※図表の閲覧には会員ログインが必要です。
支出全般の伸びは上昇を続けている。耐久財では好不調の格差が目立つが、小売販売や外食を中心に、消費は改善の動きが続いている。
収入環境は改善傾向にあるが、雇用環境とマインドは方向感が定まらない。
値上げの悪影響は食料を中心に各領域へと広がっているが、そのインパクトは和らぎつつある。
輸入物価の上昇にもブレーキがかり、企業物価の上昇もピークアウトしつつあるが、消費者物価上昇の動きは暫く続きそうである。
賃上げの動きや政府の低所得層対策などにより、値上げの悪影響にどこまで持ちこたえられるかが、今後の消費回復の行方を左右することとなるだろう。
JMR消費INDEXは2023年1月に86.7へと、更に上昇している(図表1)。
INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、1月は、支出関連3指標のうち、消費支出と平均消費性向の2指標は3ヶ月ぶりに改善へと転じた。販売関連では、改善が10指標中9指標と前月よりも増えている(図表2)。
消費支出の伸びは、1月も名目でプラスが続いており、伸びの値も上昇している(図表4)。
10大費目別では、1月は名目ではプラスが6費目、実質では3費目であり、名目でプラスの側が優勢となっている。ただし、その個数はいずれも前月よりも減少している(図表5)。
食料、交通・通信、その他の消費支出の3費目では、名目の伸びはプラスだが実質の伸びはマイナスである。特に、食料とその他の消費支出では、名目と実質の伸びの差が顕著である(図表5)。
物価の動きに着目すると、輸入物価の伸びは2022年9月以降、低下が続いている。国内企業物価の伸びも2023年1月は低下している。他方、消費者物価の伸びは引き続き、緩やかな上昇傾向にある(図表6)。
財・サービス別に消費者物価の伸びの推移をみると、2022年8月以降、財・サービスともに物価の伸びは上昇を続けている(図表7)。
販売現場では、小売業全体の売上は息長くプラスが続いている。チャネル別では、2023年1月に家電大型専門店とホームセンターはマイナスに転じる一方、残りの4業態はプラスを保っており、業態間で好不調が分かれている(図表11、図表12)。
外食売上は、全体で14ヶ月連続のプラスであり、業態別でも3業態全てで11ヶ月連続のプラスである(図表20)。
新車販売は、2023年2月時点で、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに2ヶ月連続のプラスである(図表13)。
他方、家電製品出荷については、黒物家電は総じてマイナス、白物家電も概ねマイナスが続いている。情報家電はノートPCが2023年1月に再びマイナスに転じ、スマートフォンもマイナスが続いている(図表14、図表15、図表16)。
新設住宅着工戸数は、全体では2023年1月に、4ヶ月ぶりにプラスに転じた。利用関係別では、分譲住宅・マンションは2ヶ月連続でプラスだが、持家と分譲住宅・一戸建てはマイナスが続いている(図表17)。分譲住宅・マンションについては、首都圏と中部圏でプラスが続き、近畿圏もプラスに転じている(図表19)。
雇用環境については、2023年1月は失業率、有効求人倍率ともに低下しており、方向感は定まらない(図表8)。
収入は、現金給与総額、所定内給与額、超過給与額ともに13ヶ月連続のプラスである(図表9)。
消費マインドについては2023年2月現在、景気ウォッチャー現状判断DIは4ヶ月ぶりに上昇に転じたが、消費者態度指数は3ヶ月ぶりにマイナスとなっており、依然として方向感は定まらない(図表10)。
総合すると、消費は改善の動きが続いている。
消費支出など支出全般の伸びは上昇を続けている。10大費目別では、名目でプラスの側の優勢が続いている。
外食でも改善の動きが続いている。小売販売は全体でプラスが続いてはいるが、業態間で好不調が分かれている。
耐久財では引き続き、分野間で好不調の格差がみられる。特に、家電製品出荷では、悪化の動きが鮮明だ。
収入環境は改善傾向にあるが、雇用環境とマインドは方向感が定まらない。
値上げの悪影響は、食料を中心に各領域へと徐々に広がってきてはいるが、そのインパクトは徐々に和らぎつつある。2023年2月から3月上旬にかけて円安基調で推移してきた円ドル為替レートも、足許では円高方向へと転じつつある。輸入物価の上昇にも徐々にブレーキがかかってきており、卸売段階にあたる企業物価の上昇もピークアウトの兆しが見える。
