支出全般の伸びは名目と実質ともに引き続きプラスを保っている。10大費目でも、名目ではプラスが優勢である。
日常生活財は引き続きプラスを保っている。耐久財では好不調の格差が残っているが、自動車やノートPCなど一部のカテゴリーでは、改善の動きが続いているものも出てきている。
収入環境は底堅さを保っているが、雇用環境は依然として方向感が定まらず、マインドでは悪化の動きが続いている。
物価上昇による消費への悪影響は、食料を中心に残っている。新年度早々から、値上げの動きが目立っているのも確かだ。ただ、足許での統計の動きを見る限り、輸入物価の伸びはマイナスに転じ、国内企業物価と消費者物価の伸びは鈍化傾向にある。物価上昇の動きは今後、沈静化に向かうことが期待される。
日本国債のイールドカーブは上昇の動きが続いているが、日米金利差は今のところ縮小傾向から横ばい傾向で推移している。為替は足許で円安から円高の方向へ転じつつあるものの、海外景気の動向に左右され、先行きの方向感は定まらない。
為替や海外景気など海外発の波乱要因が、日本の景気や消費の回復の妨げとなる可能性には、注意を要する。
JMR消費INDEXは2025年1月時点で46.7となっており、2024年11月以降横ばいが続いている(図表1)。
INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出関連では3指標中、消費支出と平均消費性向のふたつが3ヶ月連続で改善となった。この2項目で改善が続いたのは、2022年8~10月以来のこととなり、極めて稀な状況だ。他方で、雇用関連の2指標は2023年8月以降、一貫して悪化が続いている(図表2)。
販売関連では、2025年1月も10指標中、改善と悪化がともに5指標と拮抗している。2025年2月は、既に公表済みの8指標中、改善が3指標、悪化が5指標となっており、悪化の側が優勢である(図表2)。
その後、2025年3月31日に公表された2025年2月分の新設住宅着工戸数の伸びは総計で102.4%となっており、2024年4月以来10ヶ月ぶりの改善である。よって、執筆時点で判明している9指標中だと、改善が4指標、悪化が5指標とわずかながら悪化の側が優勢であるが、残りの旅行業者取扱額の結果次第では、改善と悪化が拮抗する状態へ持ち直す可能性も見えてきている。
消費支出の伸びは2025年1月時点で、名目と実質ともに3ヶ月連続でプラスとなった。両者でプラスが続いたのは、2022年8~10月以来のこととなる(図表4)。
10大費目別では、2025年1月は名目では10費目中8費目がプラスとなり、プラスの側が圧倒的に優勢である。だが、実質では10費目中プラスは4費目に止まっており、マイナスの側が優勢である(図表5)。名目と実質の伸びの差は、2024年12月と同様、光熱・水道で+11.4%と突出して高く、食料でも+7.6%と、極めて高い。特に食料は、名目がプラスで実質がマイナスとなっており、物価上昇の悪影響が引き続き目立っている(図表5)。
物価の動きに着目すると、輸入物価の伸びは2025年2月に102.3%となり、3ヶ月ぶりにマイナスとなった。国内企業物価の伸びは104.0%、消費者物価の伸びは103.6%となっており、息長くプラスが続いているが、伸びの値はともに低下している(図表6)。
財・サービス別に消費者物価の伸びの推移をみると、2025年2月時点で、総合、財、サービスの全てで、伸びの値は低下している。特に、サービスの伸びの値は2ヶ月連続で低下している(図表7)。
販売現場では、小売業全体の売上は2025年1月時点で、プラスが続いている。チャネル別でも、総じてプラスとなっている(図表11、図表12)。
外食売上は、全体でも主要3業態でも、息長くプラスを保っている(図表20)。
耐久財では、新車販売は2025年2月時点で、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、伸びは2ヶ月連続のプラスである(図表13)。2025年4月1日に公表された2025年3月分速報値でも、伸びは乗用車(普通+小型)で107.2%、軽乗用車で115.0%となっており、ともに3ヶ月連続のプラスである。
家電製品出荷について、黒物家電は2024年11月以来、総じてマイナスが続いている。白物家電はルームエアコンだけが2024年10月以来プラスを保っているが、残りの3品目は2025年2月時点でマイナスである。情報家電ではノートPCは2024年7月以来プラスが続いている。スマートフォンは2024年12月以降、2ヶ月連続のマイナスである(図表14、図表15、図表16)。
