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これまで改善が続いた分野で今回悪化に転じる動きが増えている。消費は改善の勢いが弱まっている。コロナ前の水準への回復の動きも、一旦足踏み状態となりつつある。
雇用環境は改善したが、収入環境は改善の動きが弱い。消費マインドも再び方向感が定まらなくなっている。
コロナ感染拡大で、これまで消費回復のチャンスを逸し続けている。政治的判断・対応そのものが、現状のボトルネックであり、かつ将来的なリスク要因ともなっている。
JMR消費INDEXは、2021年6月時点で66.7となり、前月よりも低下した。近似曲線は、2019年9月頃を底に上昇トレンドを維持している(図表1)。
INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、消費支出は4ヶ月ぶりに悪化となった。一方で、平均消費性向は4ヶ月連続で改善している。預貯金も取り崩しの動きが続いている。販売関連10指標(チェーンストア売上高除く)は、2021年6月時点で前月よりも悪化の数が増えた。ただし、改善の側が優勢の状況は維持している(図表2)。
2021年6月からみて、コロナ前の一昨年同月にあたる2019年6月時点の数値と比較すると、INDEXを構成する全15指標中、改善となっているものは食料品(一昨年同月比伸び率:112.6%)、家具・インテリア売上(同:127.6%)、家電製品売上(同:115.0%)の3指標である。プラスとなった領域数は、前月よりも減少している。
消費支出の伸びは名目と実質ともに、4ヶ月ぶりにマイナスに転じた(図表4)。一昨年同月比も、名目と実質ともに2ヶ月連続でマイナスである。
10大費目別では、2021年6月は、プラスのものが4費目に対しマイナスのものが6費目となり、マイナスの側が優勢に転じている(図表5)。2021年6月に、名目でも実質でも、前年同月比と一昨年同月比の双方で伸びがプラスとなっているのは、住居と保健医療の2費目だけである。一方で、前年同月比と一昨年同月比の双方で伸びがマイナスとなっているのは、食料、交通通信、その他の消費支出、被服及び履物の4費目である。
販売現場では、ドラッグストアは一昨年同月比でも改善が続いている。スーパー、家電大型専門店、ホームセンターでは悪化となっているが、一昨年同月比ではプラスを保っている。コンビニエンスストアは改善が続いているが、一昨年同月比はマイナスのままである。
小売業全体の売上は4ヶ月連続でプラスとなっている。ドラッグストアは、2ヶ月連続で改善している。コンビニエンスストアは、4ヶ月連続でプラスとなっている。一方で、家電大型専門店は9ヶ月ぶりに、百貨店は4ヶ月ぶりに悪化に転じた。ホームセンターは2ヶ月連続で悪化している。スーパーは、5ヶ月連続でマイナスとなっている(図表9、図表10)。
外食売上は、全体では2021年4月以降プラスが続いている。業態別では、ファーストフードは2021年3月以降プラスを保っている。一方で、ファミリーレストランとパブ・居酒屋は3ヶ月ぶりに悪化に転じている(図表18)。一昨年同月比では、2021年6月は、全体でも業態別でもマイナスである。
乗用車(普通+小型)の伸びは5ヶ月連続でプラスとなったが、軽乗用車の伸びは2ヶ月連続でマイナスとなっている。前年同月比伸び率の値も低下が続いている(図表11)。一昨年同月比では、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、マイナスが続いている。
家電製品出荷では、AV機器はプラスを保っているが、白物家電は洗濯乾燥機を除きマイナスに転じている。情報家電はマイナスが続いている(図表12、図表13、図表14)。AV機器は、一昨年同月比でもプラスを保っている。洗濯乾燥機は一昨年同月比でもプラスとなったが、401L以上の電気冷蔵庫とルームエアコンは一昨年同月比でもマイナスに転じている。
新設住宅着工戸数は4ヶ月連続でプラスとなっている。持家では2020年11月以降プラスが続いている。分譲住宅・一戸建ては、2ヶ月連続でプラスである。一方で、分譲住宅・マンションは4ヶ月ぶりにマイナスに転じた(図表15)。
三大都市圏別の推移をみると、持家では、首都圏、近畿圏、中部圏、その他など全ての地域でプラスが続いている。マンションでは、首都圏だけがプラスである(図表16、図表17)。
一昨年同月比では、2021年6月は、全体でも種類別でもマイナスとなっている。ただし、首都圏では、持ち家とマンションともに、一昨年同月比でもプラスである。
雇用環境は、改善の動きがみられた。2021年6月時点で、完全失業率は3ヶ月ぶりに低下し、有効求人倍率も再び上昇している(図表6)。
収入環境では、改善の動きが弱まっている。2021年6月時点で、所定内給与額と超過給与の伸びはプラスを保ったが、現金給与総額の伸びはほぼ横ばいとなっている(図表7)。2021年夏ボーナスの不振に伴う特別給与の落ち込みが、足を引っ張った格好だ。
消費マインドは、方向感が定まらない状況にある。景気ウォッチャー現状判断DIは2ヶ月連続で改善したが、消費者態度指数は再びマイナスに転じている(図表8)。
総合すると、消費は改善の勢いが一旦弱まっている。今月は、これまで改善の動きが続いてきた分野で今回悪化に転じるといった動きが、前月よりも増えている。コロナ前の水準への回復の動きも、一旦足踏み状態となりつつあるようだ。
雇用環境は改善に転じたが、収入環境では改善の動きが弱まっている。消費マインドも再び方向感が定まらなくなっている。
8月に入り、全国各地で新規陽性確認者数が過去最高を更新するなど、感染拡大の動きにピークアウトの気配はみられないようだ。8月20日から、緊急事態宣言の対象地域は新たに7府県が追加されて計13都府県に、まん延防止等重点措置の適用地域は継続となる6道府県に新たに10県が追加されて計16道県となる。期間も9月12日まで更に延長となっている。
政府の分科会による提言を受けて、デパート各社は8月14日以降、緊急事態宣言が出されている地域の店舗を中心に、入場制限を始めている。これまでの飲食店による酒類提供の全面停止に加えて、感染拡大阻止に向けた規制の動きが更に強まりつつある。
消費の現場からみて、G.W.と夏季の2大休暇は今年も、振るわない結果に終わりそうだ。年内で残されたチャンスは、今年最後の長期休暇期間となる年末年始休暇である。
年末年始休暇期間に、旅行・レジャーを中心に消費の拡大を実現するには、ワクチン接種第2回目完了のタイミングをどれだけ前倒しできるかが、カギとなる。
ただし、新規感染者の発生抑止、医療体制の逼迫状況の打開、ワクチン接種の拡大の全てで、政治的判断・対応そのものが現状のボトルネックであり、かつ将来的なリスク要因ともなっている。
参照コンテンツ
- MNEXT 眼のつけどころ プロ・マーケティングの組み立て方 都心高級ホテル競争 「アマン」VS.「リッツ」(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ 市場脱皮期の富裕層開拓マーケティング―価格差別化戦略(2021年)
- オリジナルレポート コロナ下とコロナ後の消費の展望(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ コロナ禍の訪問営業は時代遅れなのか?―「会うのが、いちばん。」(2021年)
- アフターコロナの営業戦略 激変市場に対応した小商圏型営業活動のすすめ(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ 行動経済学ベースのマーケティングのはじめ方(2020年)
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