの、復興需要が引き続き下支えするなかで、海外経済の状況が改善するにつれ、再び景気回復へ向かうことが期待される。」としていた。2013年1月には一部文言が修正され、「当面は弱さが残るものの、輸出環境の改善や経済対策の効果などを背景に、再び景気回復へ向かうことが期待される。」としている。積極的な円安誘導をテコにした外需の回復と、大規模な公共事業を含む経済対策による内需の押し上げとを両輪に、景気回復を推し進めようとする安倍新政権の決意の表明とともに、その結果として今後現れてくると期待される政策の効果への自信をうかがわせる内容ともいえよう。景気の下押しリスクをもたらす要因について、2012年12月の「海外経済を巡る不確実性は依然として高く、我が国の景気を下押しするリスクとなっている。」から、2013年1月では「海外景気の下振れが、引き続き我が国の景気を下押しするリスクとなっている。」へと、一部表現が修正変更されている。海外景気の悪化によるダウンサイドリスクへの警戒感を、はっきりと示した格好だ。「また、雇用・所得環境の先行き、デフレの影響等にも注意が必要である。」との文言は、2012年12月に引き続き2013年1月にも踏襲されている。
個別項目を見ると、個人消費は、自動車販売の回復などを受けて、2012年12月の「おおむね横ばいとなっている。」から、2013年1月には「このところ底堅い動きとなっている。」へと、2ヶ月連続で上方修正された。生産も、自動車関連を中心に持ち直しの動きが出はじめていることを好感し、2012年12月の「減少しているものの、そのテンポは緩やかになっている。」から、2013年1月には「下げ止まりの兆しがみられる。」へと、2ヶ月連続で上方修正された。業況判断は、2012年12月の「製造業を中心に慎重さが増している。」から、2013年1月には「慎重さがみられるものの、一部に改善の兆しもみられる。」へと上方修正されている。業況判断の上方修正は、2010年10月以来、15ヶ月ぶりのこととなる。2012年末の衆議院解散・総選挙前後からの円安・株高を好感し、企業においても、マインド改善の動きが見え始めていることを受けてのものといえよう。国内企業物価は、2012年12月の「このところ横ばいとなっている。」から、2013年1月には「このところ緩やかに上昇している。」へと文言が修正変更され、消費者物価も、2012年12月の「わずかながら下落している。」から、2013年1月には「緩やかに下落している。」へと修正変更されている。安倍新政権が掲げる「デフレ脱却」の実現に向け、(目標に掲げる2%のインフレには程遠いものの)物価変動もデフレモードからインフレモードへとギアチェンジしつつあることを、うかがわせる表現となっている。
海外経済の現状について、2012年12月は「世界の景気は、引き続き弱い回復にとどまっている。」としていた。2013年1月には文言の一部に追加修正がなされ、「世界の景気は、弱い回復が続いているものの、底堅さもみられる。」としており、判断は2ヶ月ぶりに上方修正された。先行きについて、2012年12月は「当面、弱い回復が続くものの、各種政策の効果が次第に発現することが期待される。」としていた。2012年12月では文言が一部修正され、「当面、弱い回復が続くものの、次第に底堅さを増すことが期待される。」としており、前月に比べ、海外経済の先行きに対する明るさをより強く印象付ける表現となっている。海外経済の先行きに対するリスク要因に関しては、2013年1月では「ただし、欧州政府債務危機やアメリカにおける財政問題等により、景気が下振れするリスクがある。」としており、2012年12月と比較して一部に表現の違いはみられるものの、米国と欧州の動向を引き続き注視する姿勢に変わりはない。
地域別にみると、アメリカに関しては、景気の現状について、2012年12月は「景気は弱めの回復テンポが続いているが、このところ底堅さもみられる。」としていた。2013年1月は文言が一部修正され、「景気は緩やかな回復傾向となっている。」へと判断は上方修正されている。先行きについても、2012年12月の「当面、弱い回復が続くものの、各種政策の効果が次第に発現することが期待される。」から、2013年1月には「当面、弱い回復が続くものの、次第に底堅さを増すことが期待される。」へと、上方修正含みの判断がなされている。景気の下押しリスクをもたらす要因について、2013年1月では「ただし、財政問題への対応や雇用情勢等の推移いかんにより、景気が下振れするリスクがある。」としており、2012年12月と同様、財政問題への対応と雇用情勢の2つに引き続き注意を払っていくべきとする見解が表明している。
アジア地域のうち、中国に関しては、景気の現状について、2012年12月の「景気の拡大テンポがやや鈍化しているものの、このところ安定化の兆しもみられる。」から、2013年1月には「景気の拡大テンポはやや持ち直している。」へと、上方修正されている。先行きについて、2012年12月では「不確実性が高いものの、各種政策効果もあり、緩やかな拡大傾向となることが見込まれる。」としていたが、2013年1月では不確実性の程度について幾分和らいだ表現へと修正変更され、「依然不確実性が残るものの、各種政策効果もあり、緩やかな拡大傾向となることが見込まれる。」とし、上方修正含みの判断がなされている。景気の下押しリスクをもたらす要因については、2013年1月も2012年12月と同様、「ただし、輸出や不動産価格の動向に留意する必要がある。」としている。インドに関しては、景気の現状について、2013年1月も前月と同様、「景気の拡大テンポは弱まっている。」としている。先行きについても前月と同様、「当面、低めの成長となることが見込まれる。」とし、判断を据え置いている。景気の下押しリスクをもたらす要因についても前月と同様、「物価上昇によるリスクに留意する必要がある。」としている。今回の報告では、前回まで存在していた「その他アジア地域」に関する基調判断が削除され、新たに韓国と台湾に関する基調判断が盛り込まれている。景気の現状について、韓国に関しては、「景気は足踏み状態となっているものの、このところ一部に持ち直しの動きもみられる。」としている。台湾に関しては、「景気はこのところ持ち直しの動きがみられる。」としている。先行きについては、韓国と台湾ともに「持ち直しの動きが続くと見込まれる。」としている。景気の下押しリスクをもたらす要因として、「輸出の動向に留意する必要がある。」との言及がなされている。
ヨーロッパ地域に関しては、現状について、2012年12月は「景気は弱含んでいる。ドイツでは緩やかな持ち直しの動きが続いているものの、一部に弱い動きもみられる。」としていたが、2013年1月では「景気は弱含んでいる。ドイツでは、このところ足踏み状態となっている。」としており、引き続きヨーロッパは全般的に冴えないとの見方で判断は据え置きとなったが、ドイツに関しては更に下方修正含みの判断が示されている。先行きについては、2013年1月も2012年12月と同様、「当面、弱い動きとなることが見込まれる。」としており、判断は据え置いている。景気の下押しリスクをもたらす要因についても、前月と同様、「一部の国々における財政の先行きに対する根強い不安を背景とした金融面への影響により、景気が低迷するリスクがある。さらに、各国の財政緊縮による影響や、高い失業率が継続すること等に留意する必要がある。」としている。
以上に示した2013年1月報告の内容からは、2012年の半ば頃以降進行していた景気の悪化にもようやく歯止めがかかり、消費にも底打ちをうかがわせる材料が出てきたことが読み取れる。今後の見通しについても、安倍新政権が推し進めていく「アベノミクス」によって、景気は反転上昇のきっかけをつかめるものと期待されている。海外の景況感がこのまま落ち着いた推移をみせ、「アベノミクス」のプラス効果も実体経済に徐々に現れてくれば、消費にも明るい動きが広がっていくであろうというのが、新政権の思い描く消費回復のシナリオと目される。
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