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支出全般の伸びはマイナスが続いているが、悪化の動きには歯止めがかかりつつある。
日常生活財は息長く好調さを保っているが、耐久財は、カテゴリー内でもカテゴリー間でも、好不調の格差が際立ってきている。
雇用環境もマインドも方向感が定まらない。収入環境は概ねプラスだが、一部でマイナスの気配がうかがわれる点は気がかりである。
値上げの悪影響は一部で目立つが、徐々に解消されていくと見込まれる。ただし、輸入物価上昇の可能性には注意を要する。
株式市場は2024年に入って以降ブル相場に一層弾みがつき、イールドカーブの上方シフトを通じて緩やかなインフレ見通しも織り込まれつつある。
マーケットが先取りする景気回復期待やインフレ見通しに沿った、消費回復の兆しが少しでも見えてくれば、この先、消費マインドの改善とともに、消費回復の裾野も拡がっていくと期待される。
JMR消費INDEXは2023年10月以降3ヶ月連続で60.0となり、横ばいが続いている(図表1)。
INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出関連では3指標中、消費支出は10ヶ月連続で悪化が続いているが、平均消費性向は再び改善へと戻している。預貯金は8ヶ月連続で消費の増加に寄与する動きを示している。雇用関連の2指標について、有効求人倍率は5ヶ月連続、月間所定外労働時間は6ヶ月連続で悪化となっている。販売関連では、10指標中改善が7指標となっており、改善の側の優勢も続いている(図表2)。
消費支出の伸びは、名目と実質ともにマイナスが続いているが、伸び率の値は上昇している(図表4)。
10大費目別では、12月も名目ではマイナスが6費目となっており、マイナスの側が優勢の状況が続いている。実質ではマイナスが9費目へと増えており、総じてマイナスとなっている(図表5)。
名目と実質の伸びの差は、教養娯楽で+7.7%、食料で+6.6%、家具・家事用品で+5.8%と、この3費目で特に大きい。その結果、教養娯楽と食料は実質でマイナスとなっている。家具・家事用品では、名目と実質の双方で-5.0%を超える顕著なマイナスとなっている(図表5)。
物価の動きに着目すると、輸入物価の伸びは2023年4月以降マイナスが続いてはいるが、2023年7月を底に伸び率の値は上昇傾向にある。直近の2024年1月には99.8%となり、あと少しでプラスに転じるか否かの状況となっている。他方で、国内企業物価の伸びは直近の2024年1月にゼロ近傍で横ばいとなっており、消費者物価の伸びは2023年11月以降、低下が続いている(図表6)。
財・サービス別に消費者物価の伸びの推移をみると、財では低下が続いている一方、サービスでは直近の2024年1月に横ばいとなっている(図表7)。
販売現場では、小売業全体の売上はプラスが続いている。チャネル別では、百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストアでは息長くプラスを保っている一方、家電大型専門店とホームセンターでは再びマイナスに落ち込んでおり、チャネル間の格差が鮮明である(図表11、図表12)。
外食売上は、全体でも主要3業態でも、息長くプラスを保っている(図表20)。
新車販売は2024年1月時点で、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともにマイナスとなっている。前月と比べた伸び率の変化は乗用車(普通+小型)で-15.5%、軽乗用車で-19.0%と、落ち込みは際立っている(図表13)。
家電製品出荷については2023年12月時点でも、黒物家電は総じてマイナスである。情報家電では、ノートPCはプラスだが、スマートフォンはマイナスが続いている。白物家電では、洗濯乾燥機以外の3品目でプラスとなっている(図表14、図表15、図表16)。黒物家電について2月22日に公表された2024年1月分も総じてマイナスである。白物家電についても、2月21日に公表された2024年1月分で、エアコン以外の3品目はマイナスに沈んでいる。情報家電については、ノートPCはプラスが続いている。
新設住宅着工戸数は、全体では7ヶ月連続のマイナスである。利用関係別では、持家で25ヶ月連続のマイナス、分譲住宅・一戸建てで14ヶ月連続のマイナスである。分譲住宅・マンションは2023年12月に再びプラスへ戻している(図表17)。
3大都市圏別にみると、分譲住宅・マンションは、首都圏、中部圏、近畿圏、その他の地域で総じてプラスとなっている(図表19)。
雇用環境については、2023年12月時点で、有効求人倍率は2ヶ月連続で低下したが、失業率も低下となっている(図表8)。
収入については、現金給与総額は24ヶ月連続プラス、所定内給与額は26ヶ月連続のプラスである。他方、超過給与額は再びマイナスに転じている(図表9)。
消費マインドについては2024年1月時点で、消費者態度指数は2ヶ月連続で上昇したが、景気ウォッチャー現状判断DIは再び低下に転じている(図表10)。
マーケットの動きとして、まず円ドル為替レートと日経平均株価の推移をみると、2024年に入って以降、円安・株高の傾向が続いている。株価は2024年2月22日に終値で3万9,098円を記録、1989年の大納会で付けた史上最高値3万8915円を34年ぶりに更新した(図表21)。その後も株価は上昇傾向を保ち、3月1日には取引時間帯中に一時4万円に迫る動きをみせた。
日米の長期金利の推移をみると、米国債10年物金利は2023年12月27日に3.79%を付けたのを底に上昇に転じ2024年に入って以降も上昇傾向を保っている。日本国債10年物金利は2024年1月15日に0.563%付けたのを底に、極めて緩やかながらも上昇傾向が続いている(図表22)。2024年2月29日時点での終値は、米国債10年物金利で4.25%、日本国債10年物金利で0.724%である。
日本国債のイールドカーブの変遷をみると、2023年12月11日を境に再び下方シフトに転じたが、2024年1月15日を底に上方シフトに転じ、2月14日にかけて上昇傾向を保ってきた(図表23)。その後は若干ながら低下傾向にあったが、2月26日を境に再び上昇の動きに転じている
総合すると、消費は足踏み状態が続いている。
支出全般の伸びは、名目と実質ともにマイナスが続いているが、悪化の動きには歯止めがかかりつつある。
日常生活財は概ね息長く好調さを保っているが、耐久財は、カテゴリー内でもカテゴリー間でも、好不調の格差が際立ってきている。
雇用環境もマインドも、足許で方向感が定まっていない。収入環境では概ねプラスの動きが続いてはいるものの、一部でわずかながらもマイナスの気配がうかがわれる点は気がかりである。
値上げの悪影響は教養娯楽、食料、家具・家事用品で目立っている。ただ、消費者物価の伸びは総じて低下が続いており、国内企業物価の伸びはゼロ近傍で推移していることから、悪影響も徐々に解消されていくと見込まれる。ただし、輸入物価の伸びはマイナスながらも、あと少しでプラスに転じるか否かの状況となっている点は、注意を要する。
株式市場は2024年に入って以降も上昇を続け、2月には34年ぶりに史上最高値を更新し、ブル相場にも一層弾みがつきつつある。
日本のイールドカーブも2024年1月半ば以降2月にかけて上方シフトの動きがみられ、緩やかなインフレ見通しも徐々に織り込まれつつある。
マーケットが先取りする景気回復期待やインフレ見通しに沿った、消費回復の兆しが少しでも見えてくれば、この先、消費マインドの改善とともに、消費回復の裾野も拡がっていくと期待される。