半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net


(2019.02)
月例消費レポート 2019年2月号
消費は好不調の格差を抱え、その推移には不安定さがつきまとう
主任研究員 菅野 守

 JMR消費INDEXの中長期的な近似曲線は2018年12月現在、上昇トレンドにある。短期的な動きとしては、INDEXの数値は2018年8月以降50を超える水準で推移し、11月に一旦50を割り込んだが、直近の12月には再び50超へと戻している(図表1)。INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出水準関連指標では、消費支出と平均消費性向はともに3ヶ月連続で悪化となり、預貯金も2017年9月以降一貫して悪化が続いている。販売関連指標では、2018年12月時点で、計10項目中、改善が7項目に対し悪化が3項目となっている。支出水準関連指標では総じて悪化が続いている一方、販売関連指標では前月11月時点での悪化の動きが優勢な状況から、直近の12月時点では改善の動きが優勢な状況に転じており、再び両者の方向感が定まらない状況へと戻っている(図表2)。

 公表された2018年12月以降の各種経済指標から、消費を取り巻く状況を整理すると、消費支出は、二人以上のうちの勤労者世帯では2018年12月現在、名目の伸びはマイナスへと転じ、実質の伸びも3ヶ月連続でマイナスとなっている。名目と実質の双方で伸びがマイナスとなったのは、2018年6月以来6か月ぶりのこととなる(図表5)。二人以上世帯では、消費支出の伸びは2018年12月時点で名目と実質ともにプラスである。10大費目別にみると、2018年12月時点で、名目と実質の双方で、プラスの費目数がマイナスの費目数を上回っている。前月11月から12月にかけての推移をみると、名目と実質ともにプラスの費目数が増えマイナスの費目数が減っている(図表6)。以上より、消費支出に関しては、全体と10大費目別の双方とも、改善の方向への動きが認められる。ただし、2018年12月における二人以上世帯での消費支出のプラスの効果は主に、二人以上世帯の中の1割程度を占める「無職を除く勤労者以外の世帯」での消費支出の高い伸びによるものであることが確認できる。その意味で、足許での消費支出の改善の動きが、限られた一部の層での動きに止まっている可能性が高い点には注意を要する。消費者物価指数の動きをみると、物価の伸びは2018年4月あたりを境に緩やかな上昇傾向にあったが、11月以降は低下が続いている。12月時点では伸びはプラスを保ちつつも、伸び率の値はゼロに近い水準にまで落ち込んでいる(図表7)。販売現場での動きをみると、日常財のうち、商業販売は2018年12月時点で、小売全体の伸びはプラスを保っている。主要な業態別でも、一部を除き伸びはプラスである。外食も2018年12月現在で、一部の業態を除き伸びは概ねプラスとなっている(図表11図表15)。耐久財のうち、新設住宅着工戸数では2018年12月時点で、全体の伸びは再びプラスに戻した。各カテゴリーの伸びも、総じてプラスを保っている。新車販売では2019年1月時点で、乗用車(普通+小型)と軽乗用車の双方で、伸びは再びプラスとなっている。ただし、家電製品出荷では2018年12月時点で、黒物家電と白物家電のいずれでも、伸びの値は総じて低下し、商品間でプラスとマイナスに分かれる状況となっている(図表12図表13図表14)。雇用環境に関しては、2018年12月時点で、完全失業率は3ヶ月ぶりに低下したが、有効求人倍率は横ばいとなっている(図表8)。収入環境に関しては、「家計調査」における勤労者世帯の可処分所得の伸びの推移をみると、2017年6月以降伸びは概ねプラスを保ち続けており、改善の動きが持続している(図表4)。ただし、消費マインドに関しては、2019年1月時点で、消費者態度指数は4ヶ月連続で悪化し、景気ウォッチャー現状判断DIは2ヶ月連続で悪化するなど、双方とも悪化の動きが続いている(図表10)。

