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消費は前月の悪化の動きに一旦歯止めがかかり、持ち直しの動きがみられる。
雇用環境は改善が続き、収入環境は改善傾向を保っている。ただし、消費マインドが悪化に転じているのは、気がかりだ。
コロナウイルス新規陽性確認者数は既に、低下トレンドに転じている。政府は、10月から11月にワクチン2回目接種完了することを見越して、ワクチン接種済みなどを条件に行動制限を緩和していく方針だ。
今後、コロナ感染を取り巻く状況の好転で政治的なボトルネック打開への気運が高まり、行動制限緩和が決定すれば、消費回復に向けてより確固とした足掛かりを得ることとなるはずだ。
JMR消費INDEXは、2021年7月時点で80.0となり、前月よりも上昇した。近似曲線も、2019年9月頃を底に上昇トレンドを維持している(図表1)。
INDEXを構成する個々の変数をみると、支出関連3指標が揃って改善となった。消費支出は再び改善し、平均消費性向は5ヶ月連続で改善している。預貯金も取り崩しの動きが続いている。販売関連10指標(チェーンストア売上高除く)は、2021年7月時点で前月よりも改善の数が増えている(図表2)。
2021年7月からみて、コロナ前の一昨年同月にあたる2019年7月時点と比較すると、INDEXの全15指標中、改善はファーストフード売上(一昨年同月比伸び率:104.7%)、食料品(同:114.9%)、家具・インテリア売上(同:108.5%)、家電製品売上(同:135.5%)の4指標である。プラスとなった領域数は、前月よりも増加している。
消費支出の伸びは名目と実質ともに、再びプラスに戻した(図表4)。ただし、一昨年同月比は、名目と実質ともにマイナスが続いている。
10大費目別では、2021年7月は、名目では前月よりも改善し、プラスが5費目に対しマイナスが5費目と拮抗している。実質では前月同様、プラスが4費目に対し、マイナスが6費目となっている(図表5)。2021年7月に前年同月比と一昨年同月比の双方で伸びがプラスとなっているのは、名目では食料の1費目だけである。実質では該当する費目はひとつもない。
一方で、前年同月比と一昨年同月比の双方で伸びがマイナスとなっているのは、名目では光熱・水道、保健医療、教育、その他の消費支出の4費目、実質では住居、光熱・水道、保健医療、教育、その他の消費支出の5費目である。
販売現場では、スーパーは6か月ぶりに改善となり、一昨年同月比でもプラスを保っている。ドラッグストアは一昨年同月比でも改善が続いている。家電大型専門店、ホームセンターでは悪化が続いているが、一昨年同月比ではプラスを保っている。コンビニエンスストアは改善が続くも、一昨年同月比はマイナスのままである。
小売業全体の売上は、5ヶ月連続でプラスとなっている。ドラッグストアは、3ヶ月連続で改善している。コンビニエンスストアは、5ヶ月連続でプラスとなっている。百貨店は、再びプラスに戻した。スーパーは、6か月ぶりにプラスに転じた。一方で、ホームセンターは3ヶ月連続で悪化している。家電大型専門店は、マイナスが2ヶ月続いている(図表9、図表10)。
外食売上は、全体では2021年4月以降プラスが続いている。業態別では、ファーストフードは2021年3月以降プラスを保っている。一方で、ファミリーレストランとパブ・居酒屋は2ヶ月連続で悪化となっている(図表18)。一昨年同月比では、2021年7月は、ファーストフードはプラスに戻したが、全体やファミリーレストラン、パブ・居酒屋ではマイナスが続いている。
新車販売では、乗用車(普通+小型)の伸びは、6ヶ月連続でプラスとなった。軽乗用車の伸びは3ヶ月連続でマイナスとなっているが、前年同月比伸び率の値は上昇している(図表11)。ただし、一昨年同月比では、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、マイナスが続いている。
家電製品出荷では、AV機器と白物家電はいずれもマイナスに転じている。情報家電のうち、スマートフォンはプラスであるが、ノートPCはマイナスが続いている(図表12、図表13、図表14)。AV機器では、BDレコーダーとスピーカシステムは一昨年同月比でもマイナスである。白物家電では、401L以上の電気冷蔵庫と洗濯乾燥機は一昨年同月比でもマイナスである。ノートPCも一昨年同月比でもマイナスである。
