半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

公開日:2020年07月01日

月例消費レポート 2020年6月号
消費の不振は続いている
主任研究員 菅野 守

※図表の閲覧には会員ログインが必要です。

 JMR消費INDEXは、低下の勢いに拍車がかかった。直近では、過去最低水準近傍での低迷が続いている(図表1)。

 預貯金と食料品売上の2項目以外のINDEXを構成する個々の変数の動きは、2020年3月以降、すべての項目で悪化となっている。2020年4月時点では、旅行業者取扱額、百貨店売上高、ファミリーレストラン売上のマイナス幅は、過去に類例のないものである(図表2)。

 消費を取り巻く状況を整理する。消費支出の伸びは2020年4月時点で、名目と実質ともに、マイナス幅が前月3月よりも一層広がっている(図表4)。

 10大費目別では、2020年4月は前月3月と同様、名目と実質の双方で、マイナスの費目数がプラスの費目数を大きく上回り、マイナスの側が優勢の状況となっている(図表5)。

 2020年4月時点での消費性向は70.9%であり、2019年4月の水準(78.3%)よりも低下している(図表2)。

 その結果、黒字の額は124,776円となり、2019年4月時点よりも31,238円増加している。黒字の増加分は主に、クレジット購入借入金返済の純増(+17,697円)と、預貯金の純増(+10,926円)とに振り向けられている。

 販売現場での動きでは、日常財のうち小売業全体の売上の伸びが、2020年4月もマイナスとなり、伸び率の値は前月3月よりも低下した。

 主要な業態別では、スーパーは引き続きプラスを保っている。他方、百貨店とコンビニエンスストアはマイナスが続き、特に百貨店の落ち込みは深刻である(図表9)。

 外食全体の売上の伸びは2020年4月も、前月3月と同様、大幅な落ち込みが続いた。業態別でも、ファーストフード、ファミリーレストラン、パブ・居酒屋の全てで、前月3月を更に上回る、過去に類例のない規模の大幅なマイナスを記録した(図表13)。

 2020年6月25日に日本フードサービス協会(JF)から公表された、2020年5月時点での売上の伸びは、全体では67.8%、業態別ではファーストフードで90.7%、ファミリーレストランで50.6%、パブ・居酒屋で4.1%となった。ファーストフードとファミリーレストランでは伸び率の値は若干回復したが、歴史的低水準が続いている。パブ・居酒屋では伸び率の値は更に落ち込み、一層深刻な状況にある。

 耐久財のうち、新設住宅着工戸数の全体の伸びはマイナスが続いている。カテゴリー別では、分譲住宅・マンションは再びプラスに戻したが、持家と分譲住宅・一戸建てではマイナスが続いており、伸び率の値も更に落ち込んでいる(図表12)。

 家電製品出荷の伸びは、2020年4月時点で、黒物家電はカテゴリー間で好不調分かれており、白物家電はマイナスが続いていた(図表11)。

 2020年6月19日に電子情報技術産業協会(JEITA)から公表された、2020年5月時点での黒物家電の伸びは、プラスとなっている。他方、2020年6月18日に日本電機工業会(JEMA)から公表された、2020年5月時点での白物家電の伸びは、4月に続きマイナスとなっている。黒物家電と白物家電との間で、好不調が分かれる状況が依然続いている。

 新車販売の伸びも、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、マイナスが続いている。2020年5月には、伸び率の値は前月4月よりも更に低下しており、特に軽乗用車では2008年1月以降で過去最低の水準となっている(図表10)。

 雇用環境は2020年に入り、完全失業率と有効求人倍率ともに、悪化の動きが続いている(図表6)。

 収入環境について、2020年4月時点では、所定内給与額の伸びは横ばいとなり、現金給与総額と超過給与の伸びはマイナスとなった。伸び率の値は、現金給与総額、所定内給与額、超過給与のいずれも、2020年1月をピークに低下が続いている(図表7)。

 消費マインドについて、2020年5月時点では、消費者態度指数と景気ウォッチャー現状判断DIともに、前月4月よりも若干回復している。だが、依然として、歴史的低水準にある(図表8)。

