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公開日:2021年10月28日

月例消費レポート 2021年10月号
マインド好転で消費の先行きに明るい展望
主任研究員 菅野 守

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 消費は足許で、再び悪化の動きが目立っている。
 他方で、収入環境は改善傾向を保っている。消費マインドが好転しているのは、消費にとって好材料だ。
 コロナウイルス新規陽性確認者数は、激減している。飲食店に対する時短や酒類提供停止の要請を解除する動きも進み、行動制限緩和に向けた政府の実証実験も進められている。
 コロナを取り巻く状況の急速な改善は、消費者のマインド好転を後押ししている。コロナ後の消費回復に向けた様々な取組を進める上でも、マインドの好転は追い風となるだろう。

 JMR消費INDEXは、2021年8月時点で40.0となり、前月よりも低下した。近似曲線は、2019年9月頃を底に上昇トレンドを維持している(図表1)。

 INDEXを構成する個々の変数をみると、支出関連3指標が揃って悪化となった。消費支出は再び悪化し、平均消費性向は6ヶ月ぶりに悪化となった。預貯金は4ヶ月ぶりに取り崩しの動きが止まっている。販売関連10指標(チェーンストア売上高除く)は、2021年8月時点で6ヶ月ぶりに悪化の側が優勢の状況に転じた(図表2)。悪化が6指標に対し、改善が4指標となった。

 2021年8月からみて、コロナ前の一昨年同月にあたる2019年8月時点と比較すると、INDEXの全15指標中、改善は食料品(一昨年同月比伸び率:115.8%)、家具・インテリア売上(同:100.4%)の4指標である。プラスとなった領域数は、前月よりも減少している。

 消費支出の伸びは名目と実質ともに、再びマイナスに転じた(図表4)。一昨年同月比でも、名目と実質ともにマイナスが続いている。

 10大費目別では、2021年8月は、名目と実質ともに前月よりも悪化している。名目では、マイナスが7費目に対しプラスが3費目、実質でもマイナスが8費目に対しプラスが2費目となっており、マイナスの側が優勢となっている(図表5)。

 販売現場では、小売業全体の売上は、6ヶ月ぶりに悪化に転じた。ドラッグストアだけは前年同月比でも一昨年同月比でもプラスを保っているが、残りの業態では前年同月比でマイナスとなっている。スーパーは再び悪化となったが、一昨年同月比ではプラスを保っている。コンビニエンスストアは6ヶ月ぶりに悪化に転じ、一昨年同月比でもマイナスが続いている。家電大型専門店、ホームセンターでは悪化が続いているが、一昨年同月比でもマイナスに転じている(図表9図表10)。

 外食売上は、全体では5ヶ月ぶりに悪化に転じた。業態別では、ファーストフードは2021年3月以降プラスを保っている。一方で、ファミリーレストランとパブ・居酒屋は3ヶ月連続で悪化となっている(図表18)。一昨年同月比では、2021年8月は、全体でも業態別でも、再びマイナスとなった。

 新車販売では、乗用車(普通+小型)の伸びは、7ヶ月ぶりにマイナスに転じ、伸び率も大幅に落ちている。軽乗用車の伸びも4ヶ月連続でマイナスとなり、伸び率の値も更に低下している(図表11)。一昨年同月比でも、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、マイナスが続いている。

 家電製品出荷では、AV機器はマイナスが続き、白物家電もごく一部を除きマイナスが続いている。情報家電のうち、スマートフォンはプラスであるが、ノートPCはマイナスが続いている(図表12図表13図表14)。

 新設住宅着工戸数は6ヶ月連続でプラスとなっている。持家では2020年11月以降プラスが続いている。分譲住宅・一戸建ては4ヶ月連続でプラスであるが、分譲住宅・マンションは再びマイナスに転じた(図表15

 三大都市圏別の推移をみると、持家では、首都圏、近畿圏、中部圏、その他など全ての地域で4ヶ月連続プラスとなっている。一昨年同月比でも全ての地域でプラスに転じた。マンションでは、中部圏はプラスとなったが、首都圏、近畿圏、その他の地域は再びマイナスとなっている。一昨年同月比でもプラスは中部圏のみである(図表16図表17)。

 雇用環境は、改善の動きが足踏み状態となっている。2021年8月時点で、完全失業率は横ばいとなり、有効求人倍率は3ヶ月ぶりに低下した(図表6)。

 収入環境では、改善傾向を保っている。2021年8月時点で、現金給与総額、所定内給与額、超過給与の全てで、伸びはプラスが続いている(図表7)。

 消費マインドは好転している。消費者態度指数は3ヶ月ぶりに改善し、景気ウォッチャー現状判断DIは上昇に転じた(図表8)。

 総合すると、消費は再び悪化の動きが目立っている。

 消費支出は再びマイナスに転じ、10大費目でも悪化に転じる動きが目立っている。商業販売もごく一部の業態を除きマイナスとなっている。外食でも総じてマイナスが続いている。

 家電製品出荷では総じてマイナスの動きが続いており、新車販売も急速に悪化している。他方で、新設住宅着工戸数は持家主導で改善が続いている点は、注目される。

 雇用環境は足踏み状態となっているが、収入環境は改善傾向を保っている。消費マインドが再び好転したのは、消費にとっては好材料だ。

 全国のコロナ新規陽性確認者数は低下が続き、9月17日以降は500人を割り込んでいる。直近の10月23日時点で、全国の新規陽性確認者数は285人。東京都は32人、大阪府は46人であり、両都県とも50人を下回り続けている。

 10月22日の政府公表によると、国内で新型コロナウイルス・ワクチンの2回目接種を終えた人の割合が全人口の68%、1回目接種を終えた人の割合も全人口の76%となっている。全国各地では、飲食店に対する時短や酒類提供停止の要請の解除が進んでいる。東京都と大阪府も、10月25日より飲食店に対する時短は解除となっている。

 行動制限緩和に向けた政府の「ワクチン・検査パッケージ」による実証実験も、スポーツイベント、飲食店、大規模コンサートなどで次々と進められている。

 足許で消費悪化の動きが目立っているが、コロナ感染を取り巻く状況の急速な改善は、消費者のマインド好転を後押ししている。コロナ後の消費回復に向けた様々な取組を進める上でも、マインドの好転は追い風となるだろう。


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