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(2013.11)
月例消費レポート 2013年11月号
一時的な低迷を脱し、回復の勢いが再び強まる消費
主任研究員 菅野 守

1.はじめに
 2013年も既に二の酉を終え、師走の声も近付きつつある。昨年の衆議院解散から既に1年が過ぎ、メディアでは「アベノミクス」に対する総括も処々で出始めてもいる。振り返れば昨年の同じ時期には、12月半ばの総選挙に向けて、賛成派と反対派の双方ともいささかヒートアップしていた。それに比べれば、今年は年末に向けて、世間の雰囲気も比較的落ち着いているようだ。
 2013年11月14日に内閣府より公表された「四半期別GDP速報(2013年7-9月期・1次速報)」によると、2013年7-9月期のGDP成長率(季節調整済前期比)は、1次速報値において、実質+0.5%〔4~6月期は+0.9%〕、名目+0.4%〔4~6月期は+1.1%〕となり、実質、名目ともに4 四半期連続のプラス成長となった。需要項目別に成長率(季節調整済前期比)をみると、特に需要の三本柱のうち、民間最終消費支出は実質+0.1%〔4~6月期は+0.6%〕、名目+0.4%〔4~6月期は+0.5%〕である。民間企業設備は実質+0.2%〔4~6月期は+1.1%〕、名目+0.4%〔4~6月期は+1.4%〕である。財貨・サービスの輸出は実質-0.6%〔4~6月期は+2.9%〕、名目+0.8%〔4~6月期は+4.8%〕である(ちなみに、民間最終消費支出の前期比寄与度は実質+0.1%、民間企業設備の前期比寄与度は実質+0.0%、財貨・サービスの輸出の前期比寄与度は実質-0.1%である)。今回の一次速報で成長率が特に高かったものに着目すると、まず、公的固定資本形成は実質+6.5%〔4~6月期は+4.8%〕、名目+6.6%〔4~6月期は+5.5%〕である。次に、民間住宅は実質+2.7%〔4~6月期は+0.4%〕、名目+3.4%〔4~6月期は+1.5%〕である(ちなみに、公的固定資本形成の前期比寄与度は実質+0.4%、民間住宅の前期比寄与度は実質+0.1%である)。最後に、民間在庫品増加の前期比寄与度は、実質+0.4%〔4~6月期は-0.1%〕、名目+0.3%〔4~6月期は-0.1%〕である。他方、今回の一次速報で、GDP成長率の足を引っ張る存在となっているのは財貨・サービスの輸入であり、その成長率は実質+2.2%〔4~6月期は+1.7%〕、名目+4.5%〔4~6月期は+2.9%〕である(ちなみに、財貨・サービスの輸入の前期比寄与度は実質-0.4%である)。
 今回の1次速報では、実質GDP成長率の数値に加え、需要の三本柱である民間最終消費支出、民間企業設備、財貨・サービスの輸出での実質成長率の数値もともに、前回の4~6月期よりも低下している。中でも、財貨・サービスの輸出での実質成長率はマイナスにまで落ち込んでいる。財貨・サービスの輸入での実質成長率の数値は、前回の4~6月期よりも上昇している。これらは、前回の4~6月期と比べた実質GDP成長率の数値の低下に寄与している要因でもある。他方、実質GDP成長率の数値の上昇に寄与しているものは、公的固定資本形成(すなわち政府の公共投資)と民間在庫品増加(すなわち、企業による意図的な在庫の積み増し、あるいは意図せざる在庫の増加)である。政府による需要下支えと民間の仮需で、輸出の低迷と輸入の増加による実質GDP成長率の落ち込みをカバーしている格好だ。
 公表された実質GDP成長率の数値は、エコノミストや市場関係者の間で事前に予想されていた水準よりも若干高めのものとなったことで、発表当初の株価にも好反応が認められた。前述したような成長率の中身を踏まえて、一部のエコノミストの間からは既に、景気の先行きを悲観視する向きも出始めてもいる。他方で、政策の舵取りを握る日銀と政府は、今回のGDP速報の結果に対しては、ひとまずは静観の構えだ。2013年11月20日から21日にかけて開催された2013年11月度の日本銀行・金融政策決定会合にて、景気判断は、前回10月と同様、今回の11月も「景気は、緩やかに回復している」とし、判断を据え置いている。需要の三本柱である個人消費、設備投資、輸出に対する判断に着目すると、個人消費は「雇用・所得環境に改善の動きがみられるなかで、引き続き底堅く推移している。」、輸出は「持ち直し傾向にある。」、設備投資は「企業収益が改善するなかで、持ち直している。」としており、いずれも前回10月の判断を踏襲している。景気の先行きに関しても、「緩やかな回復を続けていくとみられる。」とし、楽観的な見通しを崩していない点は前回10月時点と同様である。政府の側も、景気の現状認識並びに先行きともに楽観視している点は、日銀と同様だ。「四半期別GDP速報(2013年7-9月期・1次速報)」の結果を受けて、公表後に開かれた記者会見の場で甘利経済再生担当相からは、「内需の動きに底堅さが見られ、景気は引き続き上向いている」とのコメントが出されるとともに、景気の先行きに関しては、「消費は雇用、所得環境が引き続き改善する中、消費税率引き上げ前の駆け込み需要も見込まれ、緩やかな増加が見込まれる。消費を含め、内需が引き続き堅調に推移し、景気回復の動きが確かなものになることが期待される」との見解も示されている。今回の輸出の落ち込みに関しても、一時的な要因による落ち込みであり、次の期には回復するとの見方も示されている。海外景気の下振れリスクに対する警戒姿勢は解いてはいないが、外需の見通しも明るいと見ているようだ。(甘利経済再生担当相を始めとする内閣府首脳のスタンスが、この11月14日の会見で示されたものから基本的に乖離していなければ、11月22日に公表される2013年11月分の「月例経済報告」の内容も、前回10月に示された判断が概ね踏襲されることとなりそうだ。)
 政府・日銀のスタンスからも示唆されるように、今回のGDP速報でみられたような需要の三本柱(個人消費、設備投資、輸出)の成長率の減速が一時的なものに止まるかどうかは、次の10-12月期の動向にかかっている。そのうち、内需である個人消費と設備投資の10-12月期の動向は、この10月以降現在までの消費者並びに企業による消費や投資の実績とともに、現在から年末にかけてこれから出てくる消費意欲や投資意欲にかかっている。とりわけ、消費の先行きに関しては、これから迎える三の酉での賑わいに始まり、11月末頃から12月上旬にかけてのボーナス商戦、更には年末商戦や年末・年始のレジャー動向等々の成否が、消費回復の底堅さを見極める鍵となってこよう。

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