JMR消費INDEXの中長期的な近似曲線は、下降局面を経て横ばい傾向にある。短期的な動きは2019年1月以降、50を挟んで上下動が続いている(図表1)。INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出水準関連指標と販売関連指標ともに、2019年8月から9月にかけて改善寄りの動きがみられる。9月は、改善となった項目の多くで、伸び率の値の高さが目立っている(図表2)。
消費を取り巻く状況を整理する。消費支出は、全体でみても10大費目別でみても、9月時点で改善の動きが際立っている(図表5、図表6)。
販売現場での動きは、日常財のうち、商業販売は2019年9月時点で、コンビニエンスストアがわずかにマイナスとなったことを除けば、小売業全体でも主要な業態別でも、伸びは大きく上昇している(図表11)。外食は2019年9月時点で、全体で伸びはプラスを保ち、業態別でも概ねプラスを保っている(図表15)。
耐久財のうち、家電製品出荷の伸びは2019年9月時点で、薄型テレビ(10型以上)を除き、黒物家電と白物家電ともに大きく上昇し、伸び率の値の高さも際立っている(図表13)。
新設住宅着工戸数の全体の伸びは2019年9月時点で、マイナスとなっている。分譲住宅・マンションの伸びは大きく上昇しているが、他のカテゴリーの伸びは鈍化傾向にある(図表14)。
新車販売は、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、2019年9月時点で伸びは上昇したが、10月時点では大きく低下している。その低下幅は、前回の消費税増税開始時の、2014年4月時点を上回る規模である(図表12)。
雇用環境に関して、有効求人倍率は2019年5月以降悪化が続き、完全失業率も2019年9月時点で悪化している(図表8)。
収入環境に関して、現金給与の伸びは2019年9月時点で、現金給与総額、所定内給与額、超過給与のいずれも、概ねプラスを保っている(図表9)。
消費マインドに関して、消費者態度指数は2019年10月時点で一旦下げ止まった。だが、景気ウォッチャー現状判断DIは大きく低下しており、消費マインドの悪化基調は続いている(図表10)。
経済全般の状況として、輸出の伸びは2018年12月以降、マイナスが続いている(図表16)。生産について、鉱工業全体での指数は2019年6月に大きく低下した後、一進一退が続いている(図表18)。
マーケットの動向をみると、2019年10月以降、11月上旬にかけて円安・株高で推移してきたが、その後の相場の方向感はまだ定まっていない(図表21)。長期金利は2019年8月末頃を底に、11月上旬にかけて上昇傾向で推移してきた。しかし、その後は再び低下の動きがみられる(図表22)。
総合すると、消費は、支出全般、日常財、耐久財のいずれでも、足許で改善の動きが際立っている。ただ、こうした動きは、消費税増税前の駆け込み需要によるものとみた方がよい。
他方で、消費マインドの悪化基調は続くとともに、雇用環境では悪化の動きが目立ってきている。輸出では悪化の動きが続き、生産も回復の動きは鈍い。円安・株高・長期金利上昇の動きも一旦落ち着き、その後の相場の方向感は定まらない。消費の先行きは、徐々に厳しくなりつつある。
一部のエコノミストやマーケット関係者の間では、今回の消費税増税に伴う駆け込み需要と反動減は前回2014年4月時点に比べ小さいものになる、との見通しが示されてはいた。だが、直近の公表数字を見ると、一部のカテゴリーや業態では、前回の消費税増税時並み、またはそれを上回る規模での、駆け込み需要や反動減の動きもみられている。
2019年11月14日に公表された2019年7-9月期のGDP一次速報では、実質GDP成長率は年率換算で+0.2%、民間最終消費支出の寄与度は年率換算で+0.8%となっており、前回の消費税増税前(2014年1-3月期)に比べれば明らかに小さい。ただ、このことが、増税後の反動減が軽微で済むことの証左となるのか、あるいは日本経済自体の弱さを示唆するものとなるのかは、次の2019年10-12月期の経済諸指標の動き次第で明らかとなってくるだろう。
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