半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

公開日:2021年06月22日

月例消費レポート 2021年6月号
消費支出はコロナ前の水準に回復
主任研究員 菅野 守

※図表の閲覧には会員ログインが必要です。

消費は改善の動きが続いているが、分野間で好不調の格差が分かれており、コロナ前の水準を回復している領域も一部に限られている。
注目すべき点は、消費支出がコロナ前の水準を回復したことだ。
ただし、支出領域別でコロナ前の水準を上回り続けているのは、家電などごく一部の領域に限られている。その他の領域では依然、コロナ前の水準を回復できていない。
収入環境は改善が続いている。だが、雇用環境は再び悪化しており、消費マインドも悪化が続いているのは、今後の消費にとって引き続き気がかりな点だ。

 JMR消費INDEXは、2021年4月時点で80.0となり、前月から横ばいとなっている。近似曲線は、2020年1月頃を境に、上昇トレンドに転じている(図表1)。

 INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、消費支出と平均消費性向は2ヶ月連続で改善している。預貯金は6ヶ月ぶりに伸びがプラスとなっている。販売関連10指標(チェーンストア売上高除く)は、2021年4月時点で、前月同様、改善の側が優勢の状況が続いている。4月時点で、改善が10指標中9指標に対し、悪化は食料品売上の1指標だけである(図表2)。

 2021年4月からみて、コロナ前の一昨年同月にあたる2019年4月時点の数値と比較すると、INDEXを構成する全15指標中、改善となっているものは消費支出(一昨年同月比伸び率:100.9%)、食料品(同:105.9%)と家電製品売上(同:126.7%)の3指標だけである。コロナ前の水準を上回っている領域数は前月よりも増えているが、残りの大半の領域は依然コロナ以前の水準には回復していない。

 消費支出の伸びは名目と実質ともに、2ヶ月連続でプラスである(図表4)。2021年4月には、一昨年同月比でも、名目と実質ともにプラスに転じている点は、新たな動きとして注目される。

 10大費目別では、2021年4月は前月同様、プラスの側が優勢の状況が続いている。2021年4月現在、名目増減率と実質増減率はともに、10費目中9費目がプラスとなっており、前月よりもプラスの費目数が増えている(図表5)。2021年4月に一昨年同月比でも伸びがプラスとなっているのは、名目でも実質でも、住居、家具・家事用品、交通・通信、保健医療、教育の5費目である。

 販売現場では、コロナ下で好調だったスーパーやドラッグストアは、最近悪化が続いている。しかし、どちらも一昨年同月比ではプラスを保っている。一方、コロナ下で悪化が際立っていた百貨店は、直近で大幅な伸びを続けているが、一昨年同月比ではマイナスが続いている。

 日常財のうち、小売業全体の売上は2ヶ月連続でプラスとなっている。家電大型専門店は10月以降プラスを保っている。百貨店、コンビニエンスストア、ホームセンターは、2ヶ月連続でプラスとなっている。一方で、スーパーとドラッグストアは、3ヶ月連続でマイナスとなっている(図表9図表10)。

 耐久財のうち、乗用車(普通+小型)と軽乗用車の新車販売の伸びは、ともにプラスを保っており、伸び率の値も更なる上昇をみせている(図表11)。

 ただし、一昨年同月比では、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、2021年4月以降マイナスが続いている。

 家電製品出荷は、情報家電ではノートPCを除き、AV機器と白物家電でいずれの製品も、プラスを保っている(図表12図表13図表14)。特に、4K対応薄型テレビ、BDレコーダ、401L以上の電気冷蔵庫、洗濯乾燥機、電気掃除機、ルームエアコン、スマートフォンは、一昨年同月比でもプラスを保っている。

 新設住宅着工戸数は2ヶ月連続でプラスとなっている。持家では2020年11月以降プラスが続いている。分譲住宅・マンションは2ヶ月連続でプラスである。一方で、分譲住宅・一戸建ては、マイナスが続いている(図表15)。

 三大都市圏別に伸びの推移をみると、持家では、首都圏と近畿圏で伸びはプラスを保っている。中部圏とその他では、2021年4月に、伸びは再びプラスに戻した。マンションでは、その他で伸びはプラスを保っているが、首都圏と中部圏で伸びは再びマイナスとなっており、近畿圏では伸びはマイナスが続いている(図表16図表17)。

 ただし、分譲住宅・マンションを除き、一昨年同月比で伸びはマイナスが続いている。2021年4月に、一昨年同月比でも伸びがプラスとなっているのは、中部圏での持ち家とその他のマンションだけである。

