半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

公開日:2020年01月27日


月例消費レポート 2020年1月号
消費は反動減からの戻りは鈍く、低調な動きが続く
主任研究員 菅野 守

 JMR消費INDEXの中長期的な近似曲線は、2013年10月辺りをピークに下降局面に入っている。特に2018年9月頃以降は、低下の勢いに拍車がかかっている。2019年11月の数値は、前月10月からわずかに上昇しているが、50のラインを大きく下回ったままだ(図表1)。

 INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、2019年11月は、外食関連の2項目以外のすべての項目で、悪化となっている(図表2)。

 消費を取り巻く状況を整理する。消費支出の伸びは、名目では2019年11月にわずかながらプラスに戻しており、実質ではわずかにマイナスとなっている(図表5)。10大費目別では、2019年11月は、名目と実質ともに5費目でマイナスとなっており、マイナスの側が優勢である(図表6)。

 販売現場での動きをみてみる。日常財のうち、小売業全体の売上の伸びは019年11月、引き続きマイナスである。主要な業態別では、コンビニエンスストアはプラスを保ち、スーパーはわずかながらプラスに戻している。他方、百貨店はマイナスが続いている(図表11)。

 外食全体の売上の伸びは2019年11月にプラスに戻している。主要な業態別では、ファーストフードはプラスを保ち、ファミリーレストランはプラスに戻している。他方、百貨店は引き続きマイナスである(図表15)。

 耐久財のうち、2019年11月の家電製品出荷の伸びは、黒物家電と白物家電ともにプラスとなっている(図表13)。

 新設住宅着工戸数の全体の伸びは、引き続きマイナスとなっている。分譲住宅・一戸建ての伸びは、わずかながらプラスを保った。だが、分譲住宅・マンションの伸びは、マイナスへと大きく落ち込んだ。持家の伸びは、マイナスが続いている(図表14)。

 新車販売の伸びは、2019年10月以降、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、マイナスが続いている(図表12)。

 雇用環境について、2019年11月時点の完全失業率は前月10月よりも低下し、有効求人倍率は引き続き横ばいとなっている(図表8)。

 収入環境は、2019年11月時点で、現金給与総額と所定内給与額の伸びはほぼ横ばいだが、超過給与の伸びはマイナスが続いている(図表9)。

 2019年12月時点の消費マインドは、消費者態度指数と景気ウォッチャー現状判断DIともに、わずかながらも上昇が続いている。しかし、これまでの落ち込みからは、まだ回復しきれていない(図表10)。

 経済全般の状況として、輸出の伸びは2018年12月以降、マイナスが続いている(図表16)。

 生産について、鉱工業全体の指数は、2019年9月をピークに低下が続いている(図表18)。

 マーケットの動向は、2019年12月半ばから12月末頃にかけての円高・株安の局面から、2020年の年明けとともに円安・株高の局面へと転じたが、2020年1月下旬以降は再び円高・株安の局面へと戻りつつある(図表21)。

 長期金利は2019年12月初旬にプラスに転じて以降、ゼロ%を挟んでの上下動が続いてきた。2020年1月半ば頃より、金利は再び低下傾向へと転じ、2020年1月下旬以降は再びマイナスへと落ち込んでいる(図表22)。

 総合すると、消費は、2019年10月の消費税増税に伴う反動減から、2019年11月は若干回復の動きがみられる。ただし、消費支出全般での戻りは、小幅なものに止まっている。分野間での消費の格差は顕著であり、マイナスとなっている分野の落ち込みが特に目立つ。

 雇用環境や消費マインドでは、緩やかながら改善の動きがみられる。他方で、収入環境は総じて横ばい傾向にあり、一部では悪化の動きが続いている。輸出と生産も、ともに悪化の動きが続いている。マーケットは、2020年に入ってから回復したが、足許では再び悪化の動きへと転じつつある。

