※図表の閲覧には会員ログインが必要です。
消費は改善に転じているが、コロナ禍からはまだ立ち直れていない。
食品や日用品、家電、選択的サービスなど一部の領域を除き、残りの大半の領域はコロナ前の水準を回復できずにいる。
雇用環境や収入環境は改善傾向にある。だが、消費マインドが再び悪化に転じているのは、今後の消費にとって気がかりな点だ。
JMR消費INDEXは、2021年2月時点の33.3から、2021年3月には80.0へと急上昇した。INDEXの数値が80以上となるのは、2015年8月以来の事となる。近似曲線は、2020年4月頃を境に、上昇トレンドに転じている(図表1)。
INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、消費支出と平均消費性向が2021年3月に、4ヶ月ぶりに改善した。預貯金は5ヶ月連続で伸びがマイナスであり、貯蓄の取り崩しが続いている。販売関連10指標(チェーンストア売上高除く)は、2021年3月に改善の側が優勢の状況に転じた。3月時点では、改善は10指標中9指標に対し、悪化はファミリーレストラン売上の1指標だけである(図表2)。
ただし、2021年3月からみて一昨年同月にあたる2019年3月時点の数値と比較すると、INDEXを構成する全15指標中、改善となっているものは食料品(一昨年同月比伸び率:104.3%)と家電製品売上(同:120.3%)の2指標だけである。コロナ前の水準を上回っているのは一部の領域に限られており、残りの大半の領域はまだ立ち直れていないといえる。
消費支出の伸びは名目と実質ともに、4ヶ月ぶりにプラスに転じた(図表4)。ただし、一昨年同月比では、名目と実質ともに、2020年12月以降マイナスが続いている。
10大費目別では、2021年2月はマイナスの側が優勢だったが、2021年3月にはプラスの側が優勢へと転じている。2021年3月現在、名目増減率と実質増減率はともに、10費目中8費目がプラスである(図表5)。特に、2021年3月に一昨年同月比でも伸びがプラスとなっているのは、名目では光熱・水道、家具・家事用品、保健医療、その他の消費支出の4費目、実質では住居、光熱・水道、家具・家事用品、保健医療、教育、その他の消費支出の6費目である。
販売現場では、日常財のうち、小売業全体の売上は2021年3月時点で、4ヶ月ぶりにプラスに転じた。家電大型専門店は10月以降プラスを保っている。百貨店、コンビニエンスストア、ホームセンターは、2021年3月にプラスに転じている。一方で、スーパーとドラッグストアは、2021年2月以降マイナスが続いている(図表9、図表10)。
コロナ下で好調だったスーパーやドラッグストアは、最近悪化が目立っている。しかし、どちらも一昨年同月比ではプラスを保っている。一方、コロナ下で悪化が際立っていた百貨店は、直近で改善がみられる。だが、どちらも一昨年同月比ではマイナスが続いている。
耐久財のうち、乗用車(普通+小型)と軽乗用車の新車販売の伸びは、ともにプラスを保っており、伸び率の値も上昇を続けている(図表11)。
ただし、乗用車(普通+小型)は2021年3月以降、一昨年同月比でマイナスが続いている。また、軽乗用車は2021年3月に一昨年同月比でプラスだったが、4月は一昨年同月比で再びマイナスとなっている。
家電製品出荷は、AV機器ではスピーカシステムを除き、白物家電と情報通信機器でいずれの製品も、プラスを保っている(図表12、図表13、図表14)。特に、4K対応薄型テレビ、洗濯乾燥機、電気掃除機、スマートフォン、ノートPCは、一昨年同月比でもプラスを保っている。
新設住宅着工戸数は2021年3月に、全体として21ヶ月ぶりにプラスに転じた。利用関係区分別にみると、持家では2020年11月以降プラスが続いている。分譲住宅・マンションは再びプラスに戻した。一方で、分譲住宅・一戸建ては、マイナスが続いている(図表15)。
三大都市圏別に伸びの推移をみると、持家では、首都圏と近畿圏で伸びはプラスを保っているが、中部圏とその他では伸びはマイナスに転じている。マンションでは、その他で伸びはプラスを保ち、首都圏と中部圏で伸びはプラスに転じているが、近畿圏では伸びはマイナスが続いている(図表16、図表17)。
ただし、全体でも利用関係区分別でも、一昨年同月比で伸びはマイナスが続いている。2021年3月に、一昨年同月比で伸びがプラスとなっているのは、首都圏での持ち家の伸びだけである。
雇用環境では、再び改善の動きがみられる。2021年3月時点で、完全失業率は低下し、有効求人倍率も上昇が続いている(図表6)。
