半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net


(2019.11)
月例消費レポート 2019年11月号
消費の先行きは徐々に厳しくなりつつある
主任研究員 菅野 守

 JMR消費INDEXの中長期的な近似曲線は、下降局面を経て横ばい傾向にある。短期的な動きは2019年1月以降、50を挟んで上下動が続いている(図表1)。INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出水準関連指標と販売関連指標ともに、2019年8月から9月にかけて改善寄りの動きがみられる。9月は、改善となった項目の多くで、伸び率の値の高さが目立っている(図表2)。

 消費を取り巻く状況を整理する。消費支出は、全体でみても10大費目別でみても、9月時点で改善の動きが際立っている(図表5図表6)。

 販売現場での動きは、日常財のうち、商業販売は2019年9月時点で、コンビニエンスストアがわずかにマイナスとなったことを除けば、小売業全体でも主要な業態別でも、伸びは大きく上昇している(図表11)。外食は2019年9月時点で、全体で伸びはプラスを保ち、業態別でも概ねプラスを保っている(図表15)。

 耐久財のうち、家電製品出荷の伸びは2019年9月時点で、薄型テレビ(10型以上)を除き、黒物家電と白物家電ともに大きく上昇し、伸び率の値の高さも際立っている(図表13)。

 新設住宅着工戸数の全体の伸びは2019年9月時点で、マイナスとなっている。分譲住宅・マンションの伸びは大きく上昇しているが、他のカテゴリーの伸びは鈍化傾向にある(図表14)。

 新車販売は、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、2019年9月時点で伸びは上昇したが、10月時点では大きく低下している。その低下幅は、前回の消費税増税開始時の、2014年4月時点を上回る規模である(図表12)。

 雇用環境に関して、有効求人倍率は2019年5月以降悪化が続き、完全失業率も2019年9月時点で悪化している(図表8)。

 収入環境に関して、現金給与の伸びは2019年9月時点で、現金給与総額、所定内給与額、超過給与のいずれも、概ねプラスを保っている(図表9)。

 消費マインドに関して、消費者態度指数は2019年10月時点で一旦下げ止まった。だが、景気ウォッチャー現状判断DIは大きく低下しており、消費マインドの悪化基調は続いている(図表10)。

 経済全般の状況として、輸出の伸びは2018年12月以降、マイナスが続いている(図表16)。生産について、鉱工業全体での指数は2019年6月に大きく低下した後、一進一退が続いている(図表18)。

 マーケットの動向をみると、2019年10月以降、11月上旬にかけて円安・株高で推移してきたが、その後の相場の方向感はまだ定まっていない(図表21)。長期金利は2019年8月末頃を底に、11月上旬にかけて上昇傾向で推移してきた。しかし、その後は再び低下の動きがみられる(図表22)。

 総合すると、消費は、支出全般、日常財、耐久財のいずれでも、足許で改善の動きが際立っている。ただ、こうした動きは、消費税増税前の駆け込み需要によるものとみた方がよい。

 他方で、消費マインドの悪化基調は続くとともに、雇用環境では悪化の動きが目立ってきている。輸出では悪化の動きが続き、生産も回復の動きは鈍い。円安・株高・長期金利上昇の動きも一旦落ち着き、その後の相場の方向感は定まらない。消費の先行きは、徐々に厳しくなりつつある。

 一部のエコノミストやマーケット関係者の間では、今回の消費税増税に伴う駆け込み需要と反動減は前回2014年4月時点に比べ小さいものになる、との見通しが示されてはいた。だが、直近の公表数字を見ると、一部のカテゴリーや業態では、前回の消費税増税時並み、またはそれを上回る規模での、駆け込み需要や反動減の動きもみられている。

 2019年11月14日に公表された2019年7-9月期のGDP一次速報では、実質GDP成長率は年率換算で+0.2%、民間最終消費支出の寄与度は年率換算で+0.8%となっており、前回の消費税増税前(2014年1-3月期)に比べれば明らかに小さい。ただ、このことが、増税後の反動減が軽微で済むことの証左となるのか、あるいは日本経済自体の弱さを示唆するものとなるのかは、次の2019年10-12月期の経済諸指標の動き次第で明らかとなってくるだろう。


図表を含めた完全版はこちら
【続きを読む】(有料・無料会員向け)

※会員のご登録はこちらをご覧ください。

参照コンテンツ


おすすめ新着記事



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツプレミアム会員サービス戦略ケースの教科書Online


新着記事

2024.11.20

24年9月の「旅行業者取扱高」は19年比で75%に

2024.11.19

24年10月の「景気の先行き判断」は2ヶ月連続の50ポイント割れに

2024.11.19

24年10月の「景気の現状判断」は8ヶ月連続で50ポイント割れに

2024.11.18

企業活動分析 アルファベット(グーグル)の23年12月期は、グーグルサービスがけん引し売上過去最高を更新

2024.11.18

企業活動分析 アマゾンの23年12月期はAWSがけん引し営業利益前年比3倍へ

2024.11.15

24年9月の「現金給与総額」は33ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2024.11.14

24年9月の「消費支出」は5ヶ月連続のマイナスに

2024.11.14

24年9月の「家計収入」は5ヶ月ぶりのマイナス

2024.11.13

24年9月は「完全失業率」、「有効求人倍率」とも改善

2024.11.12

企業活動分析 ローソンの23年2月期は、「地域密着×個客・個店主義」徹底し増収増益

2024.11.12

企業活動分析 セブン&アイHDの24年2月期は海外事業の影響で減収も過去最高益を更新

2024.11.11

24年10月の「乗用車販売台数」は2ヶ月連続のプラス

2024.11.08

消費者調査データ No.416 レトルトカレー(2024年11月版) 首位「咖喱屋カレー」、3ヶ月内購入はダブルスコア

2024.11.07

企業活動分析 楽天グループの23年12月期は27期連続増収も、モバイルへの投資で4期連続の赤字

2024.11.07

24年9月の「新設住宅着工戸数」は5ヶ月連続のマイナス

2024.11.06

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 伸長するパン市場  背景にある簡便化志向や節約志向

2024.11.05

企業活動分析 ファンケルの24年3月期算は国内売上がけん引し、3期ぶりの増収増益へ

2024.11.05

企業活動分析 コーセーの23年12月期は、国内好調も中国事業低迷で増収減益に

2024.11.01

成長市場を探せ コロナ禍の落ち込みから再成長する惣菜食市場(2024年)

2024.10.31

月例消費レポート 2024年10月号 消費は緩やかな改善が続いている-政治が消費回復のリスクに

2024.10.31

消費からみた景気指標 24年8月は6項目が改善

週間アクセスランキング

1位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

2位 2017.09.19

MNEXT 眼のつけどころ なぜ日本の若者はインスタに走り、世界の若者はタトゥーを入れるのか?

3位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

4位 2024.02.02

成長市場を探せ コロナ禍乗り越え再び拡大するチョコレート市場(2024年)

5位 2021.05.25

MNEXT 眼のつけどころ プロ・マーケティングの組み立て方 都心高級ホテル競争 「アマン」VS.「リッツ」(1)

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area