2013年4月12日に内閣府より公表された「月例経済報告(平成25年4月)」によると、景気の現状について、2013年3月は「景気は、一部に弱さが残るものの、このところ持ち直しの動きがみられる。」とし、基調判断は3ヶ月連続で上方修正された。2013年4月は2013年3月と同じ文言となっており、基調判断は維持されている。先行きについては、2013年4月は「輸出環境の改善や経済対策、金融政策の効果などを背景に、マインドの改善にも支えられ、次第に景気回復へ向かうことが期待される。」とし、上方修正含みの判断が示されている。景気の下押しリスクをもたらす要因については、2013年2月の「海外景気の下振れが、引き続き我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、雇用・所得環境の先行き等にも注意が必要である。」との文言が、2013年3月と2013年4月にも踏襲されている。
個別項目を見ると、個人消費は、2013年4月には「持ち直している。」へと上方修正されている。生産は、2013年3月には「持ち直しの動きがみられる。」へと上方修正され、2013年4月は3月の判断が維持されている。輸出は、2013年4月には「下げ止まりつつある。」へと上方修正されている。設備投資は、2013年3月には「下げ止まりつつある。」へと上方修正され、2013年4月は3月の判断が維持されている。公共投資は、2013年4月には「総じて底堅い動きとなっている。」へと、上方修正含みの判断が示されている。企業収益は、2013年3月には「大企業を中心に改善の兆しがみられる。」へと上方修正され、2013年4月は3月の判断が維持されている。倒産件数は、2013年4月には「このところ緩やかに減少している。」へと、上方修正されている。雇用情勢は、2013年3月には「依然として厳しさが残るものの、このところ改善の動きがみられる。」へと上方修正され、2013年4月は3月の判断が維持されている。
海外経済の現状については、「世界の景気は、弱い回復が続いているものの、底堅さもみられる。」としている。先行きについては、「当面、弱い回復が続くものの、次第に底堅さを増すことが期待される。」としている。現状と先行きのいずれも、2013年2月と2013年3月に引き続き、2013年4月も判断は据え置かれている。海外経済の先行きに対するリスク要因に関しては、2013年4月には「欧州政府債務危機が引き続き景気の下振れリスクとなっている。」としており、欧州政府債務危機への警戒感は引き続き強い。他方で、「アメリカにおける財政問題等にも留意する必要がある。」としており、アメリカにおける財政問題については若干トーンダウンしている。
地域別にみると、アメリカに関しては、景気の現状について、2013年2月の「景気は緩やかな回復傾向となっている」との文言が、2013年3月と2013年4月にも踏襲されており、判断は維持されている。先行きについて、2013年4月には「緩やかな回復傾向で推移すると見込まれる。」としており、上方修正含みの判断が示されている。景気の下押しリスクをもたらす要因については、2013年4月には「財政問題への対応による影響や雇用情勢等の推移に留意する必要がある。」としており、リスク要因に対する警戒姿勢は若干緩んではいるようだ。
アジア地域のうち、中国に関しては、景気の現状について「景気の拡大テンポはやや持ち直している」としている。先行きについては、「依然不確実性が残るものの、各種政策効果もあり、緩やかな拡大傾向となることが見込まれる」としている。現状と先行きのいずれも、2013年2月と2013年3月に引き続き、2013年4月も判断は据え置かれている。景気の下押しリスクをもたらす要因について、2013年4月も2013年2月や2013年3月と同様、「ただし、輸出や不動産価格の動向に留意する必要がある」としている。韓国に関しては、景気の現状について、2013年3月には「景気は足踏み状態となっている。」へと、判断は下方修正された。2013年4月も3月と同じ文言となっており、判断は維持されている。先行きについても、2013年3月には「当面、足踏み状態が続くものの、次第に持ち直していくことが期待される。」へと、下方修正含みの判断が示された。2013年4月も3月と同じ文言となっており、判断は維持されている。台湾に関しては、景気の現状について、「景気は持ち直している」としている。先行きについては、「持ち直しの動きが続くと見込まれる。」としている。現状と先行きのいずれも、2012年2月と2013年3月に引き続き、2013年4月も判断は維持されている。景気の下押しリスクをもたらす要因についても、2013年4月も2013年2月や2013年3月と同様、「輸出の動向に留意する必要がある」としている。インドに関しては、景気の現状について、2013年3月には「景気は緩やかに減速している。」へと、判断は下方修正された。2013年4月も3月と同じ文言となっており、判断は維持されている。先行きについては、2013年2月の「当面、低めの成長となることが見込まれる。」との文言が、2013年3月と2013年4月にも踏襲されており、判断は維持されている。景気の下押しリスクをもたらす要因についても、2013年4月も2013年2月や2013年3月と同様、「物価上昇によるリスクに留意する必要がある。」としている。
ヨーロッパ地域に関しては、現状について、「景気は弱い動きとなっている」としている。先行きについては、「当面、弱い動きとなるものの、次第に底入れに向かうことが期待される。」としている。現状と先行きのいずれも、2012年2月と2013年3月に引き続き、2013年4月も判断は維持されている。景気の下押しリスクをもたらす要因として、2013年4月では2013年3月に引き続き、「一部の国々における財政の先行きに対する不安が再燃した場合、金融面への影響等を通じて景気が低迷するリスクがある。」との文言が、「各国の財政緊縮による影響や、高い失業率が継続すること等に留意する必要がある。」との文言に先んじて言及されている。EU諸国内での債務危機再燃への懸念に力点を置いた表現とすることで、欧州経済の先行きに対する警戒姿勢を強くにじませた格好だ。
以上に示した2013年4月報告では、持続する円安や株高、マインド改善の動きに加え、それらを受けた消費での明るい動きなどは、前向きに評価されている。ただ、足許での輸出や生産、設備投資の動きは回復への力強さに欠けているとの認識から、景気の現状については一旦様子見とする判断が示されたようだ。今後の見通しについて政府は、「アベノミクス」がもたらす効果への自信を崩してはいない。とりわけ、大幅に進んだ円安をテコとした輸出や企業業績の回復、長期金利の低下やインフレ期待の醸成を原動力とした企業の設備投資や家計の住宅投資の盛り上がりなどに、期待を寄せているようだ。EUでの債務危機再燃懸念や中国経済の失速・低迷などのリスクがつきまとい、海外経済の足取りも盤石さに欠ける。輸出のみに頼った回復では、いささか心許ないところだ。「アベノミクス」を巡る評価は既に、投資や生産、雇用、収入などの実体経済面での具体的成果を、(たとえ少しでも)いかに迅速に示せるかが問われる段階に入っている。
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