JMR消費INDEXの中長期的な近似曲線は、2013年10月辺りをピークに下降局面に入っている。特に2018年9月頃以降は、低下の勢いに拍車がかかっている。2019年12月の数値は、2019年10月と同様、過去最低の水準となっている(図表1)。
INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、2019年11月は、ファーストフード売上以外のすべての項目で、悪化となっている(図表2)。
消費を取り巻く状況を整理する。消費支出の伸びは、2019年12月に、名目と実質ともに再びマイナスとなった(図表5)。10大費目別にみると、2019年12月に、名目では6費目で、実質では8費目でマイナスとなった。マイナスの側が優勢な状況は、前月11月よりも更に強まっている(図表6)。
販売現場での動きをみてみる。日常財のうち、小売業全体の売上の伸びは2019年10月以降、マイナスが続いている。主要な業態別では、コンビニエンスストアはかろうじてプラスを保ち、百貨店とスーパーはマイナスとなっている(図表11)。
外食全体の売上の伸びは2019年12月にプラスとなったが、伸び率の値は低下している。主要な業態全てで伸び率の値は低下しており、ファーストフードはプラスを保ったものの、ファミリーレストランとパブ・居酒屋はマイナスとなっている(図表15)。
耐久財のうち、2019年12月の家電製品出荷の伸びは、黒物家電でプラスを保ったが、白物家電ではマイナスへと落ち込んでいる(図表13)。
新設住宅着工戸数の全体の伸びは、2019年7月以降マイナスが続いている。カテゴリー別では、持家、分譲住宅・マンション、分譲住宅・一戸建ての全てでマイナスとなっている(図表14)。
新車販売の伸びは、2019年10月以降、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、マイナスが続いている(図表12)。
雇用環境について、2019年12月時点では、完全失業率と有効求人倍率ともに、横ばいとなっている(図表8)。
収入環境は、2019年12月時点で、所定内給与額の伸びはわずかにプラスとなったが、現金給与総額と超過給与の伸びはマイナスとなっている(図表9)。
2020年1月時点の消費マインドは、消費者態度指数と景気ウォッチャー現状判断DIともに、ほぼ横ばいとなっている(図表10)。
経済全般の状況として、輸出の伸びは2018年12月以降、マイナスが続いている(図表16)。
生産について、鉱工業全体の指数は、2019年11月を底に、2019年12月にはわずかに上昇したが、その戻りは鈍い(図表18)。
マーケットの動向は、2020年1月下旬から2020円2月初頭にかけての円高・株安の局面から、2月上旬には円安・株高の局面に転じたが、2月半ば以降は乱高下が続いている(図表21)。
長期金利は2020年1月下旬以降、マイナスへ落ち込んだままとなっている(図表22)。
総合すると、消費は2019年10月を境に、消費税増税に伴う反動減による落ち込みから回復できないまま、低迷を続ける状況にある。耐久財の落ち込みは更に続き、日常生活財にも陰りが見えてきている。
雇用環境と消費マインドでは、改善の動きに一服感がみられた。現金給与総額がマイナスに転じるなど、収入環境は更に悪化している。マーケットでは、長期金利は再びマイナスへと落ち込み、株価と為替は足許で方向感が定まらなくなっている。
2020年2月17日に内閣府より公表された四半期GDP速報(1次速報)によると、2019年10-12月期の実質GDP成長率は、年率換算で前期比-6.3%である。これは、東日本大震災が起きた2011年1-3月期(-5.5%)を超え、税率8%への消費税増税が行われた2014年4-6月期(-7.4%)に次ぐ、大幅な落ち込みとなった。
新型コロナウィルスの世界的な感染拡大の悪影響は、中国国内でのサプライチェーンの混乱による中国からの輸入の途絶や、中国人来日客のインバウンド需要の消滅だけに止まらない。
日本国内での市中感染の拡大による、イベント等への外出を自粛する動きの広がりなどで、日本の景気や消費への悪影響が顕在化しつつある。
消費者のマインドも悪化に転じ、その動きも加速していくおそれもある。
日本国内での感染拡大に関して、短期収束の可能性は難しいとの見方が優勢となりつつある。
感染の規模と拡大のペースを巧く抑え込めない場合には、2020年夏の東京五輪の開催を危ぶむ声すら一部では出始めている。
終息の見通しが立たない限り、消費者のマインド転換、そして景気や消費の反転上昇のシナリオは描きづらい。
消費の先行きは、更に悪化していく公算が高そうだ。
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