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(2013.03)
月例消費レポート 2013年2月号
安倍政権の期待感で進む「円安・株高」。デフレから脱却に向かう
主任研究員 菅野 守

1.はじめに
 2013年に入って以降も、マーケットからは景気回復への期待感が根強く発せられ、円安・株高という形で、安倍政権への援護射撃ともなってはいるようだ。新政権誕生直後から精力的に取り組んできた補正予算は参議院にて1票差で可決・成立にこぎつけ、安倍政権にとっては幸先の良いスタートを切ったが、続く本予算審議も含めアベノミクスに基づく諸政策を巡り、本格的な論戦が始まるのはこれからだ。
 2013年2月27日に内閣府より公表された「月例経済報告(平成25年2月)」によると、景気の現状について、2013年1月は「景気は、弱い動きとなっているが、一部に下げ止まりの兆しもみられる」としていた。2013年2月には文言の一部が修正され、「景気は、一部に弱さが残るものの、下げ止まっている」としており、基調判断は2ヶ月連続で上方修正された。基調判断の2ヶ月連続での上方修正は、2011年1月と2011年2月に行われて以来、2年ぶりのこととなる。先行きについて、2013年1月は「当面は弱さが残るものの、輸出環境の改善や経済対策の効果などを背景に、再び景気回復へ向かうことが期待される。」としていた。2013年2月には一部文言が修正・追加され、「当面、一部に弱さが残るものの、輸出環境の改善や経済対策、金融政策の効果などを背景に、マインドの改善にも支えられ、次第に景気回復へ向かうことが期待される。」としており、見通しに関しても上方修正を示唆する内容となっている。今回新たに盛り込まれている、「金融政策の効果」や「マインドの改善」といった表現は、アベノミクスの目玉となされる「『大胆な金融政策』によるデフレ脱却」への自信をうかがわせるものとなっている。景気の下押しリスクをもたらす要因のうち、「海外景気の下振れが、引き続き我が国の景気を下押しするリスクとなっている」との文言は、2013年1月に引き続き2013年2月にも踏襲されている。残りの部分について、2013年1月の「雇用・所得環境の先行き、デフレの影響等にも注意が必要である」から、2013年2月には「雇用・所得環境の先行き等にも注意が必要である」へと改められた。2009年11月から2013年1月までリスク要因として盛り込まれてきた「デフレの影響」という表現が、3年4ヶ月ぶりに削除されることとなったが、今後期待される「『大胆な金融政策』によるデフレ脱却」の効果を先取りしたものともいえよう。
 個別項目を見ると、個人消費は、2013年1月の「このところ底堅い動きとなっている。」から、2013年2月には「底堅く推移している。」へと、3ヶ月連続で上方修正された。生産も、自動車関連での持ち直しの動きを受けて、2013年1月の「下げ止まりの兆しがみられる。」から、2013年2月には「下げ止まっている。」へと、3ヶ月連続で上方修正された。企業収益は、2013年1月の「製造業を中心に弱含んでいる。」から、2013年2月には「大企業を中心に下げ止まりの兆しがみられる。」へと、上方修正された。業況判断は、2013年1月の「慎重さがみられるものの、一部に改善の兆しもみられる。」から、2013年2月には「改善の動きがみられる。」へと、2ヶ月連続で上方修正されている。生産の持ち直しや決算の上方修正などの動きに加え、「アベノミクス」への期待感から、企業マインドが改善しつつあることを受けてのものといえよう。
 海外経済の現状について、2013年1月に引き続き2013年2月も「世界の景気は、弱い回復が続いているものの、底堅さもみられる。」とし、判断を据え置いた。先行きについても、2013年1月に引き続き2013年2月も、「当面、弱い回復が続くものの、次第に底堅さを増すことが期待される。」としており、判断は据え置かれている。海外経済の先行きに対するリスク要因に関しても、2013年2月も2013年1月と同様、「ただし、欧州政府債務危機やアメリカにおける財政問題等により、景気が下振れするリスクがある。」としている。
