熊本地震の発生から40日余りが過ぎた。被災地では、「日常」への復帰が一歩ずつ進められてはいるが、地震がもたらしたダメージは予想以上に大きいものとなっている。5月23日には内閣府より、熊本地震による熊本、大分両県での被害額が、最大で4.6兆円に上るとした試算も公表された。この被害規模は、2004年の中越地震(最大3兆円)を超え、2011年の東日本大震災(同16.9兆円)や1995年の阪神大震災(同9.9兆円)に次ぐ、過去3番目の大きさとなりそうである。被災地域に止まらず、九州全体での経済的ダメージも、観光業を始めとして、大きくなる可能性が懸念されている。官邸や与党内部からは、九州の観光産業に対する支援策として、国が費用の一部負担する形で旅行券を発行するプランなどが、表明されてもいる。
政府並びに日銀は、景気の現状認識と先行き見通しに関して、引き続き、厳しい見方を崩してはいない。2016年4月27日と28日の両日で開催された、日本銀行の金融政策決定会合によると、景気の現状について、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられはするものの、基調判断としては従来と同様、緩やかな回復を続けているとの見方を堅持している。今後の景気見通しについては、当面、輸出・生産面の鈍さの影響は残るものの、家計・企業の両部門で所得から支出への前向きの循環メカニズムは持続することで、国内需要は増加基調をたどる。加えて、新興国経済が減速状態から脱していくことで、輸出も緩やかに増加するとみられる。よって景気は今後、緩やかに拡大していく、との予想が示されている。政府は、2016年5月23日公表の月例経済報告では、景気の基調判断並びに先行き判断ともに、前回の2016年4月公表分に引き続き、据え置きとした。景気の基調判断では「景気は、このところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」とし、先行き判断では「雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復に向かうことが期待される」としている。景気の先行きに対するリスク要因についても、今回2016年5月は、前回4月公表時の表現を踏襲している。具体的には、中国を始めとするアジア新興国や資源国等での景気の下振れを引き金とした、国内景気への下押しリスクや、内外の金融資本市場での変動の余波の他、熊本地震がもたらす経済的ダメージなどが、景気の先行きに対するリスク要因として明示されている。個別項目のうち、住宅建設については、前月4月の「おおむね横ばいとなっている」から、今月5月は「このところ持ち直しの動きがみられる」へと、判断は9ヶ月ぶりに上方修正された。他方、企業収益については、前月4月の「非製造業を中心に改善傾向にある」から、今月5月は「改善傾向にあるが、そのテンポは緩やかになっている」へと、判断は2ヶ月ぶりに下方修正されている。
政府と日銀はともに、景気の基調判断並びに先行き判断に関して、「緩やかな回復基調が続いている、緩やかな回復を続けている」並びに「緩やかな回復に向かう、緩やかに拡大していく」というように基本的に前向きなスタンスを示す一方で、新興国経済の減速など、海外発の経済的波乱要因への警戒姿勢の強さも、政府と日銀の双方で共通している。
5月26日より始まった伊勢志摩サミットでは、世界経済の下支えのための対応策として、財政出動を始めとする経済政策で、各国の足並みがどこまでそろえられるかが焦点となった。翌27日に出された首脳宣言では、「世界経済の見通しに対する下方リスクが高まってきている」との認識の上で、新たな危機を回避し持続可能で均衡ある成長の達成に貢献するための対応策として打ち出された「G7伊勢志摩経済イニシアチブ」に沿って、機動的な財政出動をはじめ金融政策、構造改革など、G7各国が状況に応じて政策を総動員して世界経済を支えていく姿勢が強調されている。今回のサミットで議長国を務めた日本としては、「先ず隗より始めよ」のコトバにならい、機動的な財政出動の先鞭をつけることが求められてくる。その場合、財政出動というアクセルと、消費税再増税というブレーキとを、どのように折り合いをつけて、どのタイミングでそれぞれを踏んでいくのか、という方針を定めることが、先ずは必要となろう。
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