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名目で一旦プラスに転じた支出全般の伸びも、再びマイナスに落ち込んでいる。
日常生活財は総じて好調を保つが、耐久財ではカテゴリー内で好不調の格差が鮮明である。
雇用環境は方向感が定まらないが、収入環境ではプラスの動きが続き、マインドも総じて改善に転じている。
値上げの悪影響は一部で残るが、輸入物価の伸びはマイナスが続き、国内企業物価の伸びは足許でゼロ、消費者物価の伸びも低下を続けており、この先物価上昇の圧力は緩和されるだろう。
日銀の金融政策転換はもうしばらく先との見方が優勢だが、イールドカーブの底堅さと上方への揺り戻し傾向を見る限り、緩やかながらもインフレ見通しが織り込まれつつある。
今後公表予定の、年末・年始の消費関連指標で消費の堅調ぶりが確認されれば、足許での消費マインド改善の動きと相まって、消費復調への足がかりとなりそうだ。
JMR消費INDEXは2023年12月も前月同様60.0となり、横ばいの状況にある(図表1)。
INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出関連では3指標中、消費支出は9か月連続で悪化が続き、平均消費性向も悪化に転じている。他方、預貯金は7ヶ月連続で消費の増加に寄与する動きを示している。雇用関連の2指標について、有効求人倍率は4ヶ月連続、月間所定外労働時間は5ヶ月連続で悪化となっている。販売関連では、10指標中改善が8指標となった。改善の指標数は前月10月よりも増加し、改善の側の優勢も続いている(図表2)。
消費支出の伸びは、名目では再びマイナスに落ち込んでいる。実質でも9ヶ月連続のマイナスとなっている(図表4)。
10大費目別では、11月は名目ではマイナスが6費目となっており、再びマイナスの側が優勢の状況となっている。実質ではマイナスが7費目と、マイナスの側が優勢の状況が続き、マイナスの領域数も前月よりも増えている(図表5)。
名目と実質の伸びの差は、教養娯楽で+7.5%と最も大きく、実質増減率も+0.4%と僅かなプラスに止まっている。次いで食料では名目と実質の伸びの差は+7.2%となり、実質増減率も-1.2%とマイナスへと落ちこんでいる(図表5)。
物価の動きに着目すると、輸入物価の伸びは2023年4月以降マイナスが続いている。消費者物価の伸びは2023年11月以降、低下が続いている。国内企業物価の伸びは2022年12月以降低下が続いている。特に2023年9月以降は国内企業物価の伸びが消費者物価の伸びを下回り、直近の2023年12月には伸び率ゼロの状況に至っている(図表6)。
財・サービス別に消費者物価の伸びの推移をみると、財とサービスでともに、伸びは低下している(図表7)。
販売現場では、小売業全体の売上は息長くプラスが続いている。チャネル別でもすべての業態で伸びはプラスとなっている(図表11、図表12)。
外食売上は、全体でも主要3業態でも、息長くプラスを保っている(図表20)。
新車販売は2023年12月時点で、乗用車(普通+小型)は12ヶ月連続のプラスだが、軽乗用車は5ヶ月ぶりにマイナスに転じている(図表13)。
家電製品出荷については2023年11月時点でも、黒物家電は総じてマイナスである。情報家電でも、ノートPCとスマートフォンはともにマイナスである。白物家電では、ルームエアコンはプラスだがそれ以外はマイナスに沈んでいる(図表14、図表15、図表16)。黒物家電について1月25日に公表された12月分も総じてマイナスであるが、情報家電については、ノートPCはプラスに転じている。白物家電についても、1月24日に公表された2023年12月分で、洗濯乾燥機以外の3品目でプラスとなっている。
新設住宅着工戸数は、全体では6ヶ月連続のマイナスである。利用関係別では、持家で24ヶ月連続のマイナス、分譲住宅・一戸建てで13ヶ月連続のマイナスである。分譲住宅・マンションは2023年11月に再びマイナスへと落ちこんだ(図表17)。
3大都市圏別にみると、分譲住宅・マンションは、近畿圏でプラスだが、首都圏、中部圏、その他の全ての地域ではマイナスとなっている(図表19)。
雇用環境については、2023年11月時点で、有効求人倍率は4ヶ月ぶりに低下する一方、失業率は横ばいとなっている(図表8)。
収入については、現金給与総額は23ヶ月連続プラス、所定内給与額は25ヶ月連続のプラスである。超過給与額は3ヶ月ぶりにプラスに戻した(図表9)。
消費マインドについては2023年12月時点で、消費者態度指数と景気ウォッチャー現状判断DIはともに上昇に転じている(図表10)。
マーケットの動きとして、まず円ドル為替レートと日経平均株価の推移をみると、2024年に入り、円安・株高の傾向が続いている(図表21)。2024年1月26日時点での終値は、株価は35,751円07銭、円ドル為替レートは1ドル148円16銭である。
日米の長期金利の推移をみると、米国債10年物金利は2023年10月19日に終値で4.98%を付けたのをピークに、その後は低下傾向にあったが、2023年12月27日に3.79%を付けたのを底に上昇に転じ2024年入り後も上昇傾向が続いている。日本国債10年物金利は2023年11月1日に終値で0.959%を付けたのをピークに、その後は低下傾向が続いていたが、2024年1月15日に0.563%付けたのを底に上昇傾向に転じている(図表22)。2024年1月26日時点での終値は、米国債10年物金利で4.14%、日本国債10年物金利で0.721%である。
日本国債のイールドカーブの変遷をみると、2023年11月1日をピークにイールドカーブは下方シフトに転じ、11月30日に一旦上昇するも12月11日を境に再び低下の動きが続いた。2024年1月15日を底に、イールドカーブは再び上昇傾向に転じている(図表23)。その後も11月25日にかけて、上昇傾向を保っている。
総合すると、消費は一進一退の状態から抜け出せず足踏み状態にある。
名目では一旦プラスに転じた支出全般の伸びも、名目と実質ともに再びマイナスに落ち込んでいる。
日常生活財は総じて好調を保っているが、耐久財は、各カテゴリー内で好不調の格差が鮮明になっている。
雇用環境は方向感が定まらないが、収入環境ではプラスの動きが続き、マインドも総じて改善に転じている。
値上げの悪影響は教養娯楽と食料で目立ち、特に食料でのダメージは相変わらず大きい。ただし、輸入物価の伸びはマイナスが続き、国内企業物価の伸びは低下を続け足許ではゼロとなった。消費者物価の伸びも総じて低下が続いていることから、この先物価上昇の圧力は一層緩和されていくと見込まれる。
日銀による金融政策の転換はもうしばらく先との見方が優勢だが、年末年始にかけて低下基調にあった日本のイールドカーブも、1月半ばを底に上方へシフトバックする動きをみせている。イールドカーブの底堅さと上方への揺り戻し傾向を見る限り、緩やかながらもインフレ見通しが織り込まれつつあるようだ。
今後公表が予定される、年末・年始の消費関連指標の数値から、消費の堅調ぶりが確認されれば、足許での消費マインド改善の動きと相まって、消費復調への足がかりとなりそうだ。