支出全般の伸びは名目と実質ともにプラスが続いている。特に名目では10大費目全てでプラスとなっている。
日常生活財は概ねプラスを保っている。耐久財では好不調の格差がみられるが、自動車の新車販売や持家の新設着工など、一部で改善の動きも認められる。
収入環境は底堅さを保っているが、雇用環境は方向感が定まらず、マインドでは悪化の動きもみられる。
物価上昇の動きは国内企業物価と消費者物価の双方で顕著となっており、輸入物価でも伸びの上昇が続いている。食料や光熱・水道などを中心に、物価上昇による消費への悪影響も目立ってきている。
米国での金利低下と日本での金利上昇により日米金利差は縮小傾向にあり、その結果、足許では円高も進行している。日本国債のイールドカーブも、上方シフトに拍車がかかりつつある。
物価と金利の上昇ペース次第では、日本の景気や消費の回復にブレーキとなるおそれもある。金融政策の舵取りや物価上昇の悪影響軽減には、慎重で適切な対応が求められる。
JMR消費INDEXは2024年12月時点で46.7となっており、前月11月から横ばいとなっている(図表1)。
INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出関連では3指標中、消費支出と平均消費性向のふたつが2ヶ月連続で改善となった。この2項目で改善が続いたのは、2024年3~4月以来のこととなる。ただし、雇用関連の2指標は一貫して悪化が続いている(図表2)。
販売関連では、2024年12月も10指標中、改善と悪化がともに5指標と拮抗している。加えて、改善した項目と悪化した項目の中身はともに、前月11月と一致している(図表2)。
その後、2025年2月3日に公表された2025年1月分の新車販売台数の伸びは、115.0%である。2月25日に公表された2025年1月分の百貨店売上高の伸びは、店舗数調整前で104.6%である。同日公表された2025年1月分のチェーンストア販売統計によると、食料品売上は店舗数調整前で95.4%、衣料品売上は同90.8%、家具・インテリア売上は同93.9%、家電製品売上は同85.3%である。同日公表の2025年1月分の外食売上高の伸びは、ファーストフードで前年同月比108.1%、ファミリーレストランで107.2%である。よって、執筆時点で判明している8指標中だと、改善が4指標、悪化が4指標と拮抗しており、改善と悪化のどちらが優勢となるかは今のところ未知数である。
消費支出の伸びは2024年12月時点で、名目と実質ともに2ヶ月連続でプラスとなった。両者でプラスが続いたのは、2024年3~4月以来のこととなる(図表4)。
10大費目別では、2024年12月は名目では10費目全てがプラスとなり、実質でもプラスが7費目となっており、プラスの側が圧倒的に優勢である。前月11月と比べても、名目と実質の双方で、大幅な改善が認められる(図表5)。名目と実質の伸びの差は、光熱・水道で+11.1%と突出して高く、食料でも+6.3%と、極めて高い。光熱・水道と食料は名目がプラスで実質がマイナスとなっており、物価上昇の悪影響が目立っている(図表5)。
物価の動きに着目すると、輸入物価の伸びは2025年1月に102.3%となり2ヶ月連続のプラス、伸び率の値も上昇している。国内企業物価の伸びは104.2%となり5ヶ月連続の上昇、消費者物価の伸びは104.0%となり3ヶ月連続の上昇である(図表6)。
財・サービス別に消費者物価の伸びの推移をみると、2025年1月時点で、サービスでは伸びはプラスだが小幅なものにとどまる一方、財では1%を超える大幅な上昇が3ヶ月も続いている。ここ数年をみても、2025年1月の伸び率の値である106.4%は、2022年10月の106.5%にほぼ匹敵する極めて高い水準である(図表7)。
販売現場では、小売業全体の売上は2024年12月時点で、プラスが続いている。チャネル別でも、総じてプラスとなっている(図表11、図表12)。
外食売上は、全体でも主要3業態でも、息長くプラスを保っている(図表20)。同様の動きは、2月25日に公表された2025年1月分のデータでも確認できる。
