JMR消費INDEXの中長期的な近似曲線は、2013年10月辺りをピークに下降局面に入っている。特に2018年9月頃以降は、低下の勢いに拍車がかかっている。2019年11月の数値は、前月10月からわずかに上昇しているが、50のラインを大きく下回ったままだ(図表1)。
INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、2019年11月は、外食関連の2項目以外のすべての項目で、悪化となっている(図表2)。
消費を取り巻く状況を整理する。消費支出の伸びは、名目では2019年11月にわずかながらプラスに戻しており、実質ではわずかにマイナスとなっている(図表5)。10大費目別では、2019年11月は、名目と実質ともに5費目でマイナスとなっており、マイナスの側が優勢である(図表6)。
販売現場での動きをみてみる。日常財のうち、小売業全体の売上の伸びは019年11月、引き続きマイナスである。主要な業態別では、コンビニエンスストアはプラスを保ち、スーパーはわずかながらプラスに戻している。他方、百貨店はマイナスが続いている(図表11)。
外食全体の売上の伸びは2019年11月にプラスに戻している。主要な業態別では、ファーストフードはプラスを保ち、ファミリーレストランはプラスに戻している。他方、百貨店は引き続きマイナスである(図表15)。
耐久財のうち、2019年11月の家電製品出荷の伸びは、黒物家電と白物家電ともにプラスとなっている(図表13)。
新設住宅着工戸数の全体の伸びは、引き続きマイナスとなっている。分譲住宅・一戸建ての伸びは、わずかながらプラスを保った。だが、分譲住宅・マンションの伸びは、マイナスへと大きく落ち込んだ。持家の伸びは、マイナスが続いている(図表14)。
新車販売の伸びは、2019年10月以降、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、マイナスが続いている(図表12)。
雇用環境について、2019年11月時点の完全失業率は前月10月よりも低下し、有効求人倍率は引き続き横ばいとなっている(図表8)。
収入環境は、2019年11月時点で、現金給与総額と所定内給与額の伸びはほぼ横ばいだが、超過給与の伸びはマイナスが続いている(図表9)。
2019年12月時点の消費マインドは、消費者態度指数と景気ウォッチャー現状判断DIともに、わずかながらも上昇が続いている。しかし、これまでの落ち込みからは、まだ回復しきれていない(図表10)。
経済全般の状況として、輸出の伸びは2018年12月以降、マイナスが続いている(図表16)。
生産について、鉱工業全体の指数は、2019年9月をピークに低下が続いている(図表18)。
マーケットの動向は、2019年12月半ばから12月末頃にかけての円高・株安の局面から、2020年の年明けとともに円安・株高の局面へと転じたが、2020年1月下旬以降は再び円高・株安の局面へと戻りつつある(図表21)。
長期金利は2019年12月初旬にプラスに転じて以降、ゼロ%を挟んでの上下動が続いてきた。2020年1月半ば頃より、金利は再び低下傾向へと転じ、2020年1月下旬以降は再びマイナスへと落ち込んでいる(図表22)。
総合すると、消費は、2019年10月の消費税増税に伴う反動減から、2019年11月は若干回復の動きがみられる。ただし、消費支出全般での戻りは、小幅なものに止まっている。分野間での消費の格差は顕著であり、マイナスとなっている分野の落ち込みが特に目立つ。
雇用環境や消費マインドでは、緩やかながら改善の動きがみられる。他方で、収入環境は総じて横ばい傾向にあり、一部では悪化の動きが続いている。輸出と生産も、ともに悪化の動きが続いている。マーケットは、2020年に入ってから回復したが、足許では再び悪化の動きへと転じつつある。
消費税増税に伴う反動減からの戻りは鈍く、消費を取り巻く状況も冴えない中で、消費は低調な動きが当分続くと考えられる。
2020年度の日本経済の見通しについて、政府と日銀は強気のスタンスを示している。他方、民間のシンクタンク各機関では、弱気のスタンスが多数派である。具体的には、2020年夏の東京五輪を挟んで、見通しの明暗が分かれる。雇用・収入環境の悪化リスクへの懸念も強いようだ。
米中貿易摩擦は一旦落ち着きを見せつつあるが、中国発の新型コロナウィルスの感染が拡がりつつあるなど、海外経済を取り巻く状況も波乱要因が尽きない。
国内経済はこの先、東京五輪を挟んでの需要の盛り上がりと反動減に、再び直面することとなるだろう。
消費税増税による消費への下押し圧力に持ち堪えている日本経済にとって、このもう一段の経済インパクトがどちらに転ぶか、注意が必要だ。
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