2013年7月4日に開かれた日本銀行・支店長会議での報告内容をベースに取りまとめられた「地域経済報告-さくらレポート-(2013年7月)」によると、全国9地域うち、東北を除く8地域で、景気判断は前回報告(2013年4月時点)よりも上方修正された。東北については、景気判断は据え置きとなっている。8地域以上が2四半期連続で上方修正されるのは、2009年7月と10月の2期間以来、3年9ヶ月ぶりのこととなる。本報告では、今回の上方修正の背景として、「家計・企業マインドが改善するもとで国内需要が底堅さを増しているほか、海外需要も持ち直しに向かっていることを背景に、多くの地域から、『持ち直している』等の報告があった。」としている。個人消費については、前回に引き続き、消費者マインドの改善等を背景に、「持ち直しの動きがみられる」「底堅く推移している」といった報告が各地域からは出されている。前回報告と比較すると、北海道、北陸、関東甲信越、近畿、九州・沖縄の5地域では判断が上方修正されており、四国に関しても上方修正をにじませる表現となっている。
個人消費の中身についての言及に着目すると、大型小売店販売額のうち、百貨店については多くの地域で、高額品の販売の好調ぶりが前回報告よりも若干強調されている。他方、スーパーに関しては、ほとんどの地域で依然弱含みとなっている点は、前回と同様である。乗用車販売については、多くの地域から、「持ち直している」、「堅調に推移している」等の報告が出されており、前回よりも状況が改善していることが示されている。家電販売について、白物家電の堅調さと黒物家電の低迷ぶりは前回報告と同様だが、今回、一部の地域からは「全体としては横ばい圏内の動き」といった報告が出始めるなど、前向きの動きが示唆されている。旅行関連需要については前回と同様、多くの地域で、良好ぶりを示唆する報告が挙がっている。
雇用情勢については、多くの地域から、「労働需給は緩やかに改善している」等の報告が出されている。前回報告と比較すると、北陸、関東甲信越、東海、近畿、四国、九州・沖縄の6地域で、判断が上方修正されている。他方、雇用者所得については、地域により強弱が分かれている。その内訳をみると、北陸では改善、近畿、四国、九州・沖縄の3地域では横ばい、関東甲信越、東海、中国の3地域では弱含みの状況にある。前回報告と比較すると、北陸、東海、四国の3地域では判断が上方修正されており、北海道と中国に関しては上方修正をにじませる表現となっている。ただし、関東甲信越では判断が下方修正されている。
2013年7月10日から11日にかけて開催された日本銀行・金融政策決定会合にて、景気判断は、前回6月の「持ち直している」から今回は「緩やかに回復しつつある」へと7ヶ月連続で上方修正され、2011年1月以来2年6ヶ月ぶりに「回復」の文言が盛り込まれた。2013年7月1日に公表された「第157回 全国企業短期経済観測調査」(日銀短観:2013年6月)によると、企業の業況判断が前回よりも総じて改善しており、特に大企業の製造業と非製造業、中堅企業の非製造業では業況判断DIがプラスに転じている。更に、2013年度の設備投資計画でも、設備投資額(ソフトウェアを含む設備投資額(除く土地投資額)ベース)の前年比伸び率は前回調査時点よりも総じて上方修正されており、中小企業の非製造業を除いた残りのすべての層で概ね4%を超えるプラスとなっている。長期金利が落ち着きを取り戻し、マーケットにも再びフォローの風が吹き始めていることに加え、直近の日銀短観の結果や前述の日本銀行・支店長会議での報告内容などから、黒田総裁を始めとする日銀幹部は、足許での実体経済の改善に手ごたえを感じつつ、景気の先行きに対し自信を深めており、それが今回の金融政策決定会合での景気判断の上方修正にみられるような強気のスタンスにも現れているようだ。
本コンテンツの全文は、メンバーシップサービスでのご提供となっております。 以降の閲覧にはメンバーシップサービス会員(有料)ご登録が必要です。
|
本論文に関連する統計データ