6月末に至るまでの一週間の間に、株価は一時、ITバブル期以来の高値を更新し、21,000円台をうかがう動きを見せたかと思えば、他方で、今年最大の下げ幅を記録し20,000円割れ目前まで押し戻されるなど、株価は予想外の乱高下をみせている。株価の変動をもたらしている具体的な材料は時により様々だが、マーケットの地合いが、ちょっとした材料で揺さぶられやすい状況にあることに変わりはない。
2015年6月8日に内閣府より公表された2015年1‐3月期GDP速報(2次速報)によると、実質GDP成長率は1次速報値よりも上方修正された。その内訳をみると、民間企業設備投資の成長率の値は1次速報値から大幅な上昇をみせており、実質GDP成長率の上方修正に最も大きく寄与している。民間企業設備投資の予想以上の改善は、景気の先行きにとって前向きに評価できる材料である。だが反面、民間最終消費支出の成長率の値は、2次速報値でも1次速報値と変わらない結果となっている。しかも、民間最終消費支出の成長率と寄与度の値はともに、需要の三本柱の中で最も小さく、内需の中でも消費の戻りの鈍さが際立っている。
政府と日銀ともに、景気の現状認識と先行き見通しのいずれでも、回復基調にあるとの判断を前月に引き続き堅持している。2015年5月から6月にかけての両者のコメントの変化を対比すると、日銀では、景気の基調判断は据え置きとなっているが、住宅投資では改善を強調する形に表現が変更されている。景気判断のスタンスについて、日銀の方が政府に比べやや強気寄りとなっている点は、前月5月と同様である。他方、政府による景気の基調判断は3ヶ月連続で据え置きとなっているが、個別の項目をみると、設備投資と企業収益の2項目については、判断が上方修正されている。政府による設備投資についての判断の上方修正は6ヶ月ぶりのこととなるが、この結果は主に、2015年1-3月期GDP速報で、設備投資の成長率や寄与率が上方修正されたことを受けてのものと思われる。前月に比べると、景気判断としては実質、上方修正含みのスタンスが政府からは示されている。ちなみに、個人消費については、政府と日銀の両者とも、判断を据え置いている。
政府は設備投資で、日銀は住宅投資で上方修正がみられたように、内需に対してはともに前向きな判断が示されている。政府と日銀の双方とも、消費の現状と先行きをより楽観視する傾向にある点も、共通している。日銀の場合、景気の現状と先行きに関し、より一層強気な姿勢を示している点は、前月5月と同様であるが、今月に関しては、政府の側も実質、上方修正含みのスタンスを示している点は興味深い。ただし、政府と日銀によって示されている楽観的スタンスを、企業や消費者の側も額面通り受け入れるのが妥当か否かは、別途検討を要すべきことであり、今後(も)、消費の取り巻く状況を冷静に見極めることが一層必要となろう。
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