半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

(2015.07)
月例消費レポート 2015年7月号
消費にもようやく明るい動き-ただし、先行き不透明感と下方リスクは一部で残る
主任研究員 菅野 守

1.はじめに

 東北北部と九州北部の梅雨明けは例年よりも遅れていたが、7月29日ごろに梅雨明けした模様との速報が気象庁より出されたことで、日本全土も本格的な夏を迎えている。しかしながら、マーケットは、ギリシャ発や中国発の波乱要因に振り回され、株価を始めとする相場が急落する場面も時折みられるなど、「梅雨明け」と云うには程遠い有様だ。

 7月1日に日本銀行より公表された「第165回 全国企業短期経済観測調査」(日銀短観:2015年6月調査)の結果を見ると、大企業を中心に、景況感の改善が進むとともに、業績も極めて好調なことも確認できる。2015年度の設備投資の計画伸び率は、業種や企業規模の違いに因らず、前回(2015年3月調査)よりも上方修正されている。設備投資計画の動動向からは、景気の先行きに対する楽観姿勢を背景に、企業による投資への強気スタンスがうかがい知れる。

 政府と日銀ともに、景気の現状認識と先行き見通しのいずれでも、回復基調にあるとの判断を、前月に引き続き概ね堅持している。2015年6月から7月にかけての両者のコメントの変化を対比すると、日銀では、景気の基調判断は引き続き据え置きとなっている。ただし、輸出と生産に関しては、時折弱い動きがみられることを認めた文言が盛り込まれる一方で、設備投資に関しては、企業のマインド改善に手ごたえを感じ、改善を強調する表現がなされてもいる。他方、政府による景気の基調判断は4ヶ月連続で据え置きとなっているが、個別の項目をみると、生産については2ヶ月ぶりに、倒産件数については14ヶ月ぶりに、判断が上方修正されている。生産の下方修正は主に、2015年5月の鉱工業生産指数でのマイナスの動きを受けてのものと思われる。景気の先行きに対する判断も据え置いているが、景気の下押しリスクとして、中国経済の動向に対する警戒姿勢を明示した表現が、新たに盛り込まれている。政府と日銀の双方より、生産の動きの弱さを認めるコメントが出されており、足許の景気については若干弱含みの姿勢が垣間見える。ただ、日銀からは、設備投資に関して、今月は政府よりも強気なスタンスが示されているのは、日銀短観における設備投資計画での上方修正の動きを踏まえたものと目される。

 政府と日銀の双方からは、足許の景気の弱さを示唆する判断が一部で示されており、特に政府からは、海外経済の動向、中でも中国経済の動向に対する警戒姿勢が、顕著に示されている。両者ともに、景気の現状認識と先行き見通しに対する強気判断を基本的に崩してはいないものの、景気の現状と先行きを決して楽観視はしてない点は、今月7月の判断からは垣間見えてくる。マスコミ各社より公表されている安倍内閣の支持率はいずれも、2015年7月に急落、50%を大きく割り込み30%台にまで低迷するとともに、不支持率が支持率を上回るという事態になっている。この結果は、安保関連法案を始めとする政治的な「火遊び」に執心し、本来はもっと力をいれるべき経済政策に関する論議や対応をなおざりにしている今の安倍政権への、有権者からの「イエローカード」に他ならない。2017年4月からの消費税率10%への再引き上げまでの間に、日本経済にどれだけの成長の「のりしろ」を積み上げられるかによって、消費税率10%の関門を乗り越えて消費を本格回復の軌道に乗せられるか、または、2014年4月の消費税増税時と同様に、消費税率10%の関門を乗り越えられず景気は失速し消費は再び低迷状況に陥ってしまうか、が分かれてくることとなろう。


 本コンテンツの全文は、有料会員サービスでのご提供となっております。
 以降の閲覧には有料会員サービスご登録が必要です。

会員サービスのご案内についてはこちらをご覧ください。
会員サービスご登録済みの方は、下記をクリックして全文をご利用ください。

 

本論文に関連する統計データ

新着記事

2024.11.20

24年9月の「旅行業者取扱高」は19年比で75%に

2024.11.19

24年10月の「景気の先行き判断」は2ヶ月連続の50ポイント割れに

2024.11.19

24年10月の「景気の現状判断」は8ヶ月連続で50ポイント割れに

2024.11.18

企業活動分析 アルファベット(グーグル)の23年12月期は、グーグルサービスがけん引し売上過去最高を更新

2024.11.18

企業活動分析 アマゾンの23年12月期はAWSがけん引し営業利益前年比3倍へ

2024.11.15

24年9月の「現金給与総額」は33ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2024.11.14

24年9月の「消費支出」は5ヶ月連続のマイナスに

2024.11.14

24年9月の「家計収入」は5ヶ月ぶりのマイナス

2024.11.13

24年9月は「完全失業率」、「有効求人倍率」とも改善

2024.11.12

企業活動分析 ローソンの23年2月期は、「地域密着×個客・個店主義」徹底し増収増益

2024.11.12

企業活動分析 セブン&アイHDの24年2月期は海外事業の影響で減収も過去最高益を更新

2024.11.11

24年10月の「乗用車販売台数」は2ヶ月連続のプラス

2024.11.08

消費者調査データ No.416 レトルトカレー(2024年11月版) 首位「咖喱屋カレー」、3ヶ月内購入はダブルスコア

2024.11.07

企業活動分析 楽天グループの23年12月期は27期連続増収も、モバイルへの投資で4期連続の赤字

2024.11.07

24年9月の「新設住宅着工戸数」は5ヶ月連続のマイナス

2024.11.06

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 伸長するパン市場  背景にある簡便化志向や節約志向

2024.11.05

企業活動分析 ファンケルの24年3月期算は国内売上がけん引し、3期ぶりの増収増益へ

2024.11.05

企業活動分析 コーセーの23年12月期は、国内好調も中国事業低迷で増収減益に

2024.11.01

成長市場を探せ コロナ禍の落ち込みから再成長する惣菜食市場(2024年)

2024.10.31

月例消費レポート 2024年10月号 消費は緩やかな改善が続いている-政治が消費回復のリスクに

2024.10.31

消費からみた景気指標 24年8月は6項目が改善

週間アクセスランキング

1位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

2位 2017.09.19

MNEXT 眼のつけどころ なぜ日本の若者はインスタに走り、世界の若者はタトゥーを入れるのか?

3位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

4位 2024.02.02

成長市場を探せ コロナ禍乗り越え再び拡大するチョコレート市場(2024年)

5位 2021.05.25

MNEXT 眼のつけどころ プロ・マーケティングの組み立て方 都心高級ホテル競争 「アマン」VS.「リッツ」(1)

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area