支出全般の伸びは名目でプラスに転じ、実質でもプラス復帰へあともう一歩のところだ。
日常生活財は息長く好調さを保っているが、耐久財は、カテゴリー内でもカテゴリー間でも、依然として好不調の格差が際立っている。
雇用環境は悪化しているが、収入環境は底堅く、マインドでは改善の動きが続いている。
値上げの悪影響は一部で残るが徐々に弱まりつつある。ただし、円安の動きが、輸入物価の上昇から国内企業物価を経て消費者物価の上昇へと波及していく可能性には、今後も要注意だ。
株価は下落基調に転じ、日米金利差は拡大傾向が続く中で、円安・株安の動きに一層拍車がかかっている。イールドカーブも上方シフトの動きがみられ、緩やかなインフレ見通しも引き続き織り込まれつつある。
今年度に入り「いつも通り」の消費の風景が戻ってきそうな気配が少しずつ出始めており、足許での消費改善の動きがゴールデンウィーク辺りまで続いてくれば、今後の消費回復の見通しもより確かなものとなるだろう。
JMR消費INDEXは2024年2月時点で60.0となり、大きく上昇した。ただし、INDEXの近似曲線は足許で下降傾向にある(図表1)。
INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出関連では3指標中2指標が改善している。他方で、雇用関連の2指標は悪化が続いている。販売関連では、10指標中改善が7指標と、前月よりも増えており、改善の側が優勢となっている(図表2)。
消費支出の伸びは、名目では4ヶ月ぶりにプラスに復帰した。実質では99.7%となりマイナスが続いてはいるが、プラス転換まであともう少しの処まできている(図表4)。
10大費目別では、2024年2月は名目ではプラスが8費目となっており、プラスの側が優勢である。実質ではプラスが5費目、マイナスが5費目と拮抗している。名目と実質の双方で、プラスの費目数は前月の2024年1月よりも増え、前月と同様に改善の動きが続いている(図表5)。
名目と実質の伸びの差は、教養娯楽で+7.2%、家具・家事用品で+5.0%、食料で+4.9%と、この3費目で引き続き大きいが、家具・家事用品と食料では差の大きさは前月よりも縮小している。食料は名目と実質の双方でプラスを保ち、教養娯楽と家具・家事用品は名目ではプラスだが実質ではマイナスとなっている。これら3費目の中で、名目と実質の双方でマイナスとなっているものは、今月2月に関しては存在していない(図表5)。
物価の動きに着目すると、輸入物価の伸びは2024年3月に101.4%となり、2ヶ月連続でプラスとなっている。国内企業物価の伸びも、2ヶ月連続で上昇している。他方で、消費者物価の伸びはわずかに低下している(図表6)。
財・サービス別に消費者物価の伸びの推移をみると、財では前月2月と変わりなく、サービスでは前月2月に比べ低下している(図表7)。2024年入り後も続く円安の動きは、輸入物価や国内企業物価に対し上昇圧力をもたらしつつあるが、消費者物価の上昇へと波及する気配は今のところみられない。
販売現場では、小売業全体の売上はプラスが続いている。チャネル別では、百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストアでは息長くプラスを保っており、ホームセンターもプラスに復帰したが、家電大型専門店ではマイナスが続いている(図表11、図表12)。
外食売上は、全体でも主要3業態でも、息長くプラスを保っている(図表20)。
新車販売は2024年1月以降、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともにマイナスが続いている(図表13)。
家電製品出荷について、黒物家電は2023年7月以降総じてマイナスである。情報家電では、ノートPCはプラスが続いているが、スマートフォンは2022年10月以降マイナスが続いている。他方、白物家電は、2024年2月分では、洗濯乾燥機以外の3品目でプラスとなっている(図表14、図表15、図表16)。ただし、4月22日に公表された2024年3月分では、電気掃除機以外の3品目でマイナスとなっている。
新設住宅着工戸数は、全体では9ヶ月連続のマイナスである。利用関係別では、持家、分譲住宅・一戸建て、分譲住宅・マンションの全てで、マイナスが続いている(図表17)。
3大都市圏別にみると、分譲住宅・マンションは、中部圏を除きマイナスとなっており、特に首都圏と近畿圏では2ヶ月連続のマイナスである(図表19)。
雇用環境については2024年2月時点で、失業率は上昇し、有効求人倍率は低下となっている(図表8)。
収入については、現金給与総額は26ヶ月連続プラス、所定内給与額は28ヶ月連続のプラスだが、超過給与額は3ヶ月連続のマイナスである(図表9)。
消費マインドについては2024年3月時点で、消費者態度指数は4ヶ月連続で上昇し、景気ウォッチャー現状判断DIも2ヶ月連続で上昇している(図表10)。
マーケットの動きとして、まず円ドル為替レートと日経平均株価の推移をみると、2024年の年初から3月下旬にかけて、円安・株高の傾向が続いてきた。3月22日に株価が終値で過去最高値を更新したのを境に円安・株安の流れに転じ、更に4月9日頃以降は、円安・株安の動きに一層拍車がかかっている(図表21)。
日米の長期金利の推移をみると、米国債10年物金利は2024年に入って以降、若干の上下動を伴いつつも、上昇傾向を保っている。日本国債10年物金利も、極めて緩やかながら上昇傾向が続いてはいるが、上昇のペースは米国債10年物金利に比べると明らかに鈍い、日米間の金利差の拡大をもたらしている(図表22)。2024年4月22日時点での終値は、米国債10年物金利で4.61%、日本国債10年物金利で0.885%、日米間の金利差は3.725%である。
日本国債のイールドカーブの変遷をみると、2024年1月15日を底に上方シフトに転じ、4月17日にかけて引き続き上昇傾向を保ってきた。特に、1年~3年にかけての残存期間が短いところでは、最近1年内で最も高い位置にあった2023年11月1日のイールドカーブの水準を顕著に上回っている(図表23)。
総合すると、消費は足許で持ち直しの動きが見られる。
支出全般の伸びは名目でプラスに転じ、実質でもプラス復帰へあともう一歩のところだ。
日常生活財は概ね息長く好調さを保っているが、耐久財は、カテゴリー内でもカテゴリー間でも、依然として好不調の格差が際立っている。
雇用環境は悪化しているが、収入環境は底堅く、マインドでは改善の動きが続いている。
値上げの悪影響は教養娯楽、家具・家事用品、食料の3費目で残るが、徐々に弱まりつつある。
物価の動きをみると、輸入物価と国内企業物価の伸びは上昇を続けているが、消費者物価には上昇の気配は今のところみられない。今後、円安の動きが、輸入物価の上昇から国内企業物価を経て、最終的に消費者物価の上昇へと波及していく可能性には、要注意だ。
株価は2024年3月下旬に過去最高値を更新したのを境に下落基調に転じ、日米の金利差は拡大傾向が続く中で、円安・株安の流れは2024年4月以降も続いている。
日本のイールドカーブは2024年4月以降も上方シフトの動きがみられ、緩やかなインフレ見通しも引き続き織り込まれつつある。
各種メディアでは2024年春の花見は各地でにぎわいを見せたとの報道がなされるとともに、2024年のゴールデンウィークの海外旅行者数もコロナ禍前の9割程度まで回復する見込みも示されるなど、今年度に入り「いつも通り」「例年通り」の消費の風景が戻ってきそうな気配が少しずつ出始めているようだ。足許での消費改善の動きが3~4月を経てゴールデンウィーク辺りまで続いてくれば、今後の消費回復の見通しもより確かなものとなるだろう。