 消費税増税に伴う反動減からの戻りは鈍く、消費を取り巻く状況も冴えない中で、消費は低調な動きが当分続くと考えられる。

 2020年度の日本経済の見通しについて、政府と日銀は強気のスタンスを示している。他方、民間のシンクタンク各機関では、弱気のスタンスが多数派である。具体的には、2020年夏の東京五輪を挟んで、見通しの明暗が分かれる。雇用・収入環境の悪化リスクへの懸念も強いようだ。

 米中貿易摩擦は一旦落ち着きを見せつつあるが、中国発の新型コロナウィルスの感染が拡がりつつあるなど、海外経済を取り巻く状況も波乱要因が尽きない。

 国内経済はこの先、東京五輪を挟んでの需要の盛り上がりと反動減に、再び直面することとなるだろう。

 消費税増税による消費への下押し圧力に持ち堪えている日本経済にとって、このもう一段の経済インパクトがどちらに転ぶか、注意が必要だ。


図表を含めた完全版はこちら
【続きを読む】(有料・無料会員向け)

※会員のご登録はこちらをご覧ください。

参照コンテンツ


おすすめ新着記事



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツプレミアム会員サービス戦略ケースの教科書Online


新着記事

2024.11.20

24年9月の「旅行業者取扱高」は19年比で75%に

2024.11.19

24年10月の「景気の先行き判断」は2ヶ月連続の50ポイント割れに

2024.11.19

24年10月の「景気の現状判断」は8ヶ月連続で50ポイント割れに

2024.11.18

企業活動分析 アルファベット(グーグル)の23年12月期は、グーグルサービスがけん引し売上過去最高を更新

2024.11.18

企業活動分析 アマゾンの23年12月期はAWSがけん引し営業利益前年比3倍へ

2024.11.15

24年9月の「現金給与総額」は33ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2024.11.14

24年9月の「消費支出」は5ヶ月連続のマイナスに

2024.11.14

24年9月の「家計収入」は5ヶ月ぶりのマイナス

2024.11.13

24年9月は「完全失業率」、「有効求人倍率」とも改善

2024.11.12

企業活動分析 ローソンの23年2月期は、「地域密着×個客・個店主義」徹底し増収増益

2024.11.12

企業活動分析 セブン&アイHDの24年2月期は海外事業の影響で減収も過去最高益を更新

2024.11.11

24年10月の「乗用車販売台数」は2ヶ月連続のプラス

2024.11.08

消費者調査データ No.416 レトルトカレー(2024年11月版) 首位「咖喱屋カレー」、3ヶ月内購入はダブルスコア

2024.11.07

企業活動分析 楽天グループの23年12月期は27期連続増収も、モバイルへの投資で4期連続の赤字

2024.11.07

24年9月の「新設住宅着工戸数」は5ヶ月連続のマイナス

2024.11.06

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 伸長するパン市場  背景にある簡便化志向や節約志向

2024.11.05

企業活動分析 ファンケルの24年3月期算は国内売上がけん引し、3期ぶりの増収増益へ

2024.11.05

企業活動分析 コーセーの23年12月期は、国内好調も中国事業低迷で増収減益に

2024.11.01

成長市場を探せ コロナ禍の落ち込みから再成長する惣菜食市場(2024年)

2024.10.31

月例消費レポート 2024年10月号 消費は緩やかな改善が続いている-政治が消費回復のリスクに

2024.10.31

消費からみた景気指標 24年8月は6項目が改善

週間アクセスランキング

1位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

2位 2017.09.19

MNEXT 眼のつけどころ なぜ日本の若者はインスタに走り、世界の若者はタトゥーを入れるのか?

3位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

4位 2024.02.02

成長市場を探せ コロナ禍乗り越え再び拡大するチョコレート市場(2024年)

5位 2021.05.25

MNEXT 眼のつけどころ プロ・マーケティングの組み立て方 都心高級ホテル競争 「アマン」VS.「リッツ」(1)

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area