新設住宅着工戸数は5ヶ月連続でプラスとなっている。持家では2020年11月以降プラスが続いている。分譲住宅・一戸建ては、3ヶ月連続でプラスである。分譲住宅・マンションもプラスへ戻した(図表15)。
三大都市圏別の推移をみると、持家では、首都圏、近畿圏、中部圏、その他など全ての地域で4ヶ月連続プラスとなっている。マンションでは、首都圏、近畿圏、その他でプラスとなっている。特に首都圏は、3ヶ月連続のプラスである(図表16、図表17)。
一昨年同月比では、2021年7月は、分譲住宅・マンションでプラスとなっている。特に首都圏では、持ち家は3ヶ月連続のプラス、マンションは2ヶ月連続のプラスである。
雇用環境は、改善が続いている。2021年7月時点で、完全失業率は2ヶ月連続で低下し、有効求人倍率は2ヶ月連続で上昇している(図表6)。
収入環境では、改善傾向を保っている。2021年7月時点で、現金給与総額、所定内給与額、超過給与の全てで、伸びは再びプラスとなっている(図表7)。
一方で、消費マインドは悪化している。消費者態度指数は2ヶ月連続でマイナスとなり、景気ウォッチャー現状判断DIは3ヶ月ぶりに悪化に転じた(図表8)。
総合すると、消費は前月の悪化の動きに一旦歯止めがかかり、持ち直しの動きがみられる。
消費支出は再びプラスに戻し、10大費目でも改善に転じる動きが散見される。マイナスが続いてきたスーパー売上もようやくプラスに転じた。外食では、ファーストフードでいち早くコロナ前の水準への回復の動きが認められる。
家電製品出荷では総じてマイナスに転じる動きが目立っている。しかし、新車販売は改善傾向を保ち、新設住宅着工戸数は首都圏を中心に改善が続いている。
雇用環境は改善が続き、収入環境は改善傾向を保っている。ただし、消費マインドが悪化に転じているのは、気がかりだ。
全国のコロナ新規陽性確認者数は、8月20日をピークに低下トレンドに転じた。直近の9月21日時点で、全国の新規陽性確認者数は2,000人を切り、1,758人となった。
9月13日の政府公表によると、国内で新型コロナウイルス・ワクチンの2回目接種を終えた人の割合が全人口の50%を超えた。
政府としては、10月から11月の早い時期に、希望者全員のワクチン接種を完了する目論見だ。そして、早ければ10月以降、ワクチン接種済みなどを条件に、新型コロナウイルス対策の行動制限を緩和していく方針を打ち出している。
菅義偉首相が自民党総裁選不出馬を表明したのを機に、政治的なボトルネックの打開への気運が高まっている。コロナ感染を取り巻く状況の好転は、そうした気運を後押ししていくと期待される。
今後、行動制限緩和への道筋が定まれば、消費回復に向けてより確固とした足掛かりを得ることとなるはずだ。
参照コンテンツ
- MNEXT 眼のつけどころ 凍結した消費マインドを溶解させるマーケティング―解除後の消費増加シナリオ(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ プロ・マーケティングの組み立て方 都心高級ホテル競争 「アマン」VS.「リッツ」(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ 市場脱皮期の富裕層開拓マーケティング―価格差別化戦略(2021年)
- オリジナルレポート コロナ下とコロナ後の消費の展望(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ コロナ禍の訪問営業は時代遅れなのか?―「会うのが、いちばん。」(2021年)
- アフターコロナの営業戦略 激変市場に対応した小商圏型営業活動のすすめ(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ 行動経済学ベースのマーケティングのはじめ方(2020年)
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