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公開日:2021年02月22日

月例消費レポート 2021年2月号
消費は再び、足踏み状態となっている
主任研究員 菅野 守

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消費に関する各種経済指標は、一時改善が続いたものの、再び悪化に転じている。雇用環境では改善の動きが一旦止まり、収入環境と消費マインドでは悪化の動きが続くなど、消費を取り巻く状況は冴えない。ただ、コロナ感染収束に向けた動きは着実に進んでおり、「コロナ後」の消費回復のチャンスを先取りする手立てを講じていくべき時期に来ている。

 JMR消費INDEXの水準は、再び50を割り込んでいる(図表1)。

 INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、消費支出と平均消費性向は2020年10月以降2か月連続で改善が続いた後、12月には再び悪化に転じている。預貯金は2ヶ月連続で伸びがマイナスとなっており、消費にとっては改善の方向に寄与している。販売関連10指標(チェーンストア売上高除く)のうち、改善となったものは、2020年10月時点では6指標であったが、11月は5指標、12月には4指標へと減少しており、悪化が続いている(図表2)。

 消費支出の伸びは、12月は名目と実質ともにマイナスに転じている。2020年10月以降、名目と実質ともに2ヶ月連続でプラスが続いた(図表4)。

 10大費目別では、2020年12月の名目増減率は10費目中6費目がマイナスであったが、実質増減率は10費目中5費目がプラスであった。前月11月は、名目と実質ともにプラスの費目が10費目中7費目であり、プラスの側が圧倒的優勢だった。12月は再び、マイナスの側が優勢となった(図表5)。

 販売現場では、日常財のうち、小売業全体の売上は2020年10月以降、2ヶ月連続でプラスが続いていたが、12月には再びマイナスに転じている。スーパーは10月以降プラスを保っている。一方で、コンビニエンスストアと百貨店はマイナスが続いている。伸び率は、小売業全体とスーパーで、10月をピークに低下が続いている(図表9)。

 外食の売上は、全体ではマイナスが続いている。ファーストフードは12月には再びマイナスに転じている。ファミリーレストランとパブ・居酒屋はマイナスが続いている。伸び率は、全体でも業態別でも、10月をピークに低下が続いている(図表15)。

 耐久財のうち、新設住宅着工戸数は、全体ではマイナスが続いている。持家では2020年11月以降プラスが続いている一方、分譲住宅・一戸建てではマイナスが続いている(図表14)。

 家電製品出荷は、概ねプラスを保っている。AV機器では、4K対応薄型テレビとスピーカシステムはプラスが続いているが、BDレコーダは2020年11月以降マイナスに転じている。白物家電では、401L以上の電気冷蔵庫、洗濯乾燥機、電気掃除機、ルームエアコンのいずれも、2020年10月以降はプラスが続いている。情報通信機器では伸び率は上昇傾向で、ノートPCは2020年8月以降プラスを保ち続け、スマートフォンは2020年7月以降(10月を除き)概ねプラスを保っている(図表11図表12図表13)。

 新車販売の伸びは2020年10月以降、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、プラスを保っている。ただし伸び率は2020年10月をピークに、その後は伸び悩んでいる(図表10)。

 雇用環境は、改善の動きが一旦小休止している。有効求人倍率は2020年9月を底に11月にかけて上昇を続けてきたが、12月には横ばいとなっている。完全失業率は10月をピークに一旦低下したが、12月には横ばいとなっている(図表6)。

 収入環境では、現金給与総額、所定内給与額、超過給与のいずれも、2020年11月以降マイナスが続いている。伸び率は、超過給与で上昇が続いている一方、現金給与総額で低下が続いている(図表7)。

 消費マインドについては、消費者態度指数と景気ウォッチャー現状判断DIともに、2020年12月以降、低下が続いている。特に、景気ウォッチャー現状判断DIで、低下幅の大きさが目立っている(図表8)。

 総合すると、消費は2020年10月以降改善の動きが続いていたが、直近の12月時点では悪化に転じ、再び足踏み状態となっている。

 日常財は、2020年10月以降プラスが続いていたが、12月には伸びは再びマイナスに転じている。耐久財は、家電製品出荷と新車販売はプラスを保っている。一方で、新設住宅着工はマイナスが続いており、分野間で好不調が分かれている。

 雇用環境は、改善の動きが一旦小休止しており、収入環境は足許で悪化が続いている。消費マインドも悪化の動きが進んでおり、消費を取り巻く状況は冴えないものとなっている。

 内閣府が2021年2月19日に公表した2021年2月分の月例経済報告によると、景気の現状判断は10ヶ月ぶりに下方修正となった。特に、個人消費は、3ヶ月連続で判断が下方修正されている。緊急事態宣言の再発令を受けて、飲食や宿泊など一部サービス業で悪化の動きの加速していることが、今回の下方修正の判断に影響している模様だ。

 ただ、緊急事態宣言の再発令以降、コロナウイルス新規陽性者数は、東京都でみても全国でみても、減少が続き、小康状態にある。2月19日からは、医療従事者を対象に、新型コロナウイルスワクチンの先行接種が開始している。コロナ感染収束に向けた動きは、着実に進んでいる。

 緊急事態宣言解除のタイミングやワクチン接種のスケジュールについては、意見が分かれるところではある。それでも、遅かれ早かれコロナ感染収束に至る道筋が、より具体的に見えてきたことは確かだ。「コロナ後」の日本経済のV字回復も、有力なシナリオのひとつとなっている。

 景気や消費の先行きについて短期的には不透明さがあるが、中長期的には「コロナ後」の消費回復の可能性を見越して、チャンスを先取りする手立てを講じていくべき時期に来ているかもしれない。


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