新年度に入って以降、景気と消費に関しては今のところ、波乱要因は特段みられてはいない。今回、2015年度予算案の通過・成立が新年度の4月に食い込むこととなり、10日程度の暫定予算案の編成を迫られたが、このことが政局の材料とはならなかった。予算成立後、安倍政権の重点は安全保障関連法案の成立や労働基準法と農協法の改正などに移ってきており、経済政策に関して目新しい材料が出てくる気配は当分なさそうである。政策面からは相場を押し上げる材料が依然乏しい中で、2015年4月半ば頃に株価は一時2万円台をうかがう動きがみられたが、一旦仕切り直しとなり、4月22日にようやく15年ぶりに2万円台に乗せると、翌23日には更なる上昇をみせている。
2015年4月1日に公表された日本銀行「第164回 全国企業短期経済観測調査」(日銀短観:2015年3月)によると、前回の2014年12月から今回の2015年3月にかけての業況判断DIの推移をみると、全産業・全規模合計では+6から+7となり、殆ど変化がなかった。規模別・産業別にみると、非製造業では規模の違いによらず、DIの数値に改善が認められたのに対し、中堅企業・製造業と中小企業・製造業では、DIの数値には悪化が認められる。ソフトウェアを含む設備投資額(除く土地投資額)について、2014年12月から2015年3月にかけての前年度比の推移をみると、規模や産業の違いによらず、2015年度の設備投資額の計画伸び率の数値は2014年度の計画伸び率の数値をいずれも下回っていることが確認できる。今回の日銀短観からは、企業マインドや設備投資に関し、一部で弱い数値が出始めていることが確認できる。
ただ、政府と日銀ともに、景気の現状については、企業部門の業績改善を好感し、判断を上方修正している。景気の先行きに対しても、回復基調にあるとの判断を両者ともに堅持している。個別の項目のうち、設備投資や個人消費などの内需に関しては、堅調との見方は両者で共有されてはいるが、政府は設備投資と個人消費ともに横ばい基調とみているのに対し、日銀は設備投資では若干強気、個人消費では若干弱気のスタンスがみられる。その他の項目では、概ね改善基調にあるとの見方で両者は一致している。
政府・日銀を始めとして、景気の先行きを占う上で鍵となるのは、設備投資や個人消費などの内需の動向にあるとみられている。設備投資に関しては、日銀短観などを見る限り、弱い動きとなっており、先行き不透明感がつきまとってはいるようだ。他方、消費に関しては、雇用環境、収入環境、消費マインドの三本柱を筆頭に、消費をとりまく環境は好転してきている。加えて、株価も2万円の大台に乗せ、引き続き上昇基調にある。消費回復に向けて強力な援軍となる主だったメンバーは、既に出揃っているとみてよいだろう。ただ、肝心の主役である消費は、相変わらず腰が重く、回復への足取りは依然として覚束ない有様だ。
ここまでお膳立てが揃っていたとしても、消費を躊躇させる理由は幾らでも挙がってくるはずだ。ただ、それらはおそらく後付けの言い訳にすぎず、消費低調の本質的な理由ではないだろう。消費のプラス転換に向けて足りないのはむしろ、消費者のためらいを吹っ切り、次の一歩へと踏み出させる「踏ん切り」なのかもしれない。
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