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消費は一部で改善の兆しもうかがわれるが、カテゴリー間での好不調の格差は、依然として残ったままだ。不振のカテゴリーでは、低迷が長引きつつある。
収入環境では改善が続いているが、雇用環境は方向感が定まらず、消費マインドも改善の動きに一服感が出始めている。消費を取り巻く環境は、盤石とまでは言い切れない。
JMR消費INDEXは、2021年10月時点で60.0となり、前月よりも上昇している。近似曲線も、上昇トレンドを維持している(図表1)。
INDEXを構成する個々の変数をみると、支出関連3指標のうち、平均消費性向は3ヶ月連続で悪化となっている。他方、消費支出はマイナスを脱し、預貯金も取り崩しの動きがみられる。販売関連10指標(チェーンストア売上高除く)は2021年10月時点で、前月と同様、改善と悪化とが拮抗している(図表2)。
2021年10月と、コロナ前の一昨年同月にあたる2019年10月時点とを比較すると、INDEXの全15指標中、改善は食料品売上(同:113.2%)、ファーストフード売上(同:107.3%)、家電製品売上(同:106.9%)、消費支出(一昨年同月比伸び率:102.8%)、新設住宅着工戸数(同:101.2%)、衣料品売上(同:100.1%)、家具・インテリア売上(同:100.1%)、の計7指標である。
一昨年同月比でプラスとなった指標の数は、前月よりも大きく増えている。ただ、比較の時点である2019年10月は、消費税増税に伴う駆け込み需要の反動減が現れた時期である。そのため、この結果から「コロナ前の水準を回復した」とみるのはまだ早計であろう。
消費支出の伸びは名目と実質ともに、ほぼ横ばいとなっている(図表4)。一昨年同月比では、名目と実質ともに6ヶ月ぶりにプラスに転じた。
10大費目別では、2021年10月も、名目と実質ともにマイナスの側が優勢である。名目と実質のいずれでも、マイナスが7費目に対しプラスが3費目であり、前月よりもマイナスの費目数が増えている(図表5)。
販売現場では、小売業全体の売上が、3ヶ月ぶりに改善した。チャネル別でも、前年同月比で、コンビニエンスストアはわずかにマイナス(前年同月比伸び率:99.8%)となったが、残りの百貨店、スーパー、家電大型専門店、ホームセンター、ドラッグストアは全てプラスである(図表9、図表10)。
外食売上は、全体では3ヶ月連続でマイナスとなっている。業態別でも、ファーストフードはプラスを保っている一方で、ファミリーレストランとパブ・居酒屋はマイナスが続いている点は、前月と同様である(図表18)。こうした状況は、一昨年同月比でみても変わらない。
新車販売では、乗用車(普通+小型)の伸びは3ヶ月連続のマイナス、軽乗用車の伸びも6ヶ月連続のマイナスである(図表11)。
一昨年同月比でも、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、前月と同じくマイナスが続いている。
家電製品出荷では、AV機器のうち4K対応薄型テレビやBDレコーダは前月と同様、マイナスが続いている。白物家電は、総じてマイナスとなっている。情報家電では、スマートフォンも5ヶ月ぶりにマイナスに転じている。また、ノートPCはマイナスが続いている(図表12、図表13、図表14)。
新設住宅着工戸数は、全体では8ヶ月連続でプラスとなっている。持家と分譲住宅・一戸建てはプラスを保っている一方、分譲住宅・マンションはマイナスが続いている点は、前月と同様である(図表15)。
三大都市圏別の推移をみると、持家では、首都圏、近畿圏、中部圏、その他など全ての地域で7ヶ月連続プラスとなっている。一昨年同月比でも、全ての地域で3ヶ月連続のプラスである。他方、マンションでは、首都圏、近畿圏、中部圏、その他など全ての地域で、前年同月比と一昨年同月比ともに、マイナスとなっている(図表16、図表17)。
雇用環境については2021年10月時点で、完全失業率は改善となったが、有効求人倍率は悪化しており、方向感が定まっていない(図表6)。
収入環境は、改善傾向を保っている。2021年10月時点で、所定内給与額の伸びはわずかにマイナスとなったが、現金給与総額と超過給与の伸びは前月と同様、プラスを保っている(図表7)。
消費マインドは回復の勢いが鈍化している。2021年11月時点で、消費者態度指数は横ばいとなっている。景気ウォッチャー現状判断DIは3ヶ月連続で上昇しているが、上昇幅は顕著に縮まっている(図表8)。
総合すると、消費は小売販売を中心に一部で改善しているが、カテゴリー間での好不調の格差は、依然として残ったままだ
消費支出の伸びはゼロ近傍で推移している。小売販売では、全体でもチャネル別でも、改善の動きがみられた。新設住宅着工戸数は、持家を中心に引き続き好調が続いている。ただし、外食売上は全体でマイナスが続き、業態間の格差も依然残っている。新車販売や家電製品出荷は、不振が長引きつつある。
収入環境では改善が続いているが、雇用環境は足許で方向感が定まらず、消費マインドも改善の動きに一服感が出始めている。消費を取り巻く環境は今のところ、盤石とまでは言い切れない。
参照コンテンツ
- MNEXT 眼のつけどころ 凍結した消費マインドを溶解させるマーケティング―解除後の消費増加シナリオ(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ プロ・マーケティングの組み立て方 都心高級ホテル競争 「アマン」VS.「リッツ」(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ 市場脱皮期の富裕層開拓マーケティング―価格差別化戦略(2021年)
- オリジナルレポート コロナ下とコロナ後の消費の展望(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ コロナ禍の訪問営業は時代遅れなのか?―「会うのが、いちばん。」(2021年)
- アフターコロナの営業戦略 激変市場に対応した小商圏型営業活動のすすめ(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ 行動経済学ベースのマーケティングのはじめ方(2020年)
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