 総合すると、消費は2020年4月以降、落ち込みに拍車がかかり、消費の不振は続いている。

 日常財と耐久財のいずれにおいても、消費は総じてマイナスが続いている。スーパーの販売実績や黒物家電の出荷などで伸びはプラスだが、そうした動きはごく一部にすぎない。

 その結果として溜まった家計の黒字は、貯蓄の純増と借金返済とに向かっている格好だ。

 雇用環境と収入環境では、悪化の動きがさらに進んでいる。消費マインドは足許で若干改善しているが、歴史的低水準に沈んだままである。消費を取り巻く環境条件は、むしろ厳しくなりつつあるようだ。

 2020年5月分の各種統計指標は、4月時点よりは若干ましなものとなる可能性は高いが、回復の動きは依然鈍く、V字回復というには程遠いと予想される。

 6月19日に、東京都、神奈川県、千葉県で休業要請が全面解除されるとともに、都道府県境をまたぐ移動の制限も全面解除となった。

 プロ野球は6月19日に開幕した。Jリーグも6月27日にJ2が再開、J1も7月4日より再開の予定である。各地のレジャー施設や旅館・ホテルなども、次々と営業を再開した。東京ディズニーランドと東京ディズニーシーも、7月1日からの営業再開を発表している。

 だが、コロナ感染防止対策を行いながらの営業では、顧客数や入場者数、宿泊者数など最大限達成可能な稼働率は、コロナ前の水準を下回らざるを得ない。

 過去の不況の局面とは異なり、過去最大規模で経済対策を施しても、全力での活動再開に足かせがかかっているため、即効的な急回復は到底望めない。

 こうした事情を踏まえると、今後も暫し低迷は続き、回復の足取りも重いものとなるだろう。


図表を含めた完全版を読む

完全版を読むには無料の会員登録が必要です。

参照コンテンツ


おすすめ新着記事



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツプレミアム会員サービス戦略ケースの教科書Online


お知らせ

2024.12.19

JMR生活総合研究所 年末年始の営業のお知らせ

新着記事

2024.12.20

消費者調査データ No.418 サブスクリプションサービス 広く利用される「プライムビデオ」、音楽サブスクには固定ファンも

2024.12.19

24年10月の「商業動態統計調査」は7ヶ月連続のプラス

2024.12.19

24年10月の「広告売上高」は、6ヶ月連続のプラス

2024.12.19

24年10月の「旅行業者取扱高」は19年比で83%に

2024.12.18

提言論文 「価値スタイル」で選ばれるブランド・チャネル・メディア

2024.12.18

24年11月の「景気の先行き判断」は3ヶ月連続の50ポイント割れに

2024.12.18

24年11月の「景気の現状判断」は9ヶ月連続で50ポイント割れに

2024.12.17

24年10月の「現金給与総額」は34ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2024.12.16

企業活動分析 SGHDの24年3月期はロジスティクス事業不振で2期連続の減収減益

2024.12.16

企業活動分析 ヤマトHDの24年3月期はコスト削減追いつかず3期連続減益

2024.12.13

成長市場を探せ コロナ禍の壊滅的状況からV字回復、売上過去最高のテーマパーク(2024年)

2024.12.12

24年10月の「家計収入」は再びプラスに

2024.12.12

24年10月の「消費支出」は6ヶ月連続のマイナスに

2024.12.11

提言論文 価値スタイルによる生活の再編と収斂

2024.12.10

24年10月は「有効求人倍率」は改善、「完全失業率」は悪化

2024.12.09

企業活動分析 江崎グリコ株式会社 23年12月期は国内外での売上増などで増収増益達成

2024.12.09

企業活動分析 日清食品ホールディングス株式会社 24年3月期は価格改定浸透で増収、過去最高益達成

 

2024.12.06

消費者調査 2024年 印象に残ったもの 「大谷選手」「50-50」、選挙も五輪も超えてホームラン!

2024.12.05

24年11月の「乗用車販売台数」は3ヶ月ぶりのマイナス

週間アクセスランキング

1位 2024.05.10

消費者調査データ エナジードリンク(2024年5月版)首位は「モンエナ」、2位争いは三つ巴、再購入意向上位にPBがランクイン

2位 2024.04.05

消費者調査データ ノンアルコール飲料(2024年4月版) 首位は「ドライゼロ」、追う「オールフリー」「のんある気分」

3位 2024.12.04

提言論文 本格消費回復への転換-価値集団の影響力拡大

4位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

5位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area