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(2017.12)
月例消費レポート 2017年12月号
消費の方向性は依然として不透明
-一部では前向きな動き。本格回復への条件は整いつつある
主任研究員 菅野 守

 JMR消費INDEXは、2017年9月時点まで、上昇傾向を保っている。INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出水準関連指標では、2017年8月から9月にかけて3項目全てが前年同月比で悪化となっていたが、10月には消費支出と平均消費性向の2項目が改善に転じている。他方、販売関連指標では、2017年10月時点で判明している9項目中、改善が2項目、悪化が7項目となり、前月とは異なり悪化の側が優勢に転じている。消費の動きは方向感が定まらない状況が続いてはいるが、これまで顕著な悪化が続いていた支出水準関連指標が改善に転じたことは、消費にとって前向きな動きと評価できるだろう。

 公表された2017年10月以降の各種経済指標から、消費を取り巻く状況を整理すると、消費支出は、2017年10月現在、名目と実質ともに再びプラスに戻っている。10大費目別にみると、実質ではプラスの費目数とマイナスの費目数とがほぼ拮抗しているが、実質ではプラスの費目数の方が上回っている。費目別に2017年9月から2017年10月にかけての伸び率の変化をみると、伸び率の値が上昇している費目数の方が伸び率の値が低下している費目数を上回っている。10大費目別では、改善の側がより優勢となっている。販売現場での動きとして、2017年10月現在、商業販売や外食などの日常生活財は総じて伸び率の値は低下し、一部ではマイナスに転じるなど、悪化の動きがみられる。耐久財のうち、新車販売では、乗用車(普通+小型)はマイナス、軽乗用車はプラスの状況が続いている。新設住宅着工戸数は、一部を除き概ねマイナスとなっている。家電製品出荷も、概ねマイナスとなっているが、黒物家電の一部ではマイナスが続いていた状況からプラスへと改善している。耐久財でも、悪化の動きが目立っている。雇用環境は、有効求人倍率と完全失業率のいずれでみても、息の長い盤石ぶりをみせている。収入環境についても、現金給与総額、所定内給与、超過給与額の全てが3ヶ月連続でプラスとなり、改善の動きが続いている。消費マインドも、景気ウォッチャー現状判断DIと消費者態度指数はともに3ヶ月連続で改善しており、消費マインドでもようやく回復の動きが本格化しつつあるようだ。

  経済全般の状況に着目すると、輸出は改善の動きが進展している。生産も、引き続き上昇傾向を保っている。マーケットの動向をみると、株価は2017年11月7日に終値で約25年10か月ぶりの高値を付けた後、一時下落が続いたが、11月半ば以降は上下動を伴いつつも上昇傾向にある。為替は11月の間は円高傾向にあったが、その後は円安傾向に転じている。長期金利は11月以降、+0.04%を中心に横ばい傾向で推移しているが、変動幅は11月に比べ12月の方がわずかながらもより狭くなっている。

 総合すると、消費は依然として方向感が定まらないが、一部で前向きな動きも出始めている。輸出と生産の改善が続くとともに、株価と為替は足許で株高・円安の傾向で推移し、長期金利も低下安定が続いている。実体経済の回復が着実に進展している中で、雇用環境の盤石さ、収入環境の改善、消費マインドでの回復の動きの本格化など、消費の本格回復に向けた環境条件は整いつつある。消費の先行きに対する追い風がその勢いを保っている間に、本格回復への弾みとなる一押しが必要とされている。

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