だが、小売段階への価格転嫁が十分に進むまで、消費者物価上昇の動きは暫くの間は続きそうである。賃上げの動きや政府の低所得層対策などを通じて、値上げによる購買力の低下等にどこまで持ちこたえられるかが、今後の消費回復の行方を左右することとなるだろう。
特集:2022年、値上げをどう乗り切るか
特集1.値上げの価格戦略
- MNEXT 眼のつけどころ 値上げの時代の生き残りマーケティング(2022年)
- MNEXT 眼のつけどころ 市場脱皮期の富裕層開拓マーケティング―価格差別化戦略(2021年)
- MNEXT 値上げをチャンスに変える(2008年)
- MNEXT 不況下でもうまい価格対応で伸びる企業(2009年)
- 戦略ケース 値上げと小売業の競争 物価上昇で小売とメーカーは新競争時代に突入(2022年)
- 戦略ケース 値上げの現場 花王―戦略的値上げで収益性向上なるか(2022年)
- 戦略ケース 利益率低下により再値上げに踏み切ったキユーピー(2008年)
- 戦略ケース 値上げか値下げか-消費低迷下の価格戦略(2008年)
- マーケティングFAQ 「需要の価格弾力性」とは
特集2.値上げが企業の収益に与えるインパクトを分析
特集3.消費者は値上げをどう受け止めたのか?
- 「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 2019春の食品値上げラッシュ!値上げ方法で明暗(2019年)
- 「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 値上げの影響を受けやすい牛乳、受けにくいマヨネーズ(2013年)
- 「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 食品の値上げと安全性(2008年)
- MNEXT 下がる給料、増える生活費(2008年)
参照コンテンツ
- MNEXT 2023年の消費と戦略経営~マーケティングの6つの革新~(2022年)
- JMRからの提案 「消費社会白書2023」より 感情社会の生活イノベーション(2022年)
- JMRからの提案 感情社会の生活イノベーション エモーショナルブランディング(2022年)
- JMRからの提案 感情社会の生活イノベーション サクセスマーケティングの参考事例(2022年)
- MNEXT 眼のつけどころ Z世代攻略の鍵は時代にあり(2022年)
- MNEXT アフターコロナの本格マーケティング 2023年の消費を捉える10のポイント(2022年)
- MNEXT 眼のつけどころ プロ・マーケティングの組み立て方 都心高級ホテル競争 「アマン」VS.「リッツ」(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ 市場脱皮期の富裕層開拓マーケティング―価格差別化戦略(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ コロナ禍の訪問営業は時代遅れなのか?―「会うのが、いちばん。」(2021年)
- アフターコロナの営業戦略 激変市場に対応した小商圏型営業活動のすすめ(2021年)
- MNEXT 眼のつけどころ 行動経済学ベースのマーケティングのはじめ方(2020年)
おすすめ新着記事
消費者調査データ レトルトカレー(2024年11月版) 首位「咖喱屋カレー」、3ヶ月内購入はダブルスコア
調査結果を見ると、「咖喱屋カレー」が、再購入意向を除く5項目で首位を獲得した。店頭接触、購入経験で2位に10ポイント以上の差をつけ、3ヶ月内購入では2位の「ボンカレーゴールド」のほぼ2倍の購入率となった。
「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 伸長するパン市場 背景にある簡便化志向や節約志向
どんな人がパンを食べているのか調べてみた。主食として1年内に食べた頻度をみると、食事パンは週5回以上食べた人が2割で、特に女性50・60代は3割前後と高かった。パン類全体でみると、朝食で食事パンを食べた人は女性を中心に高く、特に女性50代は6割以上であった。
「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 伸長するパン市場 背景にある簡便化志向や節約志向
どんな人がパンを食べているのか調べてみた。主食として1年内に食べた頻度をみると、食事パンは週5回以上食べた人が2割で、特に女性50・60代は3割前後と高かった。パン類全体でみると、朝食で食事パンを食べた人は女性を中心に高く、特に女性50代は6割以上であった。