半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net


(2018.09)
月例消費レポート 2018年9月号
消費は引き続き好不調の格差を抱えつつも、耐久財を中心に改善の気配
主任研究員 菅野 守

 JMR消費INDEXの中長期的な近似曲線は2018年7月現在、上昇トレンドにある。ただし、短期的な動きとしては、INDEXの数値は2018年4月時点をピークに50を挟んでの上下動が続いている(図表1)。INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出水準関連指標では、消費支出は2018年5月以降、平均消費傾向は2018年2月以降、預貯金は2017年6月以降、悪化が続いている。販売関連指標では、2018年6月時点で、計10項目中、改善が7項目に対し悪化が3項目となり、改善の側が優勢であった。直近の2018年7月時点では、計10項目中、改善が5項目に対し悪化が5項目となっている。支出水準関連指標では3項目全てが3ヶ月連続で悪化となっているのに対し、販売関連指標では改善の動きと悪化の動きが拮抗している(図表2)。

 公表された2018年7月以降の各種経済指標から、消費を取り巻く状況を整理すると、消費支出は、勤労者世帯では2018年7月に、実質の伸びは3ヶ月連続でマイナスとなったが伸び率の値は前月6月よりも上昇しており、名目の伸びは3ヶ月ぶりにプラスに復帰している(図表5)。二人以上世帯でも、2018年7月時点で、名目と実質ともに伸びは再びプラスに戻している。消費支出全般に関しては、名目と実質ともに改善方向への動きが認められる。他方、10大費目別にみると、2018年7月は名目と実質ともに、マイナスの費目数がプラスの費目数を上回っている。更に、前月6月から7月にかけての推移をみると、名目と実質ともにマイナスの費目数が増えていることから、10大費目別では悪化方向への動きが認められる。以上より、消費支出の動きに関しては、全体と10大費目別とで、引き続き方向感が一致しない状況となっている(図表6)。2018年7月現在までの消費者物価指数の動きをみると、物価上昇のペースは引き続き極めて緩やかなものとなっている(図表7)。販売現場での動きをみると、2018年7月以降、商業販売や外食などの日常生活財では、前月6月に比べ伸び率の値は概ね低下しており、一部の業態では新たにプラスからマイナスへと落ち込んでいる(図表11、図表15)。他方、耐久財では、新車販売は2018年8月時点で、軽乗用車と乗用車(普通+小型)ともに、伸びは2ヶ月連続でプラスとなっており、改善の動きが続いている。家電製品出荷をみると、黒物家電の伸びは2018年5月以降、3ヶ月連続でプラスを保っている。白物家電の伸びも、2018年7月にはプラスとなっている。家電製品出荷でも改善の動きが続いている。新設住宅着工戸数では2018年7月に、全体での伸びはわずかにマイナスとなったが、伸び率の値は上昇している。カテゴリー別でみても伸び率の値は総じて上昇し、概ねプラスに復帰している(図表12、図表13、図表14)。雇用環境に関しては、2018年7月時点で、完全失業率は2ヶ月連続で上昇しているが、有効求人倍率はほぼ一貫して上昇が続いており、両者の間で方向感が定まらない(図表8)。収入環境については、現金給与総額、所定内給与額、超過給与額の全てで、2017年8月以降はほぼプラスを保ち続けており、改善の動きが持続している(図表9)。消費マインドに関しては2018年8月時点で、景気ウォッチャー現状判断DIは前月7月よりも上昇しているが、消費者態度指数は2ヶ月連続で低下しており、消費マインドの方向感は定まっていない(図表10)。

 経済全般の状況に着目すると、輸出は2018年7月現在、伸びはプラスを保ち続けている。だが他方で、生産については、2018年7月に鉱工業生産指数は3ヶ月連続で低下し、悪化の動きが続いている(図表16、図表18)。マーケットの動向をみると、相場は8月下旬以降、再び円安・株高の局面に入っている(図表21)。長期金利は8月に入って以降、極めて緩やかながら上昇傾向を保っており、特に9月半ば頃以降は概ね上昇の動きが持続している(図表22)。

