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マイナスが長期化しつつあった支出全般の伸びも、足許ではプラスに転じつつある。
日常生活財は好調を保っているが、耐久財では好不調の格差が鮮明になっている。
雇用環境は改善傾向にあり、収入環境は底堅さを保っているが、マインドは悪化の動きがみられる。
値上げの悪影響は一部で残っているが、輸入物価の伸びはマイナスが続き、国内企業物価の伸びも低下基調、消費者物価の伸びも再び低下に転じており、価格転嫁の圧力も弱まりつつある。
日米の金融政策の転換により、2024年には円高局面に入ると見込まれ、値上げの悪影響も収束していくと目される。日本のイールドカーブは下方シフトに転じたが、足許では再び上方へシフトバックしつつあり、中長期的に緩やかなインフレ見通しは堅持されている模様だ。
冬ボーナスの好調ぶりからは、年末・年始での消費の盛り上がりにも期待が持て、今後のマインド改善への足がかりともなりそうだ。
JMR消費INDEXは2023年10月に60.0となり、反転上昇に転じた(図表1)。
INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出関連では3指標中、平均消費性向は改善となっている。預貯金は6ヶ月連続で消費の増加に寄与する動きを示している。雇用関連の2指標について、有効求人倍率は3ヶ月連続、月間所定外労働時間は4ヶ月連続で悪化となっている。販売関連では、10指標中改善が7指標となった。改善の指標数は前月9月よりも増加し、改善の側の優勢も続いている(図表2)。
消費支出の伸びは、名目では8ヶ月ぶりにプラスに転じた。実質では8ヶ月連続のマイナスだが、伸び率の値は2023年7月を底に上昇を続けている(図表4)。
10大費目別では、10月は名目ではプラスが6費目となっており、前月とは異なりプラスの側が優勢に転じている。他方、実質ではマイナスが6費目となっており、マイナスの側が優勢であるが、マイナスの領域数は前月よりも減少している(図表5)。
名目と実質の伸びの差は、食料で+8.2%と際立っており、値上げの悪影響は食料で根強く残っている。次いで教養娯楽でも、名目と実質の伸びの差は+6.4%と目立っており、宿泊費等の大幅値上げが悪影響を及ぼしているようだ(図表5)。
物価の動きに着目すると、輸入物価の伸びは2023年4月以降マイナスが続いている。消費者物価の伸びは2023年11月に再び低下に転じている。国内企業物価の伸びは2022年12月以降低下が続いている。特に2023年9月以降は、国内企業物価の伸びが消費者物価の伸びを下回り続けており、卸段階から小売段階への価格転嫁の圧力は弱まりつつあるようだ(図表6)。
財・サービス別に消費者物価の伸びの推移をみると、財では伸びは再び低下しているが、サービスでは2023年7月以降、伸びは極めて緩やかながら上昇傾向にある(図表7)。
販売現場では、小売業全体の売上は息長くプラスが続いている。チャネル別では業態間で好不調が分かれており、百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストアでは息長くプラスが続いている一方、家電大型専門店とホームセンターは2023年9月以降マイナスが続いている(図表11、図表12)。
外食売上は、全体でも主要3業態でも、息長くプラスを保っている(図表20)。
新車販売は2023年11月時点で、乗用車(普通+小型)は11ヶ月連続のプラス、軽乗用車は4ヶ月連続のプラスとなっている(図表13)。
家電製品出荷については2023年10月時点で、黒物家電は総じてマイナスである。情報家電でも、ノートPCとスマートフォンはともにマイナスである。白物家電では、ルームエアコンはプラスだがそれ以外はマイナスに沈んでいる(図表14、図表15、図表16)。白物家電については、12月20日に公表された2023年11月分でも、ルームエアコン以外の3品目は引き続きマイナスとなっている。黒物家電については12月21日に公表された11月分も総じてマイナスである。情報家電についても、ノートPCはマイナスが続いている。
