JMR消費INDEXの中長期的な近似曲線は2018年3月現在、上昇トレンドにある。短期的な動きとして、INDEXは2017年6月辺りをピークに概ね低下傾向にあったが、2018年2月時点を底に、低下の動きにも一旦歯止めがかかっている(図表1)。INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出水準関連指標では、消費支出は2018年5月に再び悪化に転じた。平均消費傾向は2018年2月以降、預貯金は2017年6月以降、悪化が続いている。販売関連指標では、2018年4月時点で、判明している9項目中、改善が6項目に対し悪化が3項目となり、改善の側が優勢であった。だが、2018年5月時点では、判明している9項目中、改善が3項目に対し悪化が6項目となっており、前月4月時点とは異なり、悪化の側が優勢に転じている。支出水準関連指標では再び、3項目全てが悪化となっており、販売関連指標でも悪化の動きが優勢となっている。2018年5月においては、支出水準関連指標と販売関連指標の両者の動きは、悪化の方向で一致している(図表2)。
公表された2018年5月以降の各種経済指標から、消費を取り巻く状況を整理すると、消費支出は、勤労者世帯では2018年5月に、名目と実質ともに伸びは再びマイナスに落ち込んでいる。二人以上世帯でも、2018年5月時点で前月4月と同様、名目と実質ともに伸びはマイナスとなっている。10大費目別にみると、2018年5月は、名目ではプラスの費目数とマイナスの費目数が等しくなっており、前月4月よりもプラス寄りの動きがみられる。実質では、マイナスの費目数が6、プラスの費目数が4と、マイナスの側がわずかに上回っているが、この数値は前月4月と同じである。10大費目別では、改善方向への動きが認められる。双方を勘案すると、全体と、10大費目別とで、消費支出の動きは必ずしも一致はしていない(図表5、図表6)。消費者物価指数では2018年5月時点で、総合の指数の伸びは横ばい、財とサービスの指数の伸びはともにわずかなものに止まっており、物価は引き続き緩やかな上昇を保っている(図表7)。販売現場での動きをみると、2018年5月以降、商業販売や外食などの日常生活財では、前月4月に比べ伸びは低下しており、マイナスに落ち込んでいる業態の数も増えている(図表11、図表15)。他方、耐久財のうち、新設住宅着工戸数では2018年5月に、全体での伸びは引き続きプラスを保つとともに、カテゴリー別でみても伸びがプラスのものが優勢となっており、改善の動きが続いている。家電製品出荷では2018年5月に、黒物家電と白物家電ともに前月4月に比べ伸びは上昇し、一部を除き概ねプラスに転じるなど、総じて改善の動きがみられる。ただし、新車販売は2018年6月時点では前月5月と同様、軽乗用車で伸びはプラスを保っているが、乗用車(普通+小型)では伸びはマイナスが続いている。耐久財では引き続き、カテゴリー間での好不調の格差が残ってはいるが、新設住宅着工戸数で改善が続くとともに、家電製品出荷でも改善に転じるなど、改善の動きの裾野も徐々に広がりつつあるようだ(図表12、図表13、図表14)。雇用環境では、2018年5月時点で、完全失業率と有効求人倍率ともに改善の動きがみられる(図表8)。収入環境についても、現金給与総額、所定内給与、超過給与額の全てで、2017年8月以降はほぼプラスを保ち続けている(図表9)。消費マインドに関しては2018年6月時点で、消費者態度指数は現状維持で推移するとともに、景気ウォッチャー現状判断DIは再び上昇していることから、消費マインドでは改善寄りの動きがみられる(図表10)。
経済全般の状況に着目すると、輸出は2018年5月現在、伸びはプラスを保つとともに、伸び率の値も上昇を続けている。生産はこれまで緩やかながら上昇を続けてきたが、直近の2018年5月ではわずかながら低下している(図表16、図表18)。マーケットの動向をみると、相場は5月末から6月半ばにかけて円安・株高傾向で推移した後、株価は7月初頭にかけて下落が進んだが、その後は再び、円安・株高の動きが進んでいる(図表21)。長期金利は、6月初頭から7月初頭にかけて概ね緩やかな低下傾向で推移したが、その後はわずかながら上昇の気配をみせている(図表21)。
総合すると、消費は支出全般でみても、カテゴリーレベルでみても、一進一退が続いている。消費を取り巻く状況は、依然として強弱両材料が交錯している。支出全般の推移は改善と悪化を繰り返し、変化の傾向は安定していない。消費の中身についても、これまでは悪化の動きが続いてきたカテゴリー群で改善の動きが徐々に強まりつつある一方で、これまで改善の動きが続いてきたカテゴリー群で悪化に転じる動きも出始めている。それゆえ、消費の方向感は足許で定まっているとは言い難い。ただ、経済全般では景気回復の動きが持続している中で、雇用・収入環境は、堅調な推移を続けている。今夏のボーナスが官民ともに6年連続でプラスとなったことも、消費にとっては追い風の材料である。消費者のマインドも、足許で悪化の動きに歯止めがかかっている。消費を取り巻く環境に、今のところ陰りはみられない。6月末から7月上旬にかけて西日本を襲った「平成30年7月豪雨」の悪影響は、マーケットの動向を見る限りでは今のところ一時的なものに止まっているようだ。ただし、被災地域の建物や生活インフラの被害状況や農業関連での被害額などの情報が徐々に明らかとなる中で、この先、消費者のマインドにそうした被害の悪影響がどう出てくるのかは気がかりなところである。
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