JMR消費INDEXの中長期的な近似曲線は、2018年2月時点まで上昇トレンドを保ってきた。ただし、短期的な動きをみると、INDEXは2017年6月辺りをピークに概ね低下傾向にある(図表1)。INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出水準関連指標では、2018年2月以降、3項目全てが悪化となっている。販売関連指標では、2018年2月時点で、全10項目中、改善が5項目に対し悪化が5項目となり、改善の側と悪化の側とが拮抗していた。2018年3月時点では、判明している9項目中、改善が5項目に対し悪化が4項目となっており、わずかながらも改善の側が優勢となっている。支出水準関連指標では悪化の動きが続いているのに対し、販売関連指標では改善寄りの動きがみられる。2018年3月においても、両指標間で変化の方向は分かれている(図表2)。
公表された2018年3月以降の各種経済指標から、消費を取り巻く状況を整理すると、消費支出は、勤労者世帯では2018年2月以降、名目と実質ともに伸びはマイナスが続いている。二人以上世帯では2018年3月時点で、実質ベースの伸びはマイナスに転じて、名目ベースの伸びはプラスを保ちつつも伸び率の値は更に低下している。二人以上世帯をベースに、10大費目別にみると、名目では前月2月と同様、プラスの費目数がマイナスの費目数を大きく上回っており、実質でも、プラスの費目数がマイナスの費目数を上回っている。双方を勘案すると、全体では悪化の動きが進む一方で、10大費目別では引き続き改善の側が優勢の傾向は保たれており、消費支出の動きも方向感は定まらずにいる(図表5、図表6)。ただ、消費者物価指数は2018年3月に、総合、財、サービス全ての指数の伸びは前月2月よりも低下しており、ここ数ヶ月の間続いてきた物価上昇の動きにも沈静化の気配がみられる(図表7)。販売現場での動きをみると、2018年3月現在、商業販売や外食などの日常生活財では、一部の業態を除き、伸びは引き続きプラスを保っている(図表11、図表15)。耐久財のうち、新設住宅着工戸数では2018年3月に、全体でみてもカテゴリー別でみても、伸びはマイナスとなっており、悪化の動きが続いている。家電製品出荷では2018年3月現在、白物家電で伸びはプラスが続いている一方、黒物家電で伸びはマイナスに転じている。新車販売は2018年4月に、軽乗用車で伸びはプラスに戻している。乗用車(普通+小型)では伸びはマイナスながらも伸び率の値は上昇しており、改善の方向への動きがみられる。耐久財では、カテゴリー間での好不調の格差は、依然として残ったままだ(図表12、図表13、図表14)。雇用環境では、2018年3月に、完全失業率は横ばいとなり、有効求人倍率は再び上昇に転じている。足許の雇用環境は、現状維持で推移している(図表8)。収入環境については、現金給与総額、所定内給与、超過給与額の全てで、2017年8月以降はほぼプラスを保ち続けている。収入環境は引き続き、堅調な推移を保っている(図表9)。他方で、消費マインドに関しては、2018年4月時点で、景気ウォッチャー現状判断DIと消費者態度指数の双方で、再び悪化の動きに転じており、消費マインドの動きは冴えない(図表10)。
経済全般の状況に着目すると、輸出は2018年3月現在、伸びはプラスを保っており、伸び率の値の低下傾向にも一旦歯止めがかかった。生産は上昇の動きが続いているが、2018年1月の大幅な落ち込みからはまだ回復しきれていない(図表16、図表18)。マーケットの動向をみると、3月下旬から5月半ばにかけて、相場は円安・株高傾向で推移している(図表21)。長期金利は3月下旬以降、概ね緩やかな上昇傾向を保っている(図表22)。
総合すると、消費は、方向感が定まらないまま、足踏み状態が続いている。ただ、消費支出全体で悪化の動きが目立ってきている。雇用・収入環境は堅調さを保っているが、消費マインドの動きが冴えない点は今後の消費にとって気がかりな材料である。他方で、マーケットが円安・株高基調で推移してきており、長期金利も落ち着きを見せていることは、今後の景気や消費にとって前向きな動きと評価できる。
2018年5月16日に内閣府より公表された、四半期別GDP速報(一次速報値)によると、2018年1~3月期の実質GDP成長率は前期比‐0.2%となり、2015年10~12月期以来、9四半期ぶりのマイナス成長となった。需要項目別に実質成長率の内訳をみると、財貨・サービスの輸出は+0.6%のプラスだが、民間最終消費支出は‐0.0%のマイナス、民間住宅は‐2.1%のマイナス、民間企業設備は‐0.1%のマイナスとなった。外需は勢いが弱いながらも好調であった反面、内需は低調となっている。特に消費や住宅投資の低調ぶりは、弊社消費INDEXの個別項目からも既に確認されており、特段驚くべき事柄ではない。ただ今回は、消費、住宅投資、設備投資に加え、民間在庫変動も軒並みマイナスとなっており、これは2009年1~3月期以来のこととなる。2019年1月に控える「いざなみ超え」の可能性もにらみつつ、この先、景気と消費に息切れの気配が出てくるのか否か、注意を要するところだ。
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