新設住宅着工戸数は、全体では5ヶ月連続のマイナスである。利用関係別では、分譲住宅・マンションは4ヶ月ぶりにプラスに戻した。だが他方で、持家で23ヶ月連続のマイナス、分譲住宅・一戸建てで12ヶ月連続のマイナスである(図表17)。
3大都市圏別にみると、分譲住宅・マンションは、首都圏、中部圏、近畿圏、その他の全ての地域でプラスとなっている。中部圏、近畿圏、その他の全ての地域ではプラスが続いており、首都圏では5ヶ月ぶりのプラスである(図表19)。
雇用環境については、2023年10月時点で、失業率は2ヶ月連続で低下し、有効求人倍率は3ヶ月ぶりに上昇している(図表8)。
収入については、現金給与総額は22ヶ月連続プラス、所定内給与額は24ヶ月連続プラスだが、超過給与額は2ヶ月連続のマイナスである(図表9)。
消費マインドについては2023年11月時点で、景気ウォッチャー現状判断DIは4ヶ月連続で低下しており、消費者態度指数も再び低下に転じている(図表10)。
マーケットの動きとして、まず円ドル為替レートと日経平均株価の推移をみると、株価は10月末頃を底に上昇傾向に転じ、11月下旬から12月初旬にかけて高止まり傾向にあった。12月上旬に一時低下するも、その後は上昇傾向にある。円ドル為替レートは11月半ば頃を境に円高傾向が続いている。12月14日には終値で1ドル141円87銭を付けた(図表21)。
日米の長期金利の推移をみると、米国債10年物金利は10月19日に終値で4.98%を、日本国債10年物金利は11月1日に終値で0.959%を付けたのをピークに、ともに低下傾向が続いている(図表22)。2023年12月22日時点での終値は、米国債10年物金利で3.90%、日本国債10年物金利で0.651%である。
日本国債のイールドカーブの変遷をみると、2023年3月下旬から直近の2023年11月初にかけて、若干の上下動を伴いつつも、イールドカーブは少しずつ上方へのシフトを続けてきた。11月1日をピークにイールドカーブは下方シフトに転じ、12月20日時点では9月1日時点の位置をわずかに下回る辺りまで下がってきた(図表23)。その後は12月22日にかけて、微少ながらも再び上方へシフトバックする動きをみせつつある。
総合すると、消費は足踏み状態を脱しつつある。
マイナスが長期化しつつあった支出全般の伸びも、プラスに転じつつある。
日常生活財は好調を保っている。耐久財は、新車販売や分譲住宅・マンションなどで改善の動きがみられるが、家電製品出荷はほぼ総じて低迷しており、好不調の格差が鮮明になっている。
雇用環境は改善傾向にあり、収入環境は底堅さを保っているが、マインドは悪化の動きがみられる。
値上げの悪影響は食料で根強く残り、教養娯楽などでも目立ってはいる。輸入物価の伸びはマイナスが続いており、国内企業物価は低下基調にある。消費者物価の伸びも再び低下に転じており、価格転嫁の圧力も弱まりつつある。
12月の米国FOMC(連邦公開市場委員会)で、利上げが見送られた。FOMC参加メンバーが示した「経済・政策金利見通し」によると、利上げの局面は終わり、2024年は3回程度の利下げが織り込まれている模様だ。他方、12月の日銀金融政策会合は、現状維持となった。マーケット関係者の間では、2024年4月頃のマイナス金利政策解除の可能性など、早晩訪れるであろう政策変更の時期の見極めに入りつつある。
2024年は、日米の中央銀行当局による金融政策の転換で、円ドル為替相場は円高局面に入ると見込まれ、値上げの悪影響も収束していくと目される。
日本のイールドカーブは11月初頭をピークに下方シフトに転じたが、足許では再び上方へシフトバックする動きをみせつつあり、中長期的に緩やかなインフレ見通しは堅持されている模様だ。
一部報道では、冬ボーナスは3年連続で前年超えとなり、その水準も過去最高を記録したといわれている。冬ボーナスの好調ぶりは、来るべき年末・年始での消費の盛り上がりにも期待が持て、今後のマインド改善への足がかりともなりそうだ。