 総合すると、消費は引き続き好不調の格差を抱えてはいるが、もたつきが見られる日常生活財とは対照的に、耐久財では概ね改善の動きが持続している。これまで悪化の動きが続いてきた消費支出全般でも、名目と実質の双方で改善方向への動きが認められることは、前向きに評価できるだろう。ただ、経済全般では、収入環境で改善の動きが持続してはいるものの、生産はピークアウトの動きが鮮明になっているとともに、雇用環境や消費マインドに関しては足許で方向感が定まっていないことは、景気の先行きを占う上でも気がかりな材料だ。9月6日の深夜未明に発生した北海道胆振東部地震は、苫東厚真火力発電所を始めとする産業インフラに被害をもたらし、酪農も含めた農業や観光など北海道の主要産業にも大きなダメージを与えており、現状でもそこからはまだ完全には立ち直り切れていない。北海道での景気低迷の可能性やそれが日本全体の景気に与える影響なども含め、今後の景気や消費の推移を慎重に見極める必要があるだろう。

【図表を含めた完全版を読む】(有料・無料会員向け)
※会員のご登録はこちらをご覧ください。

参照コンテンツ


おすすめ新着記事

新着記事

2024.11.20

24年9月の「旅行業者取扱高」は19年比で75%に

2024.11.19

24年10月の「景気の先行き判断」は2ヶ月連続の50ポイント割れに

2024.11.19

24年10月の「景気の現状判断」は8ヶ月連続で50ポイント割れに

2024.11.18

企業活動分析 アルファベット(グーグル)の23年12月期は、グーグルサービスがけん引し売上過去最高を更新

2024.11.18

企業活動分析 アマゾンの23年12月期はAWSがけん引し営業利益前年比3倍へ

2024.11.15

24年9月の「現金給与総額」は33ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2024.11.14

24年9月の「消費支出」は5ヶ月連続のマイナスに

2024.11.14

24年9月の「家計収入」は5ヶ月ぶりのマイナス

2024.11.13

24年9月は「完全失業率」、「有効求人倍率」とも改善

2024.11.12

企業活動分析 ローソンの23年2月期は、「地域密着×個客・個店主義」徹底し増収増益

2024.11.12

企業活動分析 セブン&アイHDの24年2月期は海外事業の影響で減収も過去最高益を更新

2024.11.11

24年10月の「乗用車販売台数」は2ヶ月連続のプラス

2024.11.08

消費者調査データ No.416 レトルトカレー(2024年11月版) 首位「咖喱屋カレー」、3ヶ月内購入はダブルスコア

2024.11.07

企業活動分析 楽天グループの23年12月期は27期連続増収も、モバイルへの投資で4期連続の赤字

2024.11.07

24年9月の「新設住宅着工戸数」は5ヶ月連続のマイナス

2024.11.06

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 伸長するパン市場  背景にある簡便化志向や節約志向

2024.11.05

企業活動分析 ファンケルの24年3月期算は国内売上がけん引し、3期ぶりの増収増益へ

2024.11.05

企業活動分析 コーセーの23年12月期は、国内好調も中国事業低迷で増収減益に

2024.11.01

成長市場を探せ コロナ禍の落ち込みから再成長する惣菜食市場(2024年)

2024.10.31

月例消費レポート 2024年10月号 消費は緩やかな改善が続いている-政治が消費回復のリスクに

2024.10.31

消費からみた景気指標 24年8月は6項目が改善

週間アクセスランキング

1位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

2位 2017.09.19

MNEXT 眼のつけどころ なぜ日本の若者はインスタに走り、世界の若者はタトゥーを入れるのか?

3位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

4位 2024.02.02

成長市場を探せ コロナ禍乗り越え再び拡大するチョコレート市場(2024年)

5位 2021.05.25

MNEXT 眼のつけどころ プロ・マーケティングの組み立て方 都心高級ホテル競争 「アマン」VS.「リッツ」(1)

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area