JMR消費INDEXの中長期的な近似曲線は2018年3月現在、上昇トレンドにある。短期的な動きとして、INDEXは2017年6月辺りをピークに概ね低下傾向にあったが、2018年2月時点を底に、低下の動きにも一旦歯止めがかかっている(図表1)。INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出水準関連指標では、消費支出は3ヶ月ぶりにプラスに戻したが、平均消費傾向は2018年2月以降、預貯金は2017年6月以降、悪化が続いている。販売関連指標では、2018年3月時点で、全10項目中、改善が6項目に対し悪化が4項目となり、改善の側が優勢である。2018年4月時点でも、判明している9項目中、改善が6項目に対し悪化が3項目となっており、前月3月時点に比べて改善の側がより優勢となっている。支出水準関連指標では一部で改善の動きが見られており、販売関連指標でも改善の動きが強まっている。2018年4月においては、支出水準関連指標と販売関連指標の両者の動きは、改善の方向で一致している(図表2)。
公表された2018年4月以降の各種経済指標から、消費を取り巻く状況を整理すると、消費支出は、勤労者世帯では2018年4月に、名目と実質ともに伸びはプラスに戻している。ただし、二人以上世帯では2018年4月時点で、名目と実質ともに伸びはマイナスとなっているが、無職世帯や個人営業などの世帯といった勤労者以外の世帯の動きが消費支出の足を引っ張った格好だ。二人以上世帯をベースに、10大費目別にみると、2018年4月時点では前月3月とは異なり、名目と実質ともにマイナスの費目数がプラスの費目数を上回っている。双方を勘案すると、全体でみても、10大費目別でみても、消費支出の動きは方向感が定まっていない(図表5、図表6)。ただ、消費者物価指数では2018年4月時点で、総合と財の指数の伸びが前月3月よりも低下しており、物価上昇は沈静化傾向にある(図表7)。販売現場での動きをみると、2018年4月現在、商業販売や外食などの日常生活財では、一部の業態を除き、伸びは引き続きプラスを保っている(図表11、図表15)。耐久財のうち、新設住宅着工戸数では2018年4月に、全体での伸びは10ヶ月ぶりにプラスに転じるとともに、カテゴリー別でみても概ね伸びはプラスに転じており、総じて改善の動きがみられる。新車販売は2018年5月時点では前月4月と同様、軽乗用車で伸びはプラスを保っているが、乗用車(普通+小型)では伸びはマイナスが続いている。他方、家電製品出荷は2018年4月現在、黒物家電で伸びはマイナスが続くとともに、白物家電では伸びはマイナスに転じるなど、総じて悪化している。耐久財では、改善と悪化の動きが交錯しており、カテゴリー間での好不調の格差も依然として残ってはいる。ただ、長らく悪化が続いてきた新設住宅着工戸数で、改善の動きが出てきたことは、前向きに評価できるだろう(図表12、図表13、図表14)。雇用環境では、2018年4月時点で、完全失業率と有効求人倍率ともに横ばいとなっている。足許の雇用環境は引き続き、現状維持で推移している(図表8)。収入環境については、現金給与総額、所定内給与、超過給与額の全てで、2017年8月以降はほぼプラスを保ち続けている。収入環境もこれまでと同様に、堅調な推移を保っている(図表9)。他方で、消費マインドに関しては、2018年4月時点で、景気ウォッチャー現状判断DIは低下が続いている一方で、消費者態度指数は再び上昇に転じている。消費マインドの方向感は足許で定まっていない(図表10)。
経済全般の状況に着目すると、輸出は2018年4月現在、伸びはプラスを保つとともに、伸び率の値も上昇に転じている。生産も緩やかながら上昇の動きが続いている(図表16、図表18)。マーケットの動向をみると、相場は3月下旬から5月中旬にかけて円安・株高傾向で推移した後、5月下旬に一時的に円高・株安方向に振れたが、6月に入って以降は再び円安・株高傾向で推移している(図表21)。長期金利は、3月下旬から5月中旬にかけて概ね緩やかな上昇傾向で推移した後、5月下旬に一時低下の動きがみられたが、6月に入って以降は概ね0.05%台での横ばい傾向にある(図表21)。ただし、2018年6月18日の大阪北部地震の影響を受けて、足許の相場は再び円高・株安方向に振れている。
総合すると、消費は強弱両材料が交錯し、方向感は定まっていない。ただ、経済全般では景気回復の動きが持続している中で、雇用・収入環境は堅調な推移を続けており、消費を取り巻く環境にかげりはみられない。消費の中身についても、これまでは悪化の動きが続いてきた一部の層や一部のカテゴリーにおいて、足許で改善への動きが認められるなど、消費には一部で持ち直しの気配がみられる。この先、大阪北部地震に伴う景気への下押し圧力を一時的なものとしてこなしつつ、その勢いと裾野の広がりの両面で消費の復調をより確かなものとしていけるかどうかで、2019年1月に控える「いざなみ超え」の実現可能性やその後のシナリオなども変わってくることとなりそうだ。
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