支出全般の伸びは名目と実質の双方でプラスが続いている。
日常生活財は息長く好調さを保っている。耐久財でも、一部で改善の兆しがうかがわれる。
収入環境は底堅さを保っているが、雇用環境は方向感が定まらず、マインドでは悪化の動きが続いている。
値上げの悪影響は徐々に弱まりつつあるが、一部カテゴリーでは不振が目立っている。
持続的な円安の影響は、輸入物価に着実に跳ね返っており、国内企業物価や消費者物価へも少しずつ波及しつつあることから、今後の更なる値上げの可能性には、引き続き警戒が必要だ。
足許で上昇傾向にあった株価は上値が重く、円ドル為替レートは円安が再加速し160円突破をうかがう動きもみられる。日米間の金利差はわずかながらも広がりつつある。イールドカーブは2024年5月末をピークに、一旦下方シフトに転じたが、その後は再び上方シフトへと戻りつつある。
これまで立ち遅れが目立っていた耐久財でも、改善の兆しが見えてきている。円安を引き金とした値上げの悪影響には警戒しつつも、引き続き消費回復の裾野の更なる広がりに期待したい。
JMR消費INDEXは2024年4月時点で53.3となり、前月に比べ若干上昇している(図表1)。
INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出関連では3指標中2指標が改善している。そのうち、消費支出は2ヶ月連続、平均消費性向は3ヶ月連続での改善となった。他方で、雇用関連の2指標は悪化が続いている。販売関連では、10指標中改善が6指標、悪化が4指標となっており、改善の側がわずかに優勢である。前月と比べても、改善の指標の数がわずかながら増えている(図表2)。
消費支出の伸びは、名目では3ヶ月連続のプラス、実質では2ヶ月連続のプラスである(図表4)。
10大費目別では、2024年4月は名目ではプラスが7費目、実質ではプラスが6費目となっており、いずれもプラスの側が優勢である(図表5)。
名目と実質の伸びの差は、教養娯楽で+5.6%、食料で+4.2%となっており、前月よりも縮小している。食料は名目ではプラスに対し実質ではマイナスとなっているのに対し、教養娯楽は名目と実質の双方でマイナスとなっている。特に教養娯楽では実質-9.2%と、交通・通信(-10.2%)に次いでマイナス幅は際立って大きい(図表5)。
物価の動きに着目すると、輸入物価の伸びは2024年5月に106.9%と、4ヶ月連続でプラスとなっており、上昇幅も大きなものとなっている。国内企業物価の伸びは若干の上昇、消費者物価の伸びはわずかながら上昇している(図表6)。
財・サービス別に消費者物価の伸びの推移をみても、財では前月よりも上昇し、サービスでは3ヶ月連続の低下となっている(図表7)。持続的な円安の影響は、輸入物価に着実に跳ね返ってきており、国内企業物価や消費者物価へも少しずつ波及しつつあるようだ。
販売現場では、小売業全体の売上はプラスが続いている。チャネル別でも、総じてプラスとなっている(図表11、図表12)。
外食売上は、全体でも主要3業態でも、息長くプラスを保っている(図表20)。
耐久財では、新車販売は2024年1月以降、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともにマイナスが続いている。だが、伸び率の値はともに、2024年4月以降2ヶ月連続で上昇しており、ゼロ近傍へと徐々に近づきつつある(図表13)。
家電製品出荷について、黒物家電では2024年4月時点で、BDレコーダは34ヶ月ぶりに、スピーカシステムは21ヶ月ぶりに、伸びがプラスに転じている。白物家電では、2024年4月時点で、洗濯乾燥機以外の3品目でプラスとなっている。情報家電では、ノートPCはプラスが続いているが、スマートフォンは2022年10月以降マイナスが続いている(図表14、図表15、図表16)。
新設住宅着工戸数は、全体では11ヶ月ぶりに伸びはプラスに転じた。利用関係別では、分譲住宅・マンションだけがプラスであり、持家と分譲住宅・一戸建てはマイナスが続いている(図表17)。
3大都市圏別にみると、分譲住宅・マンションは、首都圏、中部圏、近畿圏、その他の4つの地域区分全てで、伸びはプラスとなっている(図表19)。
消費を取り巻く環境条件をみると、雇用環境については2024年4月時点で、有効求人倍率は低下し、失業率は横ばいとなっている(図表8)。
収入については、現金給与総額は28ヶ月連続プラス、所定内給与額は30ヶ月連続のプラスである。ただし、超過給与額は5ヶ月連続のマイナスとなっている(図表9)。
消費マインドについては2024年5月時点で、消費者態度指数と景気ウォッチャー現状判断DIはともに、2ヶ月連続で低下している(図表10)。
マーケットの動きとして、まず円ドル為替レートと日経平均株価の推移をみると、株価は4月19日を境に上昇に転じて以降、上昇傾向を保ってきた。だが、6月に入ってからは、6月11日の39,134円79銭を天井に、39,000円前後の水準を上下動している。他方、円ドル為替レートは5月3日を境に円安に転じており、6月4日に一時154円87銭まで戻したが、その後は円安の動きが再加速している。6月21日には終値で159円79銭を付け、足許では160円突破をうかがう動きもみられる(図表21)。
日米の長期金利の推移をみると、米国債10年物金利は、2024年4月30日に4.682%を付けて以降、緩やかながら低下傾向で推移している。5月29日には一時4.616%まで戻したが、その後は金利低下の動きが進んでいる。6月21日時点での終値は4.257%となっている。日本国債10年物金利も、極めて緩やかながら上昇傾向が続いてきたが、5月29日に1.084%を付けたのをピークに、金利は低下傾向にある。6月21日時点での終値は0.999%となっている。日米間の金利差は引き続き、おおよそ3.5%前後で推移しており、その格差はわずかずつながらも広がりつつある(図表22)。
日本国債のイールドカーブの変遷をみると、2024年1月15日を底に、その後は若干の上下動を伴いつつイールドカーブは上方シフトの動きを続けてきた。2024年5月31日をピークに、イールドカーブは一旦下方シフトに転じたが、2024年6月17日を底に再び上方シフトへと戻りつつある(図表23)。
総合すると、消費は改善の動きが続いている。
支出全般の伸びは名目と実質の双方でプラスが続いている。
日常生活財は息長く好調さを保っている。耐久財でも、マイナスながらも伸び率の改善がみられるカテゴリーや、伸びがプラスに転じる品目が増えているカテゴリーなど、一部で改善の兆しがうかがわれる。
収入環境は底堅さを保っているが、雇用環境は方向感が定まらず、マインドでは悪化の動きが続いている。
値上げの悪影響は教養娯楽と食料の2費目で残っている。食料では影響は徐々に弱まりつつあるが、教養娯楽では不振が目立つ。
物価の動きをみると、持続的な円安の影響は、輸入物価に着実に跳ね返ってきており、国内企業物価や消費者物価へも少しずつ波及しつつある。今後、更なる値上げの可能性には引き続き警戒が必要だ。
2024年6月に入って以降、それまで上昇傾向にあった株価は上値が重く、円ドル為替レートは円安が再加速し160円突破をうかがう動きもみられる。米国の長期金利にはピークアウトの気配が見られるはするが、日米間の金利差はわずかながらも広がりつつある。
日本国債のイールドカーブは2024年5月末をピークに、一旦下方シフトに転じたが、その後は再び上方シフトへと戻りつつある。
これまで立ち遅れが目立っていた耐久財でも、改善の兆しが見えてきている。持続する円安を引き金とした値上げの悪影響には警戒しつつも、引き続き消費回復の裾野の更なる広がりに期待したい。