 雇用環境では、再び悪化の動きがみられる。2021年4月時点で、完全失業率は上昇し、有効求人倍率も低下している(図表6)。

 他方で、収入環境では、改善が続いている。超過給与は2019年8月以来、20ヶ月ぶりにプラスに転じた。現金給与総額と所定内給与額は、伸びが2ヶ月連続でプラスとなっている(図表7)。

 ただし、消費マインドについては、消費者態度指数と景気ウォッチャー現状判断DIのいずれも、2ヶ月連続で低下が続いている(図表8)。

 総合すると、消費は改善の動きが続いているが、分野間で好不調の格差が分かれており、コロナ前の水準を回復している領域も一部に限られている。

 消費支出は、前年同月比だけでなく一昨年同月比でもプラスとなった。コロナ前の水準を回復した点は、今回、新たな動きとして注目される。

 支出領域別でも、前年同月比では総じて改善が続いている。ただし、一昨年同月比でプラスが続いているのは、家電などごく一部の領域に限られている。その他の多くの領域では一昨年同月比でマイナスが続いており、依然コロナ以前の水準には回復していない。

 収入環境は改善の動きが続いている。ただし、雇用環境は再び悪化の動きをみせており、消費マインドは悪化が続いているのは気がかりなところだ。

 再延長された緊急事態宣言は6月20日に、沖縄を除く9都道府県で解除され、うち7都道府県(北海道、東京、愛知、大阪、京都、兵庫、福岡)については、まん延防止等重点措置へ移行した。既にまん延防止等重点措置が設定されている埼玉県、神奈川県、千葉県とともに、実施期限は7月11日までとなっている。

 飲食店での営業時間短縮要請は継続されるが、飲食店による酒類提供は今回、限定的に可能となっている。また、イベントの開催についても、まん延防止等重点措置の解除後、1ヶ月程度の経過措置として、上限を1万人まで引き上げることが示されている。

 この先、加速するワクチン接種のペースに合わせて、経済活動の正常化へのステップを、後戻りさせないよう着実に進めていくことが、重要となってくる。


図表を含めた完全版を読む

完全版を読むには無料の会員登録が必要です。

参照コンテンツ


おすすめ新着記事



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツプレミアム会員サービス戦略ケースの教科書Online


新着記事

2024.11.15

24年9月の「現金給与総額」は33ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2024.11.14

24年9月の「消費支出」は5ヶ月連続のマイナスに

2024.11.14

24年9月の「家計収入」は5ヶ月ぶりのマイナス

2024.11.13

24年9月は「完全失業率」、「有効求人倍率」とも改善

2024.11.12

企業活動分析 ローソンの23年2月期は、「地域密着×個客・個店主義」徹底し増収増益

2024.11.12

企業活動分析 セブン&アイHDの24年2月期は海外事業の影響で減収も過去最高益を更新

2024.11.11

24年10月の「乗用車販売台数」は2ヶ月連続のプラス

2024.11.08

消費者調査データ No.416 レトルトカレー(2024年11月版) 首位「咖喱屋カレー」、3ヶ月内購入はダブルスコア

2024.11.07

企業活動分析 楽天グループの23年12月期は27期連続増収も、モバイルへの投資で4期連続の赤字

2024.11.07

24年9月の「新設住宅着工戸数」は5ヶ月連続のマイナス

2024.11.06

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 伸長するパン市場  背景にある簡便化志向や節約志向

2024.11.05

企業活動分析 ファンケルの24年3月期算は国内売上がけん引し、3期ぶりの増収増益へ

2024.11.05

企業活動分析 コーセーの23年12月期は、国内好調も中国事業低迷で増収減益に

2024.11.01

成長市場を探せ コロナ禍の落ち込みから再成長する惣菜食市場(2024年)

2024.10.31

月例消費レポート 2024年10月号 消費は緩やかな改善が続いている-政治が消費回復のリスクに

2024.10.31

消費からみた景気指標 24年8月は6項目が改善

2024.10.30

24年8月の「広告売上高」は、4ヶ月連続のプラス

2024.10.30

24年9月の「ファミリーレストラン売上高」は31ヶ月連続プラス

2024.10.30

24年9月の「ファーストフード売上高」は43ヶ月連続のプラスに

週間アクセスランキング

1位 2024.10.29

MNEXT やはり起こった「雪崩」現象―「岩盤保守の正体」

2位 2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

3位 2017.09.19

MNEXT 眼のつけどころ なぜ日本の若者はインスタに走り、世界の若者はタトゥーを入れるのか?

4位 2024.03.08

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

5位 2024.09.24

MNEXT 価値で捉え、群れ集団を狙えー2025年のマーケティング

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area