支出全般の伸びは名目と実質ともにマイナスが続き、マイナス幅も広がっている。
日常生活財は息長く好調さを保っているが、耐久財は、カテゴリー内でもカテゴリー間でも、依然として好不調の格差が際立っている。
雇用環境と収入環境は堅調さを保っており、マインドでは改善の動きがみられる。
値上げの悪影響は一部で残っている。続く円安の動きが再び輸入物価の上昇圧力をもたらし、国内企業物価や消費者物価の上昇へと徐々に波及しつつある点は、今後も注意を要する。
株価は2024年3月に入ってからも過去最高値を更新し、上昇基調を保っている。イールドカーブも上方シフトの動きがみられ、緩やかなインフレ見通しも引き続き織り込まれつつある。
マーケットの動きからみえてくる景気回復期待やインフレ見通しの底堅さに加え、足許での消費マインドの改善基調は、今後の消費回復を後押しするものと期待される。
JMR消費INDEXは2024年1月時点で33.3となり、大きく低下した。INDEXの水準が50を割り込んだのは2021年11月以来、26ヶ月ぶりである(図表1)。
INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出関連では3指標全てが悪化、同様に雇用関連の2指標も悪化が続いている。販売関連では、10指標中改善が5指標、悪化が5指標と拮抗している(図表2)。
消費支出の伸びは、名目と実質ともにマイナスが続いており、伸び率の値も更に低下している(図表4)。
10大費目別では、2024年1月は名目ではプラスが5費目、マイナスが5費目と拮抗している。実質ではマイナスが7費目となっており、マイナスの側が優勢である。それでも、名目と実質の双方で、プラスの費目数は2023年12月よりも増えている(図表5)。
名目と実質の伸びの差は、家具・家事用品で+6.4%、教養娯楽で+6.2%、食料で+5.5%と、この3費目で引き続き大きい。教養娯楽と食料は、名目ではプラスだが実質ではマイナスとなっている。家具・家事用品では、名目と実質の双方でマイナスとなっている(図表5)。
物価の動きに着目すると、輸入物価の伸びは2024年2月に100.2%となり、2023年3月以来11ヶ月ぶりにプラスに転じた。国内企業物価と消費者物価の伸びも、ともに上昇に転じている(図表6)。
財・サービス別に消費者物価の伸びの推移をみると、サービスでは2023年12月以降横ばいが続いているが、財では直近の2024年2月に再び上昇に転じている(図表7)。2024年に入ってからも続く円安の動きが再び輸入物価の上昇圧力をもたらし、国内企業物価や消費者物価の上昇へと徐々に波及しつつあるようだ。
販売現場では、小売業全体の売上はプラスが続いている。チャネル別では、百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストアでは息長くプラスを保っているが、家電大型専門店とホームセンターではマイナスが続いており、チャネル間の格差が際立っている(図表11、図表12)。
外食売上は、全体でも主要3業態でも、息長くプラスを保っている(図表20)。
新車販売は2024年1月以降、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともにマイナスが続いている(図表13)。
家電製品出荷について、黒物家電は2023年7月以降総じてマイナスである。情報家電では、ノートPCはプラスが続いているが、スマートフォンは2022年10月以降マイナスが続いている。白物家電は、2024年1月時点でエアコン以外の3品目でマイナスとなっている(図表14、図表15、図表16)。黒ただし、3月21日に公表された2024年2月分では、洗濯乾燥機以外の3品目でプラスとなっている。
新設住宅着工戸数は、全体では8ヶ月連続のマイナスである。利用関係別では、持家、分譲住宅・一戸建て、分譲住宅・マンションの全てで、マイナスである(図表17)。
3大都市圏別にみると、分譲住宅・マンションは、中部圏とその他の地域ではプラスが続いているが、首都圏と近畿圏では再びマイナスへと落ち込んでいる(図表19)。
雇用環境については2024年1月時点で、失業率は低下となっており、有効求人倍率は横ばいとなっている(図表8)。
収入については、現金給与総額は25ヶ月連続プラス、所定内給与額は27ヶ月連続のプラス、超過給与額も再びプラスに戻している(図表9)。
消費マインドについては2024年2月時点で、消費者態度指数は3ヶ月連続で上昇し、景気ウォッチャー現状判断DIは再び上昇に転じている(図表10)。
マーケットの動きとして、まず円ドル為替レートと日経平均株価の推移をみると、2024年に入って以降、円安・株高の傾向が続いている。株価は2024年3月4日に終値で4万109円23銭を付けて以降、一時下落基調にあったが、3月半ば頃以降は再び上昇傾向に転じている(図表21)。3月22日には終値で過去最高値を更新している。
日米の長期金利の推移をみると、米国債10年物金利は2024年に入って以降、若干の上下動を伴いつつも、上昇傾向を保っている。日本国債10年物金利は、極めて緩やかながらも上昇傾向が続いている(図表22)。2024年3月26日時点での終値は、米国債10年物金利で4.24%、日本国債10年物金利で0.757%である。
日本国債のイールドカーブの変遷をみると、2024年1月15日を底に上方シフトに転じ、3月15日にかけて上昇傾向を保ってきた(図表23)。その後、わずかながら低下の動きがみられるが、そうした動きも次第に落ち着きつつある。
総合すると、消費は足踏み状態が長期化している。
支出全般の伸びは名目と実質ともにマイナスが続き、マイナス幅も広がっている。
日常生活財は概ね息長く好調さを保っているが、耐久財は、カテゴリー内でもカテゴリー間でも、依然として好不調の格差が際立っている。
雇用環境と収入環境は堅調さを保っており、マインドでは改善の動きがみられる。
値上げの悪影響は家具・家事用品、教養娯楽、食料で相変わらず目立っている。
物価の動きをみると、輸入物価の伸びは足許でプラスに転じ、国内企業物価と消費者物価の伸びもともに上昇に転じている。2024年に入ってからも続く円安の動きが再び輸入物価の上昇圧力をもたらし、国内企業物価や消費者物価の上昇へと徐々に波及しつつある点は、今後も要注意だ。
株価は2024年3月に入ってからも、一時的な売り圧力に抗しながら過去最高値を更新しており、引き続き上昇基調を保っている。
日本のイールドカーブも2024年3月以降も上方シフトの動きがみられ、緩やかなインフレ見通しも引き続き織り込まれつつある。
3月18~19日に開催された日銀金融政策決定会合で、マイナス金利解除やイールドカーブ・コントロールの撤廃、ETFの買入れ終了などが決定されるとともに、政策金利も無担保コールレート翌日物に変更の上で、金利の誘導水準も0~+0.1%程度へと引き上げられた。
今回の政策変更により植田日銀はようやく、金融政策の「正常化」にこぎつけられたともいえる。当座は日銀による慎重な金利誘導の下、足許の緩和基調が維持され、長短の金利水準で急激な上昇の動きはみられないものと予想される。量的な影響は一先ず限定的なものに止まるとしても、金利の「ゼロ制約」からの脱却による金融市場の機能回復は、経済活動を刺激する有力な手段の復活を意味する。
マーケットの動きからみえてくる景気回復期待やインフレ見通しの底堅さに加え、足許での消費マインドの改善基調は、今後の消費回復を後押しするものと期待される。