 地域別にみると、アメリカに関しては、景気の現状について、2013年1月に引き続き2013年2月も「景気は緩やかな回復傾向となっている」とし、判断を据え置いた。先行きについても、2013年1月に引き続き2013年2月も、「当面、財政緊縮の影響が懸念されるものの、緩やかな回復傾向で推移すると見込まれる。」としており、判断は据え置かれている。景気の下押しリスクをもたらす要因についても、2013年2月も2013年1月と同様、「ただし、財政問題への対応や雇用情勢等の推移いかんにより、景気が下振れするリスクがある」としている。
 アジア地域のうち、中国に関しては、景気の現状について、2013年1月に引き続き2013年2月も「景気の拡大テンポはやや持ち直している」とし、判断を据え置いた。先行きについても、2013年1月に引き続き2013年2月も「依然不確実性が残るものの、各種政策効果もあり、緩やかな拡大傾向となることが見込まれる」とし、判断は据え置かれている。景気の下押しリスクをもたらす要因については、2013年2月も2013年1月と同様、「ただし、輸出や不動産価格の動向に留意する必要がある」としている。韓国に関しては、景気の現状について、2013年2月は「景気は足踏み状態となっているものの、一部に持ち直しの動きもみられる」としており、一部に文言の違いはあるものの2013年1月の判断をほぼ踏襲している。台湾に関しては、2013年1月の「景気はこのところ持ち直しの動きがみられる」から2013年2月には「景気は持ち直している」とし、判断は上方修正されている。先行きについては韓国と台湾ともに、2013年1月に引き続き2013年2月も「持ち直しの動きが続くと見込まれる」としている。景気の下押しリスクをもたらす要因については、2013年2月も2013年1月と同様、「輸出の動向に留意する必要がある」としている。インドに関しては、景気の現状について、2013年2月も2013年1月と同様、「景気の拡大テンポは弱まっている」としている。先行きについても前月と同様、「当面、低めの成長となることが見込まれる」とし、判断を据え置いている。景気の下押しリスクをもたらす要因についても前月と同様、「物価上昇によるリスクに留意する必要がある」としている。
 ヨーロッパ地域に関しては、現状について、2012年1月は「景気は弱含んでいる。ドイツでは、このところ足踏み状態となっている」としていたが、2013年2月には「景気は弱い動きとなっている」とし、ドイツを含め判断は下方修正された。先行きについては、2013年1月は「当面、弱い動きとなることが見込まれる」としていたが、2013年2月には「当面、弱い動きとなるものの、次第に底入れに向かうことが期待される。」とし、上方修正含みの判断が示されている。景気の下押しリスクをもたらす要因として、「各国の財政緊縮による影響や、高い失業率が継続すること等に留意する必要がある」との文言は、2013年1月に引き続き2013年2月にも踏襲されている。残りの部分については、2013年1月の「一部の国々における財政の先行きに対する根強い不安を背景とした金融面への影響により、景気が低迷するリスクがある」から、2013年2月には「一部の国々における財政の先行きに対する不安が再燃した場合、金融面への影響等を通じて景気が低迷するリスクがある」へと改められた。EU諸国内で今なおくすぶり続けている債務危機が再燃しかねない状況への強い懸念と、それに対する政府の警戒姿勢をより一層強めていることをにじませる表現となっている。
 以上に示した2013年2月報告では、「アベノミクス」への強い期待感をテコに2013年に入って以降も続く円安・株高を背景に、企業マインドだけでなく消費者のマインドも含め、景気回復の端緒となりそうな動きに光が当てられている。今後の見通しでは、「アベノミクス」がもたらす効果への自信が引き続きアピールされてもいる。海外の景況感については、EUでの債務危機再燃懸念というリスクが若干つきまとうものの、米国とアジアで景気が落ち着きをみせていることもあり、この先輸出にも追い風が続くとの読みがあるようだ。後は「アベノミクス」の三本の矢が、内需を中心に、いかに迅速かつ着実に実体経済にプラス効果をもたらしていけるかどうかが、今後の景気と消費の回復を巡る議論の焦点となってこよう。

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