 経済全般の状況に着目すると、輸出の伸びは2018年11月以降低下を続け、12月にはマイナスへと落ち込んでいる(図表16)。2019年2月20日に公表された「貿易統計」2019年1月分(速報)では、輸出総額は前年同月比で-8.4%と大幅なマイナスを記録している。生産については、指数は2018年10月に一旦上昇した後、11月以降は低下が続いている(図表18図表19)。マーケットの動向をみると、2019年に入り、為替と株価は円安・株高局面で推移している(図表21)。他方で、長期金利は2018年10月下旬以降、低下傾向で推移している。2019年に入り、1月4日にマイナスに落ち込んだ後プラスに戻したが、その後長期金利は更に低下を続け、2月に入ってからは再びマイナスへと落ち込み、水面下での推移が続いている(図表22)。

 総合すると、消費は全体としては持ち直しの動きがみられるが、その中身をみると、層ごとにまたはカテゴリー間で好不調の格差を抱え、その推移には不安定さがつきまとっている。支出全般では改善の方向への動きが認められ、日常財は概ね好調さを保っているが、耐久財では一部で好不調が分かれている。収入環境では改善の動きが持続しているが、雇用環境では引き続き変化の方向感が定まらず、消費マインドでは悪化の動きが続いている。経済全般の動きとして、輸出と生産ではともに悪化の動きが続いている。マーケットでは年明け以降、為替と株価は強気(ブル)基調で推移する一方、長期金利はマイナスへと落ちこむなど弱気(ベア)基調で推移しており、相場の方向感が分かれている。

 国内と海外ともに景気の先行きに関し好悪両材料が交錯する中で、足許のマーケットの反応も市場間で分かれてしまっている。ただ、内閣府も日銀もともに、日本の景気の現状と先行きに対する判断は今のところ維持したままだ。現時点で、2019年2月から6月にかけて、食品関連を中心に値上げが控えており、2019年10月からは消費増税も予定されている。こうした動きが今後の消費の足を引っ張る材料となるのは、避けがたいところだ。消費を取り巻く環境をみても、雇用環境ではかつてのような盤石ぶりは徐々に影をひそめつつあり、消費マインドの悪化は鮮明になってきている。収入環境は今のところ底堅さを保ってはいるが、経済全般の状況からはピークアウトの気配が近づきつつあり、収入の行方も決して楽観視はできない。今後、消費の先行きに対する不透明感がますます高まっていく可能性を念頭に、消費のダウンサイドリスクへの警戒はより一層必要となってくるだろう。


図表を含めた完全版はこちら
【続きを読む】(有料・無料会員向け)

※会員のご登録はこちらをご覧ください。

参照コンテンツ


おすすめ新着記事

お知らせ

2024.03.25

当社合田執筆の「猛スピードのクルマはいらない」 これからの高齢化社会に必要な“まちづくり”とは何か? そのヒントは欧米になかった!」がメルクマールに掲載されました。

2024.04.22

JMR生活総合研究所 ゴールデンウイーク期間中の営業のお知らせ

新着記事

2024.04.24

24年3月の「チェーンストア売上高」は既存店で13ヶ月連続のプラス、食料品がけん引

2024.04.24

24年3月の「コンビニエンスストア売上高」は4ヶ月連続のプラスに

2024.04.23

24年2月の「旅行業者取扱高」は19年比で78%に

2024.04.23

24年2月の「広告売上高」は、3ヶ月連続のマイナス

2024.04.22

企業活動分析 カルビーの23年3月期は需要堅調もコスト高吸収できず減益に

2024.04.22

企業活動分析 亀田製菓の23年3月期は国内外好調で増収もコスト増で減益着地

2024.04.22

企業活動分析 大正製薬の23年3月期はOTCなど好調で増収増益

2024.04.19

企業活動分析 森永製菓の23年3月期は、「inゼリー」等好調で2年連続最高益更新

2024.04.18

24年2月の「商業動態統計調査」は36ヶ月連続のプラスに

2024.04.17

24年3月の「景気の現状判断」は14ヶ月ぶりに50ポイント割れに

週間アクセスランキング

1位 2024.04.12

成長市場を探せ ビスケット市場、4年連続プラスで初の4,000億超えに(2024年)

2位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

3位 2022.05.10

消費者調査データ エナジードリンク(2022年5月版) 「レッドブル」「モンスター」認知率拡大、上位の牙城揺るがず

4位 2019.09.10

戦略ケース プラットフォームビジネスで急拡大するウーバーイーツ

5位 2021.05.25

MNEXT 眼のつけどころ プロ・マーケティングの組み立て方 都心高級ホテル競争 「アマン」VS.「リッツ」(1)

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area