耐久財では、新車販売は2025年1月時点で、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、伸びは大幅に上昇し、プラスに転じた。乗用車(普通+小型)でプラスとなったのは3ヶ月ぶり、軽乗用車でプラスとなったのは4ヶ月ぶりのこととなる(図表13)。
家電製品出荷について、黒物家電は2024年11月以来、総じてマイナスが続いている。白物家電は2024年12月時点でカテゴリーごとに好不調が分かれており、その顔ぶれも2024年11月と同様である。情報家電ではノートPCは2024年6月以来プラスが続いており、2025年2月25日に公表された2025年1月分でも137.5%とプラスを保っている。スマートフォンは2024年12月時点で再びマイナスに転じている(図表14、図表15、図表16)。
新設住宅着工戸数は2024年12月現在、全体では2024年5月以降マイナスが続いている。利用関係別では、持家は3ヶ月連続でプラスとなったが、分譲住宅・マンションと分譲住宅・一戸建てはマイナスとなっている(図表17)。
3大都市圏別にみると、分譲住宅・マンションは2024年12月時点で、近畿圏でプラスが続いているが、残りの三つの地域ではマイナスが続いている(図表19)。
消費を取り巻く環境条件をみると、雇用環境については2024年12月時点で、有効求人倍率は横ばいが続き、失業率は前月11月よりも低下している(図表8)。
収入については、現金給与総額は36ヶ月連続プラス、所定内給与額は38ヶ月連続のプラスとなった。超過給与額も3ヶ月連続のプラスである(図表9)。
消費マインドについては2025年1月時点で、景気ウォッチャー現状判断DIは3ヶ月ぶりで低下し、消費者態度指数も低下に転じている(図表10)。
マーケットの動きとして、まず円ドル為替レートと日経平均株価の推移をみると、2024年12月末頃以降、為替は円高傾向で推移し、株価は緩やかながら下落傾向にある(図表21)。その後も、円高と株価の下落は続き、2025年2月26日13時半頃現在、為替は1ドル149円33銭前後、株価は3万7,832円48銭を付けている。
日米の長期金利の推移をみると、米国債10年物金利は2025年1月14日頃を境に、上昇傾向から低下傾向に転じている。他方、日本国債10年物金利も12月下旬頃以降、概ね上昇傾向で推移してきた(図表22)。その後も、米国債10年物金利は低下傾向が続き、2月25日には終値で4.297%を付けている。他方、日本国債10年物金利は、緩やかな上昇傾向を保ち続けている。2月25日には終値で、1.387%となっている。
日本国債のイールドカーブの変遷をみると、2024年9月24日を底に上方シフトに転じ、その後は若干の上下動を伴いつつ、2025年2月20日には2024年9月以降で最も左上方に位置付けられている。特に、残存期間10年以下のところで、2025年2月20日時点のイールドカーブと2025年1月15日時点のイールドカーブとの高低差が際立っている(図表23)。その後、イールドカーブは、残存期間10年以下のところで若干下方シフトしているが、2025年2月25日現在、残存期間25年以下の領域では2025年1月15日時点の水準を上回っている。
総合すると、消費は改善の動きが続いている。
支出全般の伸びは名目と実質ともにプラスが続いている。特に名目では10大費目全てでプラスとなっている。
日常生活財は概ねプラスを保っている。耐久財では好不調の格差がみられるが、自動車の新車販売や持家の新設着工など、一部で改善の動きも認められる。
収入環境は底堅さを保っているが、雇用環境は方向感が定まらず、マインドでは悪化の動きもみられる。
物価上昇の動きは国内企業物価と消費者物価の双方で顕著となっており、輸入物価でも伸びの上昇が続いている。食料や光熱・水道などを中心に、物価上昇による消費への悪影響も目立ってきている。
米国での金利低下と日本での金利上昇により日米金利差は縮小傾向にあり、その結果、足許では円高も加速している。日本国債のイールドカーブも、上方シフトに拍車がかかりつつある。
物価と金利の上昇ペース次第では、日本の景気や消費の回復にブレーキとなるおそれもある。日銀による金融政策の舵取りや政府による物価上昇の悪影響の軽減には、慎重で適切な対応が求められるところだ。