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消費は改善の動きが続いているが、分野間で好不調の格差が分かれており、コロナ前の水準を回復している領域も一部に限られている。
注目すべき点は、消費支出がコロナ前の水準を回復したことだ。
ただし、支出領域別でコロナ前の水準を上回り続けているのは、家電などごく一部の領域に限られている。その他の領域では依然、コロナ前の水準を回復できていない。
収入環境は改善が続いている。だが、雇用環境は再び悪化しており、消費マインドも悪化が続いているのは、今後の消費にとって引き続き気がかりな点だ。
JMR消費INDEXは、2021年4月時点で80.0となり、前月から横ばいとなっている。近似曲線は、2020年1月頃を境に、上昇トレンドに転じている(図表1)。
INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、消費支出と平均消費性向は2ヶ月連続で改善している。預貯金は6ヶ月ぶりに伸びがプラスとなっている。販売関連10指標(チェーンストア売上高除く)は、2021年4月時点で、前月同様、改善の側が優勢の状況が続いている。4月時点で、改善が10指標中9指標に対し、悪化は食料品売上の1指標だけである(図表2)。
2021年4月からみて、コロナ前の一昨年同月にあたる2019年4月時点の数値と比較すると、INDEXを構成する全15指標中、改善となっているものは消費支出(一昨年同月比伸び率:100.9%)、食料品(同:105.9%)と家電製品売上(同:126.7%)の3指標だけである。コロナ前の水準を上回っている領域数は前月よりも増えているが、残りの大半の領域は依然コロナ以前の水準には回復していない。
消費支出の伸びは名目と実質ともに、2ヶ月連続でプラスである(図表4)。2021年4月には、一昨年同月比でも、名目と実質ともにプラスに転じている点は、新たな動きとして注目される。
10大費目別では、2021年4月は前月同様、プラスの側が優勢の状況が続いている。2021年4月現在、名目増減率と実質増減率はともに、10費目中9費目がプラスとなっており、前月よりもプラスの費目数が増えている(図表5)。2021年4月に一昨年同月比でも伸びがプラスとなっているのは、名目でも実質でも、住居、家具・家事用品、交通・通信、保健医療、教育の5費目である。
販売現場では、コロナ下で好調だったスーパーやドラッグストアは、最近悪化が続いている。しかし、どちらも一昨年同月比ではプラスを保っている。一方、コロナ下で悪化が際立っていた百貨店は、直近で大幅な伸びを続けているが、一昨年同月比ではマイナスが続いている。
日常財のうち、小売業全体の売上は2ヶ月連続でプラスとなっている。家電大型専門店は10月以降プラスを保っている。百貨店、コンビニエンスストア、ホームセンターは、2ヶ月連続でプラスとなっている。一方で、スーパーとドラッグストアは、3ヶ月連続でマイナスとなっている(図表9、図表10)。
耐久財のうち、乗用車(普通+小型)と軽乗用車の新車販売の伸びは、ともにプラスを保っており、伸び率の値も更なる上昇をみせている(図表11)。
ただし、一昨年同月比では、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、2021年4月以降マイナスが続いている。
家電製品出荷は、情報家電ではノートPCを除き、AV機器と白物家電でいずれの製品も、プラスを保っている(図表12、図表13、図表14)。特に、4K対応薄型テレビ、BDレコーダ、401L以上の電気冷蔵庫、洗濯乾燥機、電気掃除機、ルームエアコン、スマートフォンは、一昨年同月比でもプラスを保っている。
新設住宅着工戸数は2ヶ月連続でプラスとなっている。持家では2020年11月以降プラスが続いている。分譲住宅・マンションは2ヶ月連続でプラスである。一方で、分譲住宅・一戸建ては、マイナスが続いている(図表15)。
三大都市圏別に伸びの推移をみると、持家では、首都圏と近畿圏で伸びはプラスを保っている。中部圏とその他では、2021年4月に、伸びは再びプラスに戻した。マンションでは、その他で伸びはプラスを保っているが、首都圏と中部圏で伸びは再びマイナスとなっており、近畿圏では伸びはマイナスが続いている(図表16、図表17)。
ただし、分譲住宅・マンションを除き、一昨年同月比で伸びはマイナスが続いている。2021年4月に、一昨年同月比でも伸びがプラスとなっているのは、中部圏での持ち家とその他のマンションだけである。
雇用環境では、再び悪化の動きがみられる。2021年4月時点で、完全失業率は上昇し、有効求人倍率も低下している(図表6)。
他方で、収入環境では、改善が続いている。超過給与は2019年8月以来、20ヶ月ぶりにプラスに転じた。現金給与総額と所定内給与額は、伸びが2ヶ月連続でプラスとなっている(図表7)。
ただし、消費マインドについては、消費者態度指数と景気ウォッチャー現状判断DIのいずれも、2ヶ月連続で低下が続いている(図表8)。
総合すると、消費は改善の動きが続いているが、分野間で好不調の格差が分かれており、コロナ前の水準を回復している領域も一部に限られている。
消費支出は、前年同月比だけでなく一昨年同月比でもプラスとなった。コロナ前の水準を回復した点は、今回、新たな動きとして注目される。
支出領域別でも、前年同月比では総じて改善が続いている。ただし、一昨年同月比でプラスが続いているのは、家電などごく一部の領域に限られている。その他の多くの領域では一昨年同月比でマイナスが続いており、依然コロナ以前の水準には回復していない。
収入環境は改善の動きが続いている。ただし、雇用環境は再び悪化の動きをみせており、消費マインドは悪化が続いているのは気がかりなところだ。
再延長された緊急事態宣言は6月20日に、沖縄を除く9都道府県で解除され、うち7都道府県(北海道、東京、愛知、大阪、京都、兵庫、福岡)については、まん延防止等重点措置へ移行した。既にまん延防止等重点措置が設定されている埼玉県、神奈川県、千葉県とともに、実施期限は7月11日までとなっている。
飲食店での営業時間短縮要請は継続されるが、飲食店による酒類提供は今回、限定的に可能となっている。また、イベントの開催についても、まん延防止等重点措置の解除後、1ヶ月程度の経過措置として、上限を1万人まで引き上げることが示されている。
この先、加速するワクチン接種のペースに合わせて、経済活動の正常化へのステップを、後戻りさせないよう着実に進めていくことが、重要となってくる。
参照コンテンツ
- MNEXT 眼のつけどころ プロ・マーケティングの組み立て方 都心高級ホテル競争 「アマン」VS.「リッツ」(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ 市場脱皮期の富裕層開拓マーケティング―価格差別化戦略(2021年)
- オリジナルレポート コロナ下とコロナ後の消費の展望(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ コロナ禍の訪問営業は時代遅れなのか?―「会うのが、いちばん。」(2021年)
- アフターコロナの営業戦略 激変市場に対応した小商圏型営業活動のすすめ(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ 行動経済学ベースのマーケティングのはじめ方(2020年)
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