※図表の閲覧には会員ログインが必要です。
消費は概ね改善の動きが続いている。コロナ前の水準への回復の動きも、各方面で徐々に広がりつつある。
収入環境は改善の動きが続いており、消費マインドも改善に転じたことは、今後の消費にとって好材料だ。
ただし、緊急事態宣言の再発出やまん延防止等重点措置等の期間延長など、コロナ感染防止の対応等での政治リスクには、引き続き注意が必要となる。
JMR消費INDEXは、2021年5月時点で93.3となり、過去最高に並んだ。INDEXの数値が過去最高となったのは、2014年3月以来のことである。これは、2014年4月に消費税率が5%から8%へ引き上げられることに伴う、駆け込み需要を反映した動きであった(図表1)。
INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、消費支出と平均消費性向は3ヶ月連続で改善している。預貯金には再び取り崩しの動きがみられる。販売関連10指標(チェーンストア売上高除く)は、2021年5月時点で、前月同様、改善の側が優勢の状況が続いている。この5月は、10指標全てが改善となっている(図表2)。
2021年5月からみて、コロナ前の一昨年同月にあたる2019年5月時点の数値と比較すると、INDEXを構成する全15指標中、改善となっているものはファーストフード売上(一昨年同月比伸び率:102.8%)、食料品(同:115.6%)、家具・インテリア売上(同:101.3%)、家電製品売上(同:112.8%)の4指標である。一昨年同月比伸び率がプラスとなった領域数は、前月よりも更に増えている。
消費支出の伸びは名目と実質ともに、3ヶ月連続でプラスとなっている(図表4)。ただし、一昨年同月比は、名目と実質ともに再びマイナスへと戻している。
10大費目別では、2021年5月も前月同様、プラスの側が優勢の状況が続いている(図表5)。ただし、2021年5月に一昨年同月比でも伸びがプラスとなっているのは、名目でも実質でも、保健医療の1費目だけである。
販売現場では、スーパーで悪化が続いてはいるが、一昨年同月比ではプラスを保っている。百貨店は、引き続き高い伸びを保っている。一昨年同月比ではマイナスが続いている。コンビニエンスストアは改善が続いているが、一昨年同月比はマイナスのままであり、コロナ前の水準には回復していない。
日常財のうち、小売業全体の売上は3ヶ月連続でプラスとなっている。ドラッグストアは、4ヶ月ぶりにプラスに転じた。家電大型専門店は10月以降プラスを保っている。百貨店とコンビニエンスストアは、3ヶ月連続でプラスとなっている。一方で、スーパーは、3ヶ月連続でマイナスである。ホームセンターは3ヶ月ぶりにマイナスに転じている(図表9、図表10)。
外食売上は、全体でも、業態別でも、2021年4月以降プラスが続いている(図表18)。特にファーストフードは、2021年5月時点で、一昨年同月比でも3ヶ月ぶりにプラスに戻している。
耐久財のうち、乗用車(普通+小型)の伸びは4ヶ月連続でプラスとなったが、軽乗用車の伸びは9ヶ月ぶりにマイナスに転じている(図表11)。一昨年同月比では、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、依然マイナスである。
家電製品出荷は、白物家電はプラスが続いており、AV機器はスピーカシステムを除きプラスを保っている。一方、情報家電はマイナスに転じている(図表12、図表13、図表14)。4K対応薄型テレビ、401L以上の電気冷蔵庫、洗濯乾燥機、電気掃除機は、一昨年同月比でもプラスを保っている。一方で、ノートPCは一昨年同月比でもマイナスとなっている。
新設住宅着工戸数は3ヶ月連続でプラスとなっている。持家では2020年11月以降プラスが続いている。分譲住宅・マンションは3ヶ月連続でプラスである。分譲住宅・一戸建ても、18ヶ月ぶりにプラスに転じた(図表15)。
三大都市圏別の推移をみると、持家では、首都圏、近畿圏、中部圏、その他など全ての地域でプラスが続いている。マンションでは、近畿圏を除きプラスとなっている(図表16、図表17)。
分譲住宅・マンションは一昨年同月比でもプラスが続いているが、持家と分譲住宅・一戸建ては一昨年同月比でマイナスが続いている。2021年5月に、一昨年同月比でも伸びがプラスとなっているのは、首都圏での持ち家とその他のマンションだけである。
雇用環境では、2021年5月時点で、完全失業率は上昇を続けているが、有効求人倍率は横ばいとなった(図表6)。
他方で、収入環境では、改善が続いている。現金給与総額と所定内給与額は、伸びが3ヶ月連続でプラス、超過給与も2ヶ月連続のプラスである(図表7)。
消費マインドも、消費者態度指数と景気ウォッチャー現状判断DIともに、3ヶ月ぶりに上昇に転じている(図表8)。
総合すると、消費は概ね改善の動きが続いている。回復の動きには分野ごとに一進一退がみられるが、コロナ前の水準への回復の動きは徐々に広がりつつある。
収入環境は改善の動きが続いており、消費マインドも改善に転じたことは、今後の消費にとって好材料だ。
東京都に対し、7月12日から8月22日の期間で、4回目の緊急事態宣言が発出された。埼玉、千葉、神奈川、大阪の4府県に対するまん延防止等重点措置も、8月22日まで延長されることとなった。東京都では、飲食店による酒類提供の全面停止など、再び規制強化へと逆戻りする結果となっている。
ワクチン接種の拡大に伴い、経済活動の正常化への動きが進みつつあるが、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が夏季休暇期間にまで延びたことは、改善の足取りを邪魔するおそれがあり、景気や消費の本格回復を遅らせる可能性もある。
コロナ感染状況の推移とそれに伴う政治的対応等が招くリスクには、引き続き注意が必要となろう。
参照コンテンツ
- MNEXT 眼のつけどころ プロ・マーケティングの組み立て方 都心高級ホテル競争 「アマン」VS.「リッツ」(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ 市場脱皮期の富裕層開拓マーケティング―価格差別化戦略(2021年)
- オリジナルレポート コロナ下とコロナ後の消費の展望(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ コロナ禍の訪問営業は時代遅れなのか?―「会うのが、いちばん。」(2021年)
- アフターコロナの営業戦略 激変市場に対応した小商圏型営業活動のすすめ(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ 行動経済学ベースのマーケティングのはじめ方(2020年)
おすすめ新着記事
消費者調査データ サブスクリプションサービス 広く利用される「プライムビデオ」、音楽サブスクには固定ファンも
調査結果を見ると、「Amazon プライムビデオ」が全項目で首位となった。「プライムビデオ」は認知率で認知率は8割強、利用経験では唯一4割強、今後の利用意向でも3割を超えている。
成長市場を探せ コロナ禍の壊滅的状況からV字回復、売上過去最高のテーマパーク
コロナ下では長期休業や入場制限などを強いられ、壊滅的ともいえる打撃を被ったテーマパーク市場、しかし、コロナが5類移行となった2023年には、売上高は8,000億円の大台を突破、過去最高を記録した。
消費者調査データ シャンプー(2024年11月版) 「ラックス」と「パンテーン」、激しい首位争い
調査結果を見ると、「ラックス(ユニリーバ)」と「パンテーン(P&G)」が複数の項目で僅差で首位を競り合う結果となった。コロナ禍以降のセルフケアに対する意識の高まりもあって、シャンプー市場では多様化、高付加価値化が進んでいる。ボタニカルやオーガニック、ハニーやアミノ酸などをキーワードに多様なブランドが競うシャンプー市場の今後が注目される。