支出全般の伸びは名目と実質の双方でプラスに転じている。
日常生活財は息長く好調さを保っているが、耐久財は、カテゴリー内でもカテゴリー間でも、依然として好不調の格差が際立っている。
雇用環境と収入環境は底堅さを保っているが、マインドでは足許で悪化の動きがみられる。
値上げの悪影響は徐々に弱まり、限定的なものになりつつある。ただし、円安傾向が持続する中で、輸入物価上昇のインパクトが国内企業物価から消費者物価へと波及していく可能性は高まりつつある。企業による値上げの動きが再燃しないかどうか、今後はより警戒が必要だ。
足許で円安・株安の流れが続いており、特に円ドル為替レートに関しては日銀による為替介入の可能性を警戒しつつ神経質な動きが続いている。イールドカーブは上方シフトの動きが続き、最近1年内で最も高い位置にまで上昇しつつある。中長期的には、緩やかなインフレ見通しが織り込まれ、インフレの水準も少しずつ上方へと切り上がりつつある。
これまで立ち遅れが目立っていた経済指標で、改善の動きが見られてきていることも、今後の消費にとっては追い風の材料となる。今後の消費回復の裾野の広がりが期待される。
JMR消費INDEXは2024年3月時点で46.7となり、前月に比べ若干低下している。INDEXの近似曲線も足許で下降傾向にある(図表1)。
INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出関連では3指標中2指標が改善している。そのうち、消費支出は13ヶ月ぶりの改善となった。他方で、雇用関連の2指標は悪化が続いている。販売関連では、10指標中改善と悪化がともに5指標ずつと、双方が拮抗状態にある(図表2)。
消費支出の伸びは、名目では2ヶ月連続のプラスとなり、実質では13ヶ月ぶりにプラスに転じた(図表4)。
10大費目別では、2024年3月は名目ではプラスが8費目となっており、前月と同様プラスの側が優勢である。実質ではプラスが4費目、マイナスが6費目となっており、わずかながらマイナスの側が優勢である(図表5)。
名目と実質の伸びの差は、教養娯楽で+6.8%、食料で+4.9%となっており、前月と大差はない。家具・家事用品では+3.2%となっており、前月よりも縮小している。食料は名目と実質の双方でプラスを保っているが、教養娯楽と家具・家事用品は名目ではプラスに対し実質ではマイナスとなっている。特に、教養娯楽では実質のマイナス幅が-5.7%と大きい(図表5)。
物価の動きに着目すると、輸入物価の伸びは2024年4月に106.4%と、3ヶ月連続でプラスとなっており、上昇幅も大きなものとなっている。国内企業物価の伸びは横ばい、消費者物価の伸びは2ヶ月連続で低下している(図表6)。
財・サービス別に消費者物価の伸びの推移をみても、財では前月よりも低下し、サービスでは2ヶ月連続の低下となっている(図表7)。持続的な円安の影響は、輸入物価に着実に跳ね返りつつあるが、国内企業物価や消費者物価へと波及する気配は今のところみられていない。
販売現場では、小売業全体の売上はプラスが続いている。チャネル別でも、総じてプラスとなっている。特に、家電大型量販店は4ヶ月ぶりにプラスに転じている(図表11、図表12)。
外食売上は、全体でも主要3業態でも、息長くプラスを保っている(図表20)。
耐久財では、新車販売は2024年1月以降、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともにマイナスが続いている(図表13)。
家電製品出荷について、黒物家電は2023年7月以降総じてマイナスである。白物家電は、2024年3月分では、電気掃除機以外の3品目でマイナスとなっている。情報家電では、ノートPCはプラスが続いているが、スマートフォンは2022年10月以降マイナスが続いている(図表14、図表15、図表16)。
新設住宅着工戸数は、全体では10ヶ月連続のマイナスである。利用関係別では、持家、分譲住宅・一戸建て、分譲住宅・マンションの全てで2024年1月以降、マイナスが続いている(図表17)。