収入環境では、現金給与総額は2021年3月に12ヶ月ぶりにプラスに転じた。所定内給与額は2021年1月以降プラスとなっており、伸び率の値も上昇している。他方で、超過給与はマイナスが続いてはいるが、伸び率の値は再び上昇している(図表7)。
消費マインドについては、上昇に転じていた消費者態度指数と景気ウォッチャー現状判断DIは、2021年4月に再び低下に転じている(図表8)。
総合すると、消費はコロナ禍からはまだ立ち直れていない。前年同月比でプラスとなり改善に転じているが、一昨年同月比ではマイナスが続いている。
支出領域別にみても、前年同月比でプラスとなっている領域が大勢を占めているが、一昨年同月比でプラスなのは食品や日用品、家電、選択的サービスなど一部の領域に限られている。そのほかの多くの領域ではコロナ前の水準を回復できずにいる。
雇用環境は再び改善の動きを取り戻し、収入環境は改善の動きが続いている。ただし、消費マインドは悪化に転じているのは、今後の消費にとって気がかりな点だ。
2021年5月18日に内閣府より公表された2021年1~3月期四半期別GDP速報 (1次速報値)によると、実質GDP成長率は2020年7~9月期以降2期連続でプラスとなっていたが、直近の2021年1~3月期にはマイナスに転じている。
詳細をみると、2021年1~3月期の実質GDP成長率は年率換算で-5.1%、そのうち民間最終消費支出の寄与度は年率換算で-2.9%となった。GDPの落ち込みの大半は、消費の不振によるものであることがわかる。
2021年1~3月期は、ほぼ2回目の緊急事態宣言が発令されていた時期にあたり、外出自粛や、飲食店を中心とした営業時間短縮などが再び強化されたことで、コロナ下で続いてきた景気回復の動きに一旦ブレーキがかかった格好だ。
5月に入り、緊急事態宣言は期間が延長され、対象地域も拡大されている。蔓延防止等重点措置に関しても同様の動きがみられる。一部報道では、5月31日までとなっている緊急事態宣言が再延長される可能性も浮上している。
今回の緊急事態宣言等に伴う規制の内容は、前回の緊急事態宣言時よりも強化されており、宣言期間延長が今後具体化していった場合には、2021年4~6月期も実質GDP成長率のマイナスが続き、景気の悪化が進むおそれがある。
参照コンテンツ
- MNEXT 眼のつけどころ プロ・マーケティングの組み立て方 都心高級ホテル競争 「アマン」VS.「リッツ」(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ 市場脱皮期の富裕層開拓マーケティング―価格差別化戦略(2021年)
- オリジナルレポート コロナ下とコロナ後の消費の展望(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ コロナ禍の訪問営業は時代遅れなのか?―「会うのが、いちばん。」(2021年)
- アフターコロナの営業戦略 激変市場に対応した小商圏型営業活動のすすめ(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ 行動経済学ベースのマーケティングのはじめ方(2020年)
おすすめ新着記事
消費者調査データ レトルトカレー(2024年11月版) 首位「咖喱屋カレー」、3ヶ月内購入はダブルスコア
調査結果を見ると、「咖喱屋カレー」が、再購入意向を除く5項目で首位を獲得した。店頭接触、購入経験で2位に10ポイント以上の差をつけ、3ヶ月内購入では2位の「ボンカレーゴールド」のほぼ2倍の購入率となった。
「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 伸長するパン市場 背景にある簡便化志向や節約志向
どんな人がパンを食べているのか調べてみた。主食として1年内に食べた頻度をみると、食事パンは週5回以上食べた人が2割で、特に女性50・60代は3割前後と高かった。パン類全体でみると、朝食で食事パンを食べた人は女性を中心に高く、特に女性50代は6割以上であった。
「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 伸長するパン市場 背景にある簡便化志向や節約志向
どんな人がパンを食べているのか調べてみた。主食として1年内に食べた頻度をみると、食事パンは週5回以上食べた人が2割で、特に女性50・60代は3割前後と高かった。パン類全体でみると、朝食で食事パンを食べた人は女性を中心に高く、特に女性50代は6割以上であった。