新設住宅着工戸数は2025年1月時点では、全体でマイナスが続いてきた(図表17)。2025年3月31日に公表された2025年2月分では、伸びは全体で102.4%となっており、2024年4月以来10ヶ月ぶりにプラスに転じている。
利用関係別では2025年1月時点で、持家は4ヶ月ぶりにマイナスに転じ、分譲住宅・一戸建てはマイナスが続いたが、分譲住宅・マンションは再びプラスに戻している(図表17)。3月31日公表の2025年2月分では、持家は2ヶ月連続のマイナス、分譲住宅・一戸建ては引き続きマイナスとなっているが、分譲住宅・マンションは2ヶ月連続のプラスである。
3大都市圏別にみると、分譲住宅・マンションは2025年1月時点で、首都圏はプラスだが、残りの3つの地域はマイナスである(図表19)。3月31日公表の2025年2月分では、近畿圏のみが大幅なプラスである。残りの三つの地域はマイナスであり、中部圏では2024年6月以降、その他では2024年9月以降、マイナスが続いている。
消費を取り巻く環境条件をみると、雇用環境については2025年1月時点で、有効求人倍率は前月2024年12月よりも上昇する一方、失業率は前月と同様に横ばいとなっている(図表8)。2025年4月1日に公表された2025年2月分では、有効求人倍率は前月1月の1.26倍から今月は1.24倍へ低下している。他方、失業率は前月1月の2.5%から今月は2.4%へ低下している。
収入については、現金給与総額は37ヶ月連続プラス、所定内給与額は39ヶ月連続のプラスとなった。超過給与額も4ヶ月連続のプラスである(図表9)。
消費マインドについては2025年2月時点で、景気ウォッチャー現状判断DIと消費者態度指数はともに、2ヶ月連続で低下している(図表10)。
マーケットの動きとして、まず円ドル為替レートと日経平均株価の推移をみると、2024年12月末頃から2025年3月上旬にかけて、為替は円高傾向で推移し、株価は緩やかながら下落傾向にあった。3月上旬以降は、円安・株高の方向へと相場は転換している(図表21)。その後、株価は3月26日に終値で38,027円29銭を付けたのを境に下落が続き、4月3日14:00現在では35,000円を割り込んでいる。為替は3月27日に終値で151円05銭を付けたのを境に、円高方向へと反転し、4月3日14:20現在では147円台まで戻している。
日米の長期金利の推移をみると、米国債10年物金利は2025年1月14日頃から3月3日頃にかけて低下傾向で推移してきたが、3月3日頃以降は、極めて緩やかな上昇傾向で推移している。他方、日本国債10年物金利は2025年に入って以降も、概ね上昇傾向での推移を続けている(図表22)。
日本国債のイールドカーブの変遷をみると、2024年12月9日を底に上昇シフトに転じ、その後は若干の上下動を伴いつつ、2025年3月25日には2024年12月以降で最も左上方に位置付けられている。2025年3月25日時点のイールドカーブと2025年2月20日時点のイールドカーブとの高低差は、残存期間が長くなるにつれて広がる傾向がみられる(図表23)。
総合すると、消費は回復傾向が続いている。
支出全般の伸びは名目と実質ともに引き続きプラスを保っている。10大費目でも、名目ではプラスが優勢である。
日常生活財は引き続きプラスを保っている。耐久財では好不調の格差が残っているが、自動車やノートPCなど一部のカテゴリーでは、改善の動きが続いているものも徐々に出てきている。
収入環境は底堅さを保っているが、雇用環境は依然として方向感が定まらず、マインドでは悪化の動きが続いている。
物価上昇による消費への悪影響は、食料を中心に残っている。新年度早々から、値上げの動きが目立っているのも確かだ。ただ、足許での統計の動きを見る限り、輸入物価の伸びはマイナスに転じるとともに、国内企業物価と消費者物価の伸びはいずれも鈍化傾向にある。物価上昇の動きは今後、沈静化に向かうことが期待される。
日本国債のイールドカーブは上昇の動きが続いているが、日米金利差は今のところ縮小傾向から横ばい傾向で推移している。為替は足許で円安から円高の方向へ転じつつあるものの、海外経済の波乱要因に左右され、先行きの方向感は定まらない。
為替や海外景気など海外発の波乱要因が、日本の景気や消費の回復の妨げとなる可能性には、十分に注意を要するところだ。