3大都市圏別にみると、分譲住宅・マンションは、中部圏を除きマイナスが続いており、特に首都圏と近畿圏では3ヶ月連続のマイナスである(図表19)。
消費を取り巻く環境条件をみると、雇用環境については2024年3月時点で、有効求人倍率は上昇し、失業率は横ばいとなっている(図表8)。
収入については、現金給与総額は27ヶ月連続プラス、所定内給与額は29ヶ月連続のプラスである。ただし、超過給与額は4ヶ月連続のマイナスとなっている(図表9)。
消費マインドについては2024年4月時点で、消費者態度指数は5ヶ月ぶりに低下、景気ウォッチャー現状判断DIも3ヶ月ぶりの低下となっている(図表10)。
マーケットの動きとして、まず円ドル為替レートと日経平均株価の推移をみると、2024年3月22日に株価が終値で過去最高値を更新したのを境に円安・株安に転じ、4月に入って以降も暫くは円安・株安の流れが続いてきた。4月19日を境に株価は上昇に転じ、その後は上昇傾向を保っている。他方、円ドル為替レートは4月下旬から5月初頭にかけて、日銀による為替介入の影響等もあり、一時激しく乱高下していたが、5月3日に終値で152円98銭を付けて以降は、再び円安の動きが進んでいる(図表21)。
日米の長期金利の推移をみると、米国債10年物金利は2024年に入って以降、若干の上下動を伴いつつも、上昇傾向を保っている。日本国債10年物金利も、極めて緩やかながら上昇傾向が続いており、5月22日以降は1%を超えるに至った。しかしながら、日米間の金利差はおおよそ3.5%前後で推移しており、その格差が埋まりそうな気配はうかがわれない(図表22)。
日本国債のイールドカーブの変遷をみると、2024年1月15日を底に上方シフトに転じ、その後は若干の上下動を伴いつつ上昇傾向を保ってきたが、2024年5月24日には、最近1年内で最も高い位置にあった2023年11月1日のイールドカーブの水準を、全ての残存期間で上回るに至っている(図表23)。
総合すると、消費は持ち直しの動きが続いている。
支出全般の伸びは名目と実質の双方でプラスに転じている。
日常生活財は概ね息長く好調さを保っているが、耐久財は、カテゴリー内でもカテゴリー間でも、依然として好不調の格差が際立っている。
雇用環境と収入環境は底堅さを保っているが、マインドでは足許で悪化の動きがみられる。
値上げの悪影響は教養娯楽、家具・家事用品、食料の3費目で残っているが、その程度は徐々に弱まり、より限定的なものになりつつある。
物価の動きをみると、輸入物価との伸びは大きく上昇を続けているが、国内企業物価と消費者物価には上昇の気配は今のところみられない。円安傾向が持続する中で、輸入物価上昇のインパクトが国内企業物価から消費者物価へと波及していく可能性は、更に高まりつつある。今後、企業による値上げの動きが再燃しないかどうか、要注意だ。
2024年4月半ば以降、円安・株安の流れが続いている。特に円ドル為替レートに関しては5月初旬以降、円安傾向が続いてはいるが、日銀による為替介入の可能性を警戒しつつ神経質な動きが続いている。
日本のイールドカーブは上方シフトの動きが続き、2024年5月には最近1年内で最も高い位置にまで、上昇しつつある。中長期的には、緩やかなインフレ見通しが織り込まれるとともに、インフレの水準も少しずつ上方へと切り上がりつつあるようだ。
各メディアの報道によると、2024年のゴールデンウィークの人出は昨年を上回り、全国の主要駅をはじめ、一部の地域ではコロナ前の水準を上回ったといわれている。国内からの需要だけでなく、インバウンド需要も相まって、観光地では当初の予想を超える人出で大混雑している様子は、ニュース等で頻繁に伝えられていた。
これまで立ち遅れが目立っていた経済指標で、改善の動きが見られてきていることも、今後の消費にとっては追い風の材料となるだろう。今後の消費回復の